▼ブロガーがノンフィクションの候補になる▼ from BBC NEWS 
27 March 2006

戦争で破壊されたイラクでもって若い女性が書きつづる無名のブログが
英国BBC4 のサミュエル・ジョンソン賞のノンフィクション候補に上が
っている。

ペンネーム、リバーベンドの下に書かれる、直接体験による詳しい記述
「バグダッドバーニング」は選考で論争中の19作品のひとつである。

他にはアラン・ベネットの「秘密にされてるストーリーズ」、19世紀
の料理人で作家ミセス・ビートンの伝記、冷戦後の米ソ関係の研究書が
含まれる。

賞金3万ポンドの受賞者は6月14日、ロンドンで発表される。

審査員団の委員長、ロバート・ウインストン教授は、今年の候補作品に
は「非常に幅広く多様なジャンル」が含まれると述べた。

「最終選考のための選抜候補者リストは度を超えた難しさになる模様」
だと彼は話す。

これまでノンフィクションで最も権威のあるサミュエル・ジョンソン賞
を受賞した作品には、ジョナサン・コーのBSジョンソンの伝記「猛り
狂った象のように:B・S・ジョンソンの物語」、「スターリングラー
ド」、アナ・ファンダーの東ドイツ秘密警察に引き裂かれた監視社会の
恐怖を描いた「監視国家」がある。

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▼バグダッド在住の人気ブロガーに話を聞く▼by アルジャジーラ
09 April 2006

2003年3月の開戦以来、いまもなお混乱が続くイラク。そのなかで
イラクの厳しい現状をユーモアを交えて伝え、世界中に感銘を与えてい
るのが、首都バグダッドから発信されるブログ、「バグダッドバーニン
グ」だ。発信するのは26歳のイラク人女性、リバーベンド(ペンネー
ム)。そのブログの内容がこのほど、ノンフィクションに与えられる英
国のサミュエル・ジョンソン賞で最終候補リストに残った。
喜ぶリバーベンドにブログ執筆の動機、ブログの役割について聞いた。

→サミュエル・ジョンソン賞で最終候補リストに残りましたね。感想は?

停電でパソコンが2日間ほど使えなくて、3月28日にやっとメールの
受信箱を開いたら、800件以上のお祝いのメールが届いていたの。一体
なんの祝電?って感じ。でも賞の候補リストに残ったことでお祝いを送
ってくれたのだとわかり、驚きと感激に襲われています。

実はメールを見る前に、英BBC放送で「イラクのブロガーがサミュエ
ル・ジョンソン賞にノミネート」と聞いていたんです。他人ごとだと思
っていたの。その直後にたくさんの祝電でしょ。雲の上を歩いているよ
うな気分でした。

→候補となったのは、あなたのブログを基に出版された本ですよね。ブ
ログを始めた動機は何でしたか?ブログを本の形で出版するというのは
あなたの考えですか?

イラクで「ブログの父」といわれるサラム・パックスに励まされてブロ
グを始めたんです。パックスが企画したインターネット上のフォーラム
に何度か参加したことで、ブログで発信することを勧められました。

ブログを始めて数カ月後に、本として出版してはどうかという申し出は
いくつか受けました。でもブログを本にしようとは全く考えなかった。
というのも出版社がブログの中止を条件にしてたからなんです。フェミ
ニスト・プレスだけがその条件をつけなかったので出版に応じました。

イラクの現状がブログの原動力です。ブログとして日記を書き公表する
ことで私は募ったイライラや恐怖感を紛らわそうとしました。メディア
がこの国について報じるのは表面的なできごと、イラクとその国民が直
面している日々の現実は報じていません。身近な話、できごとなどをこ
れからも伝えていくつもりです。

→伝えられていない現実とはどのようなものでしょう?

メディアが報じるのは、いつまでたっても陽の目を見ない新政権樹立の
問題でしょ。治安悪化や停電、水不足などで苦しんでるイラク国民の現
状は顧みられていません。

→あなたのブログを「歴史の記録者」で、その存在は貴重と評価する声
があります、どう思う?

ほめすぎで、怖いな。長く続けようとして始めたわけではなく、読んで
もらえるとも思っていなかった。「歴史の記録者」だなんて一度も考え
たことない。ブログはどれも、歴史の証人的な存在だとは思います。

→その半面で、あなたを偏見に満ちた反米主義者で、フセイン前政権の
崩壊を悲しんでいるだけとの批判もありますよ。

何に対しての偏見なんだろう。困るのは、多くの人たちが「占領反対」
を「反米」と同じようにとらえていること。私は反米主義者じゃない。
占領されることに反対なだけ。

フセイン時代の再来なんて望んでいないけど、このイラクの地に外国の
軍隊がいることには断固反対します。

→英語を話すのと書くことはどこで勉強したの?

子ども時代を外国で過ごしたんです。帰国後も両親は英語の勉強を続け
るのを許してくれました。

→どんな本を読むの?

手に入る英語の本なら、なんでも。ディケンズ、ジェーン・オースチン、
ウィリアム・サッカリー、ジョージ・オーウェルなどの古典。米国人作
家フォークナーの作品も好きです。フランス語、ロシア語など、英語に
翻訳された作品も読みます。特にブロンテ姉妹の作品には大きな影響を
受けました。書くことを教えてくれたので。

→匿名の理由は?

身の安全のため。自由に書き、自由に論じるため。政治、宗教、民族な
ど、多くの問題を論じるのに本名を出すことはできない。
拘束される危険、そしてそれ以上の事態が起こりうるからです。

→あなたのブログは3年も続いていますが、終わりにしようと思ったこ
とはありますか?

「バグダッドバーニンング」を含めてイラクにはブログが6つか7つし
かないんです。伝えるべきことがある以上、ブログは続けようと思って
います。

→ブロガーは新しい形のジャーナリストなのかしら?

ブロガーはジャーナリストとかではありません。大多数の人たちが占領
や戦争に関して公平無私かつ感情移入なしに書くよう望んでいます。で
も、ブログ自体が抑えきれない感情の発露で、そうした姿勢をとるのは
困難です。コンピュータに向かい、背中を丸めてキーボードを叩き、自
分自身の考え、恐怖、そして苛立ちを発信しているんですから。

→イラクの将来をどう思う?

混乱はまだ数年続くと思う。この国に外国の軍隊が駐留している限り、
暴力と流血がやむことはないでしょ。でも、イラクは立ち直ります。
イラクには偉大な歴史があるんですから。