バグダッドの日常はノックもなしに突然やってくる乱暴な家宅捜索、爆
撃、爆発、誘拐、そして検問。職もなくガソリンの行列と水汲みに明け
暮れる毎日。女性は外出もままならない。停電の合間をぬってウェブ上
に書き込まれる24才の女性のブログ、「リバーベンド・ブログ」が、
バグダッド版「アンネの日記」として世界中で読まれている。10日間
書き込みが途絶えた後に再びブログする、これが彼女の声(悲鳴)だ。
http://www.geocities.jp/riverbendblog/

▼説明などできない▼
Baghdad Burning by Riverbend 23 April 2004

この一週間あまり、書き込みをしなかった。そんな気分になれなかった
からだ。なぜブログしない、電子メールぐらいチェックしたら、と非難
するように見返すので、私はコンピュータを見ないようにする。実は、
私たちのまわりであまりにも多くのことが起こっているので、ささやか
なブログに要約することができないでいた。南部の状況とファルージャ
での停戦まがいに、私は苦しみつつ腹を立てていた。現在、私の周囲に
漂っている感情を的確に表現できるものはない。それはモリッシーの歌
に似ている。
いま、私の心はいっぱいで
いま、私の心はいっぱいで
説明などできない
だから、説明しようとさえしない

ファルージャは一種の休戦状態だが、都市部ではまだ爆撃が続き、どち
らの陣営からも死者が出ているという。難民は今もバグダッド及び近隣
の都市にいる。この2、3日、軍隊が1日当たり約80組の家族の流入
を認めていると聞いたが、今は1日当たり15組の家族に減少したとい
う。難民は家に戻るのにも不安そうで、家族を都市部に残す人も多い。
さらに、南部の状況、特にカルバラは気がかりだ。連合軍とアル・サド
ルの民兵との衝突の話が流れてくる。さらにバスラとバグダッドで爆発
があったと聞く。しかし、そんなことはもうニュースにもならなくなっ
た。イラク人は、砂塵嵐、停電、蚊と共にそれらをうまく切り抜ける。
それは生活の一部になり、ちょうどアメリカ軍による道路封鎖をくぐり
抜け、ますます高くなるコンクリート壁の迂回方法を見つけるように、
生きるための抜け道を見つけなくてはならない。

このところ、激しい蒸し暑さが続く。私たちが慣れている通常の乾燥し
たイラクの暑さではない。ほとんど固体として感じられるほど湿気を多
く含んだ、じとじとした暑さだ。電気の状況は、多くの地域で相変わら
ず大変悪い。3時間の電気供給の後、3時間の暗闇というスケジュール
だ。それが涼しい冬の数ヶ月なら耐えられても、地獄のような夏の数ヶ
月には拷問の日々が約束されている。
明日、また、ブログする。私を心配するすべての人々に、大丈夫、私は
生きていると知らせるために。それに、もっと言わなければならないこ
とがある。

▼メディアとファルージャ▼
04 April 2004

ファルージャと南部での暴動と戦闘を報道するアルアラビアとアルジャ
ジーラの姿勢について、批判の声が挙がっている。ある米軍スポークス
マンは、こういう放送局のせいで「反米感情が蔓延」するのだとがなり
たてた。

その通り。両放送局のファルージャ・南部諸州攻撃に関する報道は驚く
べきものだ。アルジャジーラは、記者を混乱のまっただ中にぶち込んで
文字どおりの戦場配備、つまり従軍させている。従軍といっても戦争当
初に派遣されていた欧米のへなちょこ従軍記者みたいなのではなくだ。
アハマード・マンスールは、本当にその場に、爆撃のまっただ中に立ち
F16戦闘機や戦闘ヘリが家々やビルを爆破攻撃する音に負けまいと、
大声で状況を伝えていた。 「衝撃と畏怖」の日々が蘇る。

CPA米英暫定占領当局は、テレビが死んだイラク人の亡骸を放映するの
を見たくない。アルジャジーラとアルアラビアが、アルフーラ(ボイス
・オブ・アメリカだったラジオ局サワのテレビ版。政府が1億ドルを支
出、政府のガイドラインに従って番組を作る。フーラは自由の意味)を
お手本にして、海外に住む占領支持派のイラク人のぎこちないアラビア
語インタビュー番組を延々と放送したら連中は大喜びすることだろう。
もちろん、インタビューの合間には、アラビア語吹替えのドキュメンタ
リーが散りばめられる。何の?驚嘆すべき映像、うーんハリウッドの。
個人的には最新型アウディの特注皮張りインテリアに興味がないわけじ
ゃないけれど、700人以上のイラク人が殺されてるときに、アルジャ
ジーラとアルアラビアからチャンネルを替えるなんてことはできそうに
ない。

反米感情を和らげるために、提案してもいいかしら。集団懲罰をやめる
こと。 マーク・キメット米陸軍准将が記者会見で、「精密誘導兵器」や
「軍事目標」についてくどくどと要領を得ない話をしていた。冗談じゃ
ない。ファルージャは慎ましい家と小さな商店とモスクのある小さな町
だ。爆撃されて死んだ600人の市民や何千人もの負傷して手足を失っ
た人々のことを「暴徒」ですって?今では民家や商店やモスクが軍事目
標なんですか?

言いたいのは、イラク人を怒らせイライラさせる放送局なんていらない
ということ。とぼとぼとバグダッドへ向かうファルージャ避難民の一人
にでも話しかけてみたらどうなの?涙で汚れた顔、ショックで放心状態
の目を見て。彼らの語る話はほんとうに恐ろしくてすさまじい。彼らが
あの中を生き延びてきたことがとても信じられない。

欧米の報道機関はすっかり飼い慣らされている。彼らの放送はハリウッ
ド版の戦争、無敵の兵士たちの軍服姿、捕らえられ「正義」を突きつけ
られる敵のイラク人たち、感謝祭の七面鳥とポーズをとるホワイトハウ
スの腰抜け、結構なことだこと。でも、戦争と占領が引き起こした破壊
はどうなったの?殺戮は?なにも一面に散らばるイラク人の死体だけを
映せと言っているんじゃない。アメリカ人の死体もよ。破壊と殺戮の映
像を「見るべき」なの。どうして、イラク人やアメリカ兵の死体を見せ
るのはいけなくて、9月11日の惨事を繰り返し見せるのは構わないの
か?私にメールしてくる人たち、コンピュータの前にぬくぬくと座って
偏見に凝り固まっている人たちこそ、イラクへ来て、本物の戦争を体験
してみるといい。たった今イラクへ来て、24時間でいいから過ごして
みればいい。その上で、マーク・キメットが、アメリカ人にとって輝か
しい日とでも言いたげに、「暴徒」の死者数700人と語るのを聞いて
みたらどうなの。

それでもなお、「反米感情」についてのご託を聞くとしたら、怒りを抑
えられない。アメリカが、どうしてアメリカの軍隊や国家のことになる
のか?どうして、反ブッシュや反占領だったら、反米ということになる
のか?私たちはアメリカ映画を見ているし、ブリトニー・スピアーズか
らニルバーナまで何でも聴いている。茶色い炭酸飲料はペプシよ。
私が大嫌いなのはアメリカの外交政策と中東での絶え間ない干渉、バグ
ダッドでアメリカ軍の戦車を見るのは耐え難い。イラクの町に、ときに
は家の中にもアメリカ兵がいる。たまらなくいやだ。これがどうして、
私がアメリカとアメリカ人を憎んでいることになるのか?戦車や軍隊や
暴力がアメリカのすべてなのか?ペンタゴンと国防省とコンドリーザ・
ライスが「アメリカ」なら、イエス、私はアメリカを憎んでいる。

I'll meet you 'round the bend my friend, where hearts can heal
and soul can mend.....
友よ、心を癒し、魂を再生してくれる、偉大な文明を育んだチグリス・
ユーフラテスの地で、完全にいかれた私に会うでしょう。

▼「ミタクエ・オヤシン」、世界は一つにつながっている▼

一般にスー族と呼ばれるアメリカインディアンは五大湖付近に住むダコ
タ族、ミズーリー河流域に住み半農半猟の生活を営むナコタ族、そして
一番西に位置し大平原でバイソンを追いながら移動性狩猟生活を営むラ
コタ族とに分けられる。ラコタ族のルッキング・ホース(Avol Looking
Horse )の著書、 <ホワイト・バッファローの教え>にはこう書かれて
いる。
ミタクエ・オヤシン、「私につながるすべてのものに」という言葉には
より大きな意味があります。ここでいう「すべてのもの」とは私たちの
血縁や国、人類だけを指しているのではありません。
母なる地球そのもの、祖母なる大地は私たちの親族であり、同時に祖父
なる空、すべての二本足で立つもの、泳ぐもの、空を飛ぶもの、根のく
にのいのち、這うもの、このように私たちと一緒にこの世を分かち合う
すべてのものたちを意味します。
「ミタクエ・オヤシン」は、すべての生き物、すべての存在とのつなが
りを表わします。私たちはみなつながっており、ひとつなのです。
イギリスの生物物理学者ジェームズ・ラブロックが「ガイア」(ギリシ
ャ神話の大地の女神)と呼んでいるのが、アメリカインディアンのこの
「ミタクエ・オヤシン」の世界観だ。
「地球はそれ自体が大きな生命体。すべての生命・空気・水・土などが
有機的につながって生きている。これをガイアと呼ぶ」
彼のガイア理論では、地球は単なるモノの固まりではなく、無数の生命
のネットワークによって作られる、一つの巨大生命体と見なされた。
1957年、ラブロックが開発した電子捕獲型ガスクロマトグラフィー
は地球上に存在する微量物質を1兆分の1の高感度で分析できる装置で
ある。これによって、DDTなどの農薬が世界中に広がっていることや
フロンガスが大気中に滞って残留していることなどが明らかになった。
ラブロックは龍村仁監督の映画「地球交響曲」第4番の中で、イギリス
の彼の実験室で誤ってある揮発性の薬剤を床にこぼすと、数日後には、
東京の空気中からその分子が検出できると述べている。
米英軍がイラクでまき散らした劣化ウラン弾などの有害物質は当然、日
本にも届いているはずだ。まさに「ミタクエ・オヤシン」、世界は一つ
につながっているのである。
http://www.yorozubp.com/0404/040428.htm