▼ハワイ州出身 アーレン・ワタダ中尉の声明▼07 June 2006

家族、友人、信仰心篤い地域のみなさん、マスコミのみなさん、そして
すべてのアメリカ人同胞のみなさん。
本日はお越しくださり、ありがとうございます。

私はアーレン・ワタダです。アメリカ合衆国陸軍中尉で、3年間服務し
ております。

合衆国陸軍の将校として、重大な不正義に対して声を上げることは自分
の義務であると考えます。私の道徳と法的義務は、憲法に対するもので
あって、無法な命令を下す者に対して負うものではありません。今日、
私がみなさんの前に立つのは、兵士たち、アメリカの民衆、そして声を
上げることもできない罪なきイラクの人たちのために何かを行い、彼ら
を守ることは私の任務だと考えるからです。

米国軍隊の将校として、イラク戦争は道義的に過ちであるばかりでなく、
合衆国の法をも手荒く侵害する行為であるという結論に達しました。私
は抗議のために退役しようと試みましたが、にもかかわらずこの明白に
違法な戦争に加わることを強制されています。違法行為に参加するよう
にとの命令は、間違いなくそれ自体が違法です。私は、名誉と品性を重
んじる将校として、この命令を拒否しなければなりません。

イラク戦争は、抑制と均衡というわが国の民主的システムを侵害してい
ます。この戦争は、憲法の規定によってアメリカの国内法と同等とされ
る国際条約や国際的慣習に違反しています。ほとんど満足な説明もなさ
れていないイラク民衆への大量殺戮と残虐行為は、道徳的に重大な誤り
であるにとどまらず、地上戦に関する軍事法そのものの違反行為でもあ
ります。この戦争に参加すれば、私自身が戦争犯罪の片棒を担ぐことに
なるでしょう。

平常であれば、軍隊にいる人間も、自分の思うことを話し、自分の利益
になるよう行動することは許されます。そうした時代は終わってしまい
ました。私は上官に対して、われわれの行動の意味するところを大局に
立って判断するよう求めました。しかし、まっとうな回答は得られそう
にありません。私は将校に就任するとき、アメリカの法と民衆を守るこ
とを宣誓しました。違法な戦争に参加せよとの違法な命令を拒むことに
よって、私はその宣誓に従います。
ありがとうございました。

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▲アーレン・ワタダ中尉を支援する組織がホームページを立ち上げ、彼
の支持署名を呼びかけています。
以下、呼びかけの翻訳です。
http://www.thankyoult.org/

支持署名を!(Sign the petition!)

なお続く不法な戦争と占領を補強するためのイラクへの派遣を拒否して
国際法、合州国法、米軍法のために立ち上がったアーレン・ワタダ中尉、
ありがとう。

騙しに基づく先制侵略に始まり、イラク民間人数万と米兵約 2500 名の
死、悪名高いアブグレイブ拷問刑務所、つい最近のハディサ大虐殺まで、
この戦争がいかに大きな間違いであるかを示すこれ以上の証拠は必要あ
りません。これらの事実に照らして、あなたがご自身の良心に今こそ従
おうと決意されたことを、私たちは心から評価いたします。

ワタダ中尉、私たちはあなたに賛同します。米軍はとうの昔にイラクを
あとにすべきでした。この暗い時代のなかで、あなたの本当の意味での
リーダーシップを私たちは歓迎し、私たちすべてがあなたの勇気から何
らかを学ぶことができると信じています。

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▼ 米殺害疑惑:イラク・ハディサで民間人被害…暗い影落とす▼
毎日新聞 07 June 2006

イラク・ハディサ

イラク西部ハディサでの駐留米軍海兵隊による民間人殺害疑惑が、新生
イラクに暗い影を落としている。現地では家族を失った悲しみと米国に
対する敵意が渦巻く。米社会もベトナム戦争時の「ソンミ村虐殺事件」
を思い起こさせる残虐事件に衝撃を受けている。背景には武装勢力との
戦闘で米兵が抱えるストレスなどが指摘される。だが、アブグレイブ刑
務所でのイラク人収容者虐待に続く異常事態は米軍の削減・撤退計画に
も影響を与えかねない情勢だ。

■生存者が証言…渦巻く米への敵意

ハディサをパトロール中の米海兵隊員の車両近くで爆弾が爆発し、隊員
1人が死亡したのは昨年11月19日午前7時15分ごろ。米軍は「爆
弾の爆発で民間人15人が死亡、交戦で武装勢力8人を射殺した」と発
表した。だが今年3月の米タイム誌報道で民間人殺害の疑惑が表面化し
た。

「すさまじい爆発にたたき起こされ、銃撃音が聞こえた。銃声が近づき、
弾丸が壁を貫通した」

7人が死亡したアブドルハミドさん一家。三男の妻ヒバさんが、毎日新
聞の依頼で現地入りしたイラクの「アルシャルキヤ・テレビ」のアフサ
ン記者に昨年11月19日当日の模様を証言した。

居間に集まったヒバさんらが次に耳にしたのは台所のドアが破られる音
だった。数秒の静寂。その後、火を噴いた激しい銃声がやむと、廊下か
らアブドルハミドさんの妻ハミサさんのうめき声が聞こえた。

寝室に向かった米兵の足音が遠ざかり、手榴弾とみられる爆発音が炸裂
した。生後3カ月の姪アシアちゃんを抱え裏口から逃げた。15メート
ル先の隣家に駆け込む時、近所の屋根に狙撃兵の姿が見えた。「これが
私が目にしたすべてです」。

被害者家族の代理人を務めるハリド弁護士によると、昨年11月19日
に殺害されたのは発生順に、(1)爆発現場近くにいたタクシー運転手
と男子大学生4人(2)アブドルハミドさん宅で女性と3歳の男児を含
む7人(3)ユニス・サリムさん宅で3〜15歳の子供5人を含む8人
(4)アフマド・アイドさん宅で28〜42歳の息子4人、の計24人。

同弁護士が生存者から聴取し作成した記録によると、海兵隊はアブドル
ハミドさん方に踏み込んだ約1時間後、ユニスさん方に向かった。娘の
サバさん13歳の証言によると、海兵隊は玄関近くにいたユニスさんを
射殺し、サバさんら8人が集まった部屋で小銃を乱射した。

ベッドの下に隠れて一命を取り留めたサバさんは「数十分間ずっと目を
つぶっていた」と同弁護士に語った。家族の血で染まる床を直視できず、
海兵隊に生存を悟られたくなかったからだ。「兵士が家から出て行って
から泣き始めた」という。

ハリド弁護士によると、海兵隊が最後に襲撃したアイドさん宅では棟続
きの住宅に住む息子のジャマルさん一家も集められた。ジャマンさんら
兄弟4人が別室に連れられ、射殺された。「私たちはテロリストじゃな
い」。別室から哀願の声が漏れたという。

海兵隊が警戒を解いた午後4時ごろ、ヒバさんは近所の住民から夫の死
を知らされた。「米国の仕打ちを一生許さない。米国人の群衆の中で自
爆し、人生を終えられたらとさえ思う」と米国への怒りを露わにした。

ハリド弁護士によると、海兵隊は口頭で遺憾の意を示し、死者1人当た
り2500ドル、破壊された家屋1軒につき500ドルの補償金を支払
った。だが、正式な謝罪はない。「われわれが求めているのは司令官名
での正式な謝罪文書と一刻も早い米軍の撤退だ」。ハリド弁護士が強調
した。

■背景に米兵のストレス・・・「ソンミ村虐殺事件」と類似

米メディアによると、民間人殺害疑惑にかかわったのは、米海兵隊第1
師団第3大隊K中隊に所属する12人前後。03年3月のイラク戦争開
始後、複数回にわたり派遣された将兵も含まれているようだ。武装勢力
との衝突で地元住民を含む多数の死傷者を出したイラク中部ファルージ
ャでの戦闘(04年)にK中隊のメンバーも参加しているという。

K中隊所属の上等兵は今回の疑惑について「隊員の死傷で逆上したので
はないか。自分なら(他の隊員を)なだめられたかもしれない」と米テ
レビ局に語った。現地では武装勢力が市民に紛れており「誰が敵か見分
ける方法がない」とも述べた。

2日の記者会見で原因を聞かれたキャンベル・イラク駐留米軍参謀長は
「一般論」と前置きして「戦争法規を守らない敵との戦いでストレスと
恐怖に直面し、戦友が吹き飛ばされれば、暴発することもある」と述べ
た。

イラク帰還米兵の中には心的外傷後ストレス障害(PTSD)が疑われ
る派遣兵が1割に達するとの米国防総省の調査もある。

今回の民間人殺害疑惑はベトナム戦争中に米兵が民間人を大量虐殺し隠
ぺいを図った「ソンミ村虐殺事件」との共通点を指摘する声も強い。同
事件を契機に米国内ではベトナム戦争への批判が高まった。その暗い記
憶がよみがえった形だ。 このため米メディアは疑惑に大きな関心を寄せ、
連日のように報道して いる。

米軍当局は刑事捜査と隠ぺい疑惑に関する調査を進めており、最終的な
結論が出るのは今夏になる見通し。捜査で容疑が固まれば予備審問を行
い軍法会議を開くかどうかを決める。

3年を超えたイラク駐留は巨額の戦費と2500人近い米兵の死亡、2
万人以上の負傷という大きな犠牲を米国民に強いている。最近の米国の
世論調査では、イラク政策に批判的な国民の割合は6割を超えている。

■批判は伝わりにくい

本間浩・法政大教授(国際法)の話: イラク駐留米兵はテロの標的に
されることで猜疑心を深め、不必要な武力行使までしなければ安心でき
ない心理状態に追い込まれている。また、米社会はイラク戦争を対テロ
戦争の一環と理解し、命の危険にさらされている米兵への同情がある。
そのため、兵士が「犯罪行為」をしても、ベトナム戦争のころに比べて
米社会に厭戦ムードが起こりにくく、批判が前線の兵士に伝わらないの
が現実だ。

▲ソンミ村虐殺事件: ベトナム戦争中の1968年3月16日、南ベ
トナムで米陸軍兵士が女性や子供を含む無抵抗の民間人504人を虐殺
した事件。米軍上層部は米国内で反戦機運が高まるのを恐れて隠ぺいを
図り、ベトナム戦争への批判が高まる契機となった。