▼ブッシュ大統領 ゴアのドキュメンタリー映画は「たぶん観ない」▼
ロイター通信 24 May 2006

石油業界出身のブッシュ大統領は、人が変わったように、アメリカ人に
石油依存からの離脱を訴えている。しかし、はたして彼はアル・ゴア元
副大統領が出演する地球温暖化問題を扱った新作ドキュメンタリー映画
を観るのだろうか?

ブッシュ大統領は月曜、シカゴでの会見の際に映画を観るか聞かれて、
「たぶん観ない」と答えた。2000 年の大統領選でブッシュに敗れたゴ
アの映画「 Inconvenient Truth(不都合な真実)」は、今週アメリカ
の映画館で公開される。

ブッシュ大統領は今年になってから石油輸入に頼らずに代替燃料を開発
する必要性を訴えているが、環境保護主義者たちは彼のホワイトハウス
での6年間の実績を酷評している。

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▼ アル・ゴアの一貫性 映画「 Inconvenient Truth 」▼

2000 年の大統領選挙では共和党の不当な策略と保守派主導の連邦裁判
所の判断によってジョージ・W・ブッシュが第 43 代合衆国大統領にな
ったが、その後アル・ゴア元副大統領は政治の世界から足を洗い、二酸
化炭素排出量過多による危険性を世界中で説いてまわった。ゴアにとっ
て環境問題は、Tennessean 紙の記者だった若い頃からの関心事であり、
上院議員時代には「Earth in the Balance」という環境問題の本を出し
ている。

世界各地でスライドショーを何千回と繰り返し、「このままだとあと10
年で地球は破滅する」と切迫する危機について真剣に訴えるゴアの活動
に焦点をあて、逃れようのない科学的見地に立った事実をわかりやすく
解説したのが、目下全米で封切られ話題になっているドキュメンタリー
映画、「 Inconvenient Truth(不都合な真実)」だ。サンダンス映画
祭でも高い評価が下されたとワシントンポスト紙は報じている。

映画は、今週の時点で全米 77 館の先行公開に止まっているものの、先
週末のボックスオフィスでは堂々9位の収益を叩き出しており、6月7日
水曜日のデータでは前日に封切られたばかりの「オーメン」の劇場あた
りの売上げを上回り、「ダヴィンチ・コード」の劇場あたりの平均の約
3倍をマークする勢いだ。

「 Inconvenient Truth(不都合な真実)」は、ゴアによる地球温暖化
の現状と今後の予測であると同時に、彼がなぜ環境問題に関わってきた
かを語る映画でもある。

「私たちはテロの脅威にさらされているだけではない。地球温暖化とい
う脅威にさらされているのです。私たちにできることは、選挙に参加し
て正しい大統領を選ぶことです」とゴアは訴える。そして、「アメリカ
のクルマの燃費効率は最悪で、中国の政府基準にも達していない」「産
業界保護のためと称して電気自動車構想を葬った結果、GMやフォード
は大赤字に転落して、ハイブリッドを得意とするトヨタと本田に完敗し
た」とグラフを示して反省を迫る。

身内民主党からも次期大統領選への出馬を期待する声が高まっていると
の最新の報道から推察すると、これはそれを意識したものかもしれない
と考えられなくもない。だが、ゴア本人は出馬のうわさを否定しており、
ブッシュ政権を批判する作品ではないと主張している。

「これは私に課せられたミッションのように感じている」、今後も政党
を問わず、地球温暖化への取り組みを推進するよう政府に働きかけてい
くつもりだと述べる。

ゴアは予告の中で「科学的な共通認識では、地球温暖化の原因は私たち
なのです」と語る。また、「私が元次期合衆国大統領と呼ばれたアル・
ゴアです」とジョークを交えてしゃべるシーンがあり、場内からは「ウ
ォー」という歓声が上がった。劇場内の声の背後には、「この人こそ合
衆国大統領にふさわしい、そうであって欲しかった」との想いがあるは
ずだ。映画の中でばかりか、最近のメディアに登場するゴアは、驚くば
かりのユーモアのセンスを覗かせて、2000 年の大統領選を通じてでき
た堅物のイメージを払拭する。ゴアには円熟味さえ感じられる。

地球の各地の景観がいかに変貌してしまったかをゴアは語る。今後10年
間で、キリマンジャロの雪はなくなるのだそうだ。

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▼ 一貫性のある強い個性が求められる徴候▼

イラク開戦直後に「ブッシュと同じテキサス出身で恥ずかしい」と発言
したのを契機に、いわゆる草の根保守層の激怒を買ったカントリーミュ
ージックの女性3人組、ディクシー・チックス。発言前には、歌手とし
て最高の栄誉であるスーパーボウルで国歌まで歌っていたのが、過激な
左翼・反米グループの烙印を押され、命まで脅される羽目に陥った。

そんなディクシー・チックスが6月に発売したニューアルバム「テイキ
ング・ザ・ロング・ウェイ」が大ブレイク、いきなりチャート1位の快
挙とともに完全復権を果たした。

この3人の女性がCNNの「ラリー・キング・ライブ」に出演した際、問
題発言の張本人、リードボーカルのナタリー・メインズが「バッシング
は組織的なものだったと思う。今でも許してない」と宣言した。残る2
人の姉妹も、「私たちはナタリーのような言い方はしなかったと思うけ
ど、ナタリーの発言を支えて耐えてきたことを本当に誇りに思う」と、
これまでの姿勢を貫き通した。この3人が、謹慎中に何をしていたかと
いうと、子作りに励んでいたそうで、3人のママたちの子供は総勢7人
になったのだそうだ。さすがディクシー・チックス。

相変わらず演説上手なクリントン前大統領がつい最近の演説で指摘して
いたように、いまはまさに前例のない時代だ。アメリカで揺り戻しが起
きている一例として、一貫性を貫くアル・ゴアとディクシー・チックス
の復権は、時代が求める強い個性のキャラクターを示しているとも読み
とれる。