=================================================

2003年春、オーストラリア人のドナ・マルハーンはイラクで「人間
の盾」に参加した。2004年春、米軍包囲下のファルージャに入り、
その帰路、地元レジスタンスによる拘束を経験する。2004年冬から
2005年の春にかけ彼女は再びイラク、そしてパレスチナに向かう。
2005年8月には米国に渡り、平和の母、シンディ・シーハンのキャ
ンプケーシーについて報告している。そしてオーストラリアに帰国した
ドナ・マルハーンは、米国主導のイラク戦争、イラク占領に最も貢献し
てきたオーストラリアのパイン・ギャップ軍事基地に行き、市民査察を
強行して逮捕された。現在仮保釈中の身ながらドナは講演などで忙しく
飛び回っている。以下は、イラク戦争3周年を迎えた当時の彼女からの
メッセージだ。

=================================================  

▼米軍がイラクから撤退すべき10の理由▼ドナ・マルハーン
20 March 2006

3年前の3月20日早朝、バグダッド上空を飛び交う米軍の戦闘機の轟
音で目覚めたとき、この戦争がイラクと世界にもたらす惨事を思い描い
て胸が悪くなったものです。

3年後の今、私が思い描いた以上にひどい大惨事になっています。みな
さんの多くも、同様に感じていることでしょう。  

あの当時私は、オーストラリア軍は方向転換して、全ての侵略軍と共に
帰国すべきだと呼びかけました。3年たった今も、軍の撤退はイラクに
大混乱をまねくというジョン・ハワード首相の見解には説得力がなく、
私は、より強い確信を持って呼びかけを繰り返します。  

以下は、私が考えるイラクの軍事占領を終わらせなければならない基本
的で、常識的な、10の理由です。  

1)軍事占領がイラクの状態をよくさせることはありえず、悪化させる
だけです。軍事占領は火に油を注ぐようなものです。

2)死者の数は日を追う事に増加しています。侵略と占領が、混乱と無
秩序を作り上げたのです。もう充分です。  

3)イラク人は占領の終了を望んでいます。  

4)大半のオーストラリア人、イギリス人(それに、今や大半のアメリ
カ人も)軍隊の撤退を望んでいます。(最新の調査では、アメリカ人の
63%、オーストラリア人の65%がそれを望んでいることが明らかに
なっています)  

5)侵略は不当であり違法なものです、ゆえに占領もそうなのです。  

6)違法な占領軍に参加することで、国際社会でのオーストラリアの権
威を地に落とし、オーストラリアがテロ活動の標的となる可能性を広げ
ています。  

7)この戦争の継続と外国軍の存在が、地域を不安定化させ、テロを醸
成し、アルカイダを強化させています。  

8)外国軍と外国請負業者がいなくなれば、イラク人が再建を始めるこ
とができます。   

9)有志連合軍はイラク国民に対し、戦争犯罪と人権侵害を犯し続けて
います。   

10)イラク人が自らの主権を取り戻すときです。   

追伸:10ヶ条は、コードピンクの「100万の理由キャンペーン」を
脚色しました。 ドナより

=================================================

2005年12月、米国主導のイラク戦争、イラク占領に最も貢献して
きたアリス・スプリングス近郊のパイン・ギャップ米軍基地に向かい、
市民査察を強行して逮捕され、最高7年の刑が課せられるかもしれない
裁判が10月3日に迫っています。
ここに来てこの裁判に大きなインパクトを与える重大事件が発生しまし
た。オーストラリアで大ヒットした映画「ザ・キャッスル」(1996年:
日本未公開)に重ねて、以下はドナ・マルハーンからの近況報告です。

=================================================

▼「ザ・キャッスル」という映画を憶えてますか?▼ドナ・マルハーン
26 September 2006

あの偉大なオーストラリア映画「ザ・キャッスル」を憶えているでしょ
うか?

近くの空港拡張でその用地のために自宅を取り壊す指定を政府から受け
た一家が、わが家(=キャッスル)を守るために闘う話です。

労働者階級の一家が雇った弁護士は、壊れたコピー機しかないような、
しがない地元の弁護士でしたが、裁判で最善を尽くし、この強制退去は
憲法に違反すると主張します。

憲法に違反すると、「そう感じるんです。」と、彼は判事に訴えます。
「憲法の問題なのです。そう感じるんです、、、」

正しくないことであるのはわかっていても、彼にはそれを適切な法律用
語で表明するのが難しかった。

そう、パイン・ギャップで4人が起訴され7年の投獄で脅されている、
私たちが感じているようにです。防衛(特別事業)法はどこか危なっか
しいものであると考えます。極端で、時代遅れで、偏執的である。防衛
(特別事業)法が正しくないのは、間違いありません。なんて言うか、
そう感じるんです。

映画の話に戻ります。家族は、バド・ティングウェル扮するローリーと
出会います。ローリーは初老の高名な引退判事で、家族だけで闘うのは
困難だと考えるようになります。彼らの家を取り壊す決定は、法律的に
間違っていると認識した彼は、無償で家族の弁護を引き受けます。そし
て彼らは法廷に戻って、勝利します。

私は仲間に言いました。「ザ・キャッスル」のストーリーのようなこと
が私たちにも起こる気がすると。つまり、この防衛(特別事業)法には
間違いがあると信じる引退判事が現れ、私たちに無償で弁護を引き受け
ると言ってくれるのです。

仲間は私の幸運を祈ってくれたものの、自分たちの弁護準備に取りかか
り、その間私は、私たちのバド・ティングウェルを見つけようと努力し
ました。

希望に叶いそうな人もそうでない人も、とにかく手当たり次第にEメー
ルを送りました。たくさん返事が返ってきたわけではありませんが、最
も著名な人たちでは、NGO「リバティ・ヴィクトリア」のブライアン・
ウォルターズが手助けしたいが私たちの裁判期日には忙しくて無理だと
いうこと、ニュー・サウス・ウェールズの「人権評議会」は支持はする
がやはり無理ということでした。ニュー・サウス・ウェールズ大学のベ
ン・ソール博士は書面として法的意見書を提出することはできるが代理
人として法廷に立つことはできないとのことでした。

私が「ザ・キャッスル」のシナリオをあきらめかけた時、電話が鳴った
のです。「ロン・マークルです。あなたの裁判のことで電話しました」

いま私がロン・マークルと言っているのは、引退した連邦裁判官の勅撰
弁護士、ロン・マークル判事閣下のことを意味しています。

ロン・マークル判事は、連邦裁判所裁判官として10年間、主に公益事
件や「戦略的訴訟」を担当した後、早期退職しました。難民問題と先住
民族の権利の長年にわたる擁護者であった彼は、いわゆる「対テロ法」
や、充分な司法審査を経ることもなく極端に高圧的な権力機構を作り上
げようとする現政府の方向性を厳しく批判しています。

これはまさしく私たちのバド・ティングウェルが現れたってこと?

ほんの少し防衛(特別事業)法について論議しただけで、ロン・マーク
ルはこの問題に関して、ただ「感じる」以上の何かを見つけました。

月曜には、北部準州最高裁でのパイン・ギャップの4人に対する審理前
聴聞が電話で行われました。私たちに代理人がついて、初のです。

彼が代理人として紹介された時の検察官たちの顔を見ることができたな
ら、どんなによかったか、、、マークル判事の関与によって、この裁判
はもうひとつ別のレベルのものとなりました。

私たちは、10月3日にこの強権的な防衛(特別事業)法での容疑を却
下させる方向に動き出している、卓越した法律家チームに恵まれたので
す。私たちは、「答弁すべき訴訟に当たらず」と証言するでしょう。

政府は、弁護側に対抗するため、またパイン・ギャップの本質を法廷で
全面的に暴こうとする動きを迎え撃つために、6名もの法律家や勅撰弁
護士を寄せ集めました。

そういうわけで、10月3日の裁判予定日は防衛(特別事業)法の適法
性についての審理前弁論の日となりました。この超パラノイア的法律を
白日の下に暴き出す絶好のチャンスなのです。

法廷の外では、全オーストラリアから集まる活動家と支援者の平和大集
会が私たちを主要課題に引き戻します。パイン・ギャップと破滅的なイ
ラク戦争でのその役割を暴くことにです。

事態は熱くなってきています。オーストラリア中の(世界中からも)個
人や団体からの強い支持を実感しています。

資金援助として寄付をしてくださったみなさん、とても感謝しています。
みなさんの反応はすばらしいものでした。支持署名を送ってくださった
みなさん、非常に勇気づけられました。署名は裁判の期間中、法廷外に
掲示されることになります。

ありがとう。

更なる情報は、入手次第!

追伸:「もし政府機構が、他人に対する不正への手先となるようあなた
に強いる性格のものであるなら、あえて言います、法を犯しなさい。
あなたの人生をそのマシーンを止める抵抗の摩擦にするのです。」
(1848年、ヘンリー・デイヴィッド・ソーロー) ドナより


▲メディア・リリースより
キリスト教平和主義者、最高裁でパイン・ギャップに挑戦
04 October 2006

北部準州最高裁で昨日開かれた4人のキリスト教平和主義者の裁判で、
オーストラリアにある米軍基地に対する世論の批判を黙らせようとする
政府の企みに対する挑戦が繰り広げられた。

4人の被告、ジム・ダウリング、ブライアン・ロー、アデル・ゴールデ
ィー、そしてドナ・マルハーンは、不法侵入で最長7年の実刑を科すこ
とができる1952年の防衛(特別事業)法をわが国で初めて適用され
起訴されている。

グループは、昨年パイン・ギャップ軍事基地を「市民査察」し、極秘施
設の警備をすり抜け基地に侵入することに成功、建屋に登り、バナーを
広げ、写真撮影した。

被告側のロウィーナ・オー弁護士は、防衛(特別事業)法は市民の移動
の自由という基本的人権を制限している。それ故にその適用に当たって
は特に慎重でなければならないと確信していると陳述した。

同法は、パイン・ギャップが外部からの侵略に対してオーストラリアの
利益を防衛していると立証することを政府に義務付けている。従って、
もしそれができないなら、被告たちは無罪とされるべきだとオー弁護士
は述べた。

判事は決定を保留し、判決日を10月12日(木)に設定した。被告た
ちは、10月5日(木)に再び法廷に戻り、彼らにかけられた秘密制限
命令と争い、検察側が提供しない国家情報を得るための開示命令を求め
て争わなければならない。

この起訴は明らかに政治的なものであり、政府の戦争計画に挑戦する市
民を迫害しようとする政府の意図を反映するものであると、被告人のひ
とり、ドナ・マルハーンは語る。

「この裁判は、政府が求めている規制のレベルが過剰なものであること
を示しています。ですから、規制しようとする政府の動きを私たちが抑
制していかなければなりません」と、彼女は言う。

「私たちは、これまでの公式見解に代わるものをオーストラリアの国民
に示します。過剰な秘密米軍スパイ基地は、オーストラリアの安全保障
のキーなどではないことを」

「私たちの安全は、よりよい関係を築くことで生まれるのです」

パイン・ギャップとイラク戦争でのその役割に注目を集めるため、今週
アリス・スプリングスで開かれる全国平和大集会には国中から支援者の
グループが集まってきている。金曜夜には、アイルランドのシャノン空
港で米軍機に200万ドル以上の損害を与えたが、最近無罪になった、
国際的な活動家、キアロン・オライリーを招いて討論会が開催される。