バグダッド・アブグレイブ刑務所の虐待事件が全世界に波紋を広げる中
全米の保守層に圧倒的人気を誇るパーソナリティ、ラッシュ・リンボー
が彼自身のラジオショーでこんなことを言っている。アメリカ人の70
%近くがラムズフェルド国防長官に辞任の必要はないと考える。その背
景にはラッシュ・リンボーの発言にあるような心理が働いているに違い
ない。 下記はラジオ番組「Rush Limbaugh Show」5月4日のトーク
からの抜粋である。

▼米軍兵士がどうのこうのじゃない、これは戦争なんだ!▼

リスナー:「裸の囚人を積み上げてるのは、まるで大学のクラブの悪ふ
ざけみたいな.....」
リンボー:「全くその通り!私が言いたいのはまさにそこなんだ。スカ
ルアンドボーンズ(ブッシュもケリーも入会済み)の入会儀式となんら
違わないことなのに、そのことで私たちは国民の人生をだいなしにしよ
うとしている、米軍の努力の成果を妨げようとしている、そうして愉快
に過ごしたというだけで、兵士のじゃまをしようとしている。兵士らは
毎日狙撃されてるんだ。この兵士たちは愉快に過ごしてたってことだろ
が、感情の発散ってやつを聞いたことあるだろ?鬱憤は晴らさにゃなら
んっていうじゃないか?」
http://mediamatters.org/items/200405050003

▼イラク人虐待には、実はアメリカ中の監獄や警察署内で行われてきた
虐待の前歴がある▼by ムミア・アブ=ジャマール

アブグレイブ刑務所から出てきた写真が世界を駆けめぐっている。これ
らの写真は、インターネット時代にあって、瞬く間にアラブとイスラム
の社会に行きわたり、これまでは隠されていた、特に海外ではめったに
目にできなかったアメリカ人の性格を示している。あざけり笑っている
女性の脇で、全裸で立たされている男たちの姿は屈辱の極みであり、物
事を見分けられる人なら誰でもわかるように、アメリカ人がイラク人を
さらにはアラブ人全体を徹底的に蔑視していることを示している。
「アメリカ人は本来、こういう人たちではない」と叫ぶ政治家がいる。
だが、何よりも真に心を凍らせる、裸の人間を積み重ねるという光景以
上におぞましいものは、アメリカ人たちの顔に浮かんでいる無邪気な歓
喜の表情である。イギリスのタブロイド紙に掲載されたイギリス人兵士
たちがイラク人に小便をかけながら嘲笑している写真も、同様におぞま
しい事実を語っている。これこそ、侮蔑と憎悪と人間性の欠如、そして
征服者の行為である。
1970年8月31日、ブラックパンサー党のウエスト・フィラデルフ
ィア事務所が警察によって強制捜索された時のことだ。自動小銃で武装
した警官たちは、男たちを裸にして街路に立たせた。また、ボストンで
おきた悪名高いチャールズ・スチュアート事件、白人男性が、自分の妻
を黒人に殺されたと主張した事件では、警官隊がボストンの黒人居住区
ロックスベリーにまるで疫病のように大量に襲いかかった。彼らは黒人
の男たちを裸にして、ビーンタウンの街路に立たせたのである。
今、イラクに派遣されている者の多くが、特に予備役から召集された者
の多くが、警察官か刑務所の看守である。イラク人の囚人虐待によって
軍事法廷の告発にさらされている35歳の陸軍予備役兵士チャールズ・
グレナーは、兵役につく前はペンシルベニア州の特級厳重警備刑務所で
あるグリーン刑務所の看守であった。ファイエット郡の法廷記録によれ
ば、グレナーは家庭内暴力によって過去3回起訴されており、現在も禁
止命令を受けた状態にある。
アブグレイブ刑務所におけるイラク人への虐待には、実はアメリカ中の
監獄や警察署内における虐待の前歴があるのである。ニューヨーカー誌
のジャーナリスト、シーモア・ハーシュによれば、男性囚人に対する男
性からの性的暴行ソドミー、さらには殺害事件さえあったという。
http://www.prisonradio.org

▲ムミア・アブ=ジャマール▲
フィラデルフィアのラジオ・ジャーナリスト。元ブラックパンサー党の
広報担当活動家。1981年12月に同市でおきた白人警官殺害事件で
でっち上げ逮捕され、82年死刑を宣告される。一貫して無罪を主張。
一審裁判には、検察による証拠の捏造など多大な疑惑がある。95年か
ら再審請求中。現在、連邦巡回裁判所で再審を請求中。米国における最
もよく知られた死刑冤罪事件であり、支援・救援運動は国際的な広がり
をもっている。 
2003年10月、パリ市はムミアを名誉市民とした。パリ市が名誉市
民の称号を授与したのは、1971年、パブロ・ピカソ以来である。
著書:「死の影の谷間から」現代人文社2001
http://www.jca.apc.org/mumia/

マイケル・ムーアの新作が、親会社ディズニー社の配給阻止で全米での
公開を危ぶまれている。だが、この騒動でわかったこともある。これも
折込済みの言動だとしたら、ますます、マイケル・ムーアから目が離せ
ないことになる。

▼ディズニーがマイケル・ムーアを阻止▼

ウォルト・ディズニー社は、その子会社であるミラマックスの映画配給
部門に対し、辛辣なブッシュ批判を展開しているマイケル・ムーア監督
の新作ドキュメンタリー「 Fahrenheit 911 (華氏911)」の配給を
阻止するつもりであるのを、5月4日、ディズニー社とミラマックス社
の重役が明らかにした。
「華氏911」は、ブッシュとサウジ王家との関係、ブッシュとオサマ
・ビン・ラディンとの関係を描き、ブッシュの911テロ前後の対応を
批判する内容となっている。
以下はCNNのインタビューからの抜粋である。

CNNゴラーニ記者:ディズニーとのやりとりはどういうものだったので
すか?

ムーア:1年ぐらい前、映画を撮り始めてからすぐにディズニーのCEO
であるマイケル・アイズナーが僕のエージェントに対し、作品を支援し
たミラマックスに怒り、僕の作品を配給するつもりがないことを話した
んだ。
ミラマックスの話では、心配はいらない、映画を撮り続けろ、金は出す
ということだった。ディズニーの金は、昨年ずっと振り込まれていた。
作品は先週完成したので、来週にはカンヌ映画祭に出品するつもりだ。
今週月曜にディズニーから作品を配給するつもりがないという最後通告
があった。連中は僕のエージェントにブッシュファミリーの機嫌を損ね
たくないと説明した。特に、フロリダ州知事ジェブ・ブッシュの機嫌を
だ。なぜなら、ディズニーは税制面で優遇されていたからだ。

ゴラーニ記者:ディズニー側から見れば、マイケル・アイズナーが言う
ように、「選挙前に党派寄りの作品に巻き込まれたくない」というわけ
で、公平に見て、もし最終損益に影響する可能性があれば、配給したく
ないと表明する権利があるのでは?

ムーア:メディア企業は国民の信頼の上に築かれている。その信頼は、
全ての意見に耳を傾けるのを許すことにある。私たちは自由で開かれた
社会に生きているのだから、体制に反対する意見であっても、口を封じ
られたり、沈黙させられたりしてはならない。ディズニーはその信頼を
傷つけている。

▼ディズニーとマイケル・ムーアの騒動が公開されることによって、次
の事実がスポットを浴びる機会が生まれた▼
(アメリカンプログレスの記事、Fairness & Accuracy In Reporting )

フロリダ州知事ジェブ・ブッシュは、彼自身が理事を務める州公務員年
金基金を通して約730万ドル分のディズニー株を保有している。前回
のディズニー株主総会では、フロリダ州年金基金の役員とジェブ・ブッ
シュが株主としてアイズナーCEOの続投に反対しており、アイズナーは
自分自身の支配が揺らぐことを懸念している。
ディズニー社のCEOであるアイズナーはブッシュ家の選挙キャンペーン
に個人献金している有力支持者のひとりである。
「あらゆる政治的意向を持つファミリーの要求を満たす」というディズ
ニーの主張に反して、同社のメディアネットワークは極端に保守派に傾
倒している。ディズニー系列のトークラジオ局はラッシュ・リンボー、
ショーン・ハニティ、ビル・オライリー、マット・ドラッジなど、極右
タレントがレギュラーを務めている。またディズニー所有のファミリー
チャンネルは、パット・ロバートソンの聖書原理主義番組「700クラ
ブ」を放送している。
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2004/05/post_4.html

▼「パッション」vs 「華氏911」

1954年にアイルランド系カトリックの家に生まれたマイケル・ムー
ア監督は、神学校に通いながら神父を目指していた。現在でも敬虔なク
リスチャンで、PLAYBOY 誌のインタヴューでは、<おい、ブッシュ、
世界を返せ!>を執筆中、突然神が現れて、「私が代わりに書く」と言
われたと答えている。
当初、マイケル・ムーアの新作ドキュメンタリー、 5月12日から始ま
るカンヌのコンペ部門にノミネートされている「華氏911」に出資を
予定していたのが、メル・ギブソンが設立した制作会社アイコン・プロ
ダクションズだった。だが、昨年5月に突然アイコン・プロダクション
ズは出資を取りやめ、代わりに出資に合意したミラマックスに対して、
保守派は強い批判を行ってきた。つまり、超リベラル派カトリックであ
るマイケル・ムーアと超保守派カトリックのメル・ギブソンとの協調に
分裂が生じていたことになる。
映画「パッション」によってキリスト教右派に歩み寄ったメル・ギブソ
ンは、キリスト教同盟が大統領選に向けて今年9月24日と25日に開
催する「勝利への道2004」にもブッシュ大統領、パット・ロバート
ソン、カール・ローブらと共に招待されている。今や、メル・ギブソン
はキリスト教右派のヒーローになったようだ。全世界的な規模で邁進し
続けている「パッション」に対し、「華氏911」は公開すら危ぶまれ
ているのが現状である。
http://www.yorozubp.com/0405/040508.htm