▼またひとり母親が殺されたってだけ▼By ALISON WEIR
06 October 2006

誰も報じさえしない。USAトゥデイ、ボストングローブ、ボストンヘ
ラルド、シカゴサンタイムズ、アトランタジャーナル・コンスティトゥ
ーション、サンフランシスコクロニクル、シアトルタイムズ、セントル
イスポスト・ディスパッチ、ヒューストンクロニクル、タンパトリビュ
ーンと、国内の大手新聞をめくってもなにも出ていない。

CBS、NBC、ABC、CNN、PBS、NPR、Fox News は なにも報じなか
った。ゼロである。

LAタイムズ、ワシントンポスト、NYタイムズ、AP通信は各自、せ
いぜいワンセンテンスで彼女について報じた。3紙はすべて詳細を除外
した。LAタイムズは意味ありげに彼女の年齢を省き、ワシントンポス
トはイスラエルの戦車の砲弾で殺されたと(誤りを)報じた。

目撃者らによると、彼女を殺したのは戦車の砲弾ではなかった。至近距
離で始動させた、まとまった弾丸だった。

質問に答えていなかったのでイスラエル兵士らが彼女の夫を殴っていた
と近所の人たちは報告する。むちゃにもと言うか、勇敢にもと言うか、
35歳の女性が口を挟んでさえぎったのだ。彼女は夫はつんぼだと説明
しようとした。夫は言ってることが聞こえないんだと兵士らに向かって
叫び、夫を殴るのを止めさせようとした。それで兵士らは彼女を撃った。
数回。

彼女の名は、Itemad Ismail Abu Mo'ammar

けれども、彼女は死ななかった。しばらくは生きていた。命を救うため
救急車が彼女を搬送するのをイスラエル兵士らが許さなかったので、数
時間血を流している必要があった。彼女を救うのに、夫と子供たちには
なすすべがなかった。

およそ5時間後に救急車はやっと彼女を病院に搬送するのを許された。
搬送先の医師らにできたのは、アメリカ人にとってのクリスマスシーズ
ンのように家族が大勢集まるシーズンのラマダン開始の数日前に、彼女
の死を宣告することだった。残された子供は11人。このどれもがワシ
ントンポストの記事にはなかった。ポスト紙は彼女の死をワンセンテン
スの半分で報じていた。

同居していた彼女の夫の兄弟もまた殺された。彼は28歳の農夫だった。

なんだってこんなことになったのか?家族はイスラエルによって指名手
配中のレジスタンスの闘士の後ろに住んでいた。彼らは失敗したイスラ
エルの暗殺・誘拐計画での「付帯的ダメージ」に過ぎなかった。

その日、合計して5人のパレスチナ人が殺された。他の3人は別のエリ
アで殺された羊飼いの若者だった。単に、時と場所(ガザ)を間違えた
にすぎないように思われる15歳の少年2人と14歳の少年ひとりだ。

これはアメリカのニュースメディアの多くで報じられなかった。なので、
子供たちの目の前で母親が出血死するとか、若い羊飼いがこっぱ微塵に
吹っ飛ばされるのを、アメリカの大衆が知ることはなかった。報道価値
がなかったのは明らかだ。

「りっぱな」ニュース報道の事例研究

ワシントンポスト紙は少なくともこれらの死には触れた、なのでことに
よるとジャーナリストの規範に関心を持つ人は、ポスト紙のその報道を
ほめたたえるかもしれない。

さらに、ワンセンテンスで報じるポスト紙はものすごく人を惑わせる。

Itemad の死の事件を誤って報告するのと決定的事実をなおざりにする
のに加えて、ポスト紙の記事は全体の文脈を不正確に描写した。そして
この5人の死が「相対的に平穏な」期間(6ヶ月)をうち破ったと読者
に告げる。

先の6ヶ月、ひとりのイスラエル人の子供もパレスチナ人によって殺さ
れてきていないのは真実だったが、この期間中にイスラエルは8ヶ月の
乳幼児と3歳の子ども数人を含める75人の若きパレスチナ人を殺して
きているというのが事実である。

私はポスト紙に電話して、訂正を載せる必要性について海外部の編集者
と話をした。そしてItemad の殺害の情報を提供する。編集者はこれを
イスラエルを基点に行動する記者に回すと言ったが、彼がガザに行くこ
とは不可能だったと釈明した。私がこれに同意しないと、彼女は「不可
能」を「大変困難」に改めた。編集者らが重要と考える事件はなんであ
れ、調査して確認する求めに応じられるガザの通信員にポスト紙が接近
できるということに言及するのを編集者は怠った。

次に私は上の情報を含む手紙を新聞に書いた。運よく、ポスト紙の手紙
部門は見たところそれを調査して確認し、ふさわしい手紙だと決断した
ようだった。私の手紙を公表することを考えており、私がそれを書いた
当人であること、そしてどこかよそに情報を送っていないことを正式に
認める必要があると私に通知するEメールを送って寄こした。

私は同意する返事をした。私たちはもう少しメッセージを入れ替えて、
すべてがはっきりと的確に見えてきた。こんなふうに出版物があなたに
連絡を取ると、順当にあなたの手紙はその後まもなく公表される。私は
期待して待った。そして待った。

彼らの記事からほぼ2週間、新聞が私の手紙を印刷しないことにしたと
いう通知があった。ポスト紙はどうやら、訂正を載せる必要はないと決
定したようである。

私はそういうことかと思った。

ワシントンポストの原則についての声明が、「この新聞は間違いをする
数を最小にすること、そして生じた間違いを正すことを誓う、、、正確
さが私たちのゴール;率直さが私たちの防衛手段」と宣言するとはいえ、
「新聞編集者というアメリカンソサエティ」は、これら職業上の倫理に
かなった必要条件を明快にする。任務の間違い、あるいは省略が、「意
味のある」ときに限ってわずかに訂正は印刷される必要がある。

そして、つまるところ、これらはただのパレスチナ人、11人の子供の
母親がまたひとり死んだってだけのこと。

▲アリソン・ウェアーは、イスラエル・パレスチナのアメリカのニュー
ス報道について、徹底的な研究と例証となるヴィデオを出している、
「If Americans Knew 」の専務編集者である。

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▼アメリカとイスラエルの戦争犯罪の責任を追求する国際キャンペーン
の呼びかけ▼IAC(国際行動センター) ラムゼイ・クラーク
20 August 2006

2006年8月30日、IACはアメリカとイスラエルに対し、平和に
反する愚かしき行為である侵略戦争と平等な国家主権の侵害を主とする
キャンペーンを開始します。彼らの戦争犯罪には過剰な武力行使と民間
人や民間施設をターゲットにした無差別爆撃、地域全体への集団的犯罪
が含まれます。

数千人を超える死者と数万人の負傷者、このひと月だけで、レバノンの
民間施設への破壊には100億ドルと試算される補償が必要です。それ
だけではありません。オスロ合意以降のパレスチナでの何万人もの死傷
者とパレスチナ政府への系統だった破壊、パレスチナ閣僚の半数とパレ
スチナ議会議長の誘拐、指導者の暗殺と他の無差別の殺害、アラファト
議長の議長府、ガザとヨルダン川西岸の外務省施設、民間施設の破壊の
補償も要求します。

現在の停戦が維持されないなら、さらに大胆な行動がとられなければな
りません。アメリカとイスラエルが、レバノン、シリア、そしてイラン
の主権を尊重し、さらに残酷にも58年遅れでパレスチナの主権を理解
し、尊重する、絶対的な保証がなければなりません。

アメリカとイスラエル政府の責任者は、彼らの犯罪行為に対する訴えに
責任を持って従わなければなりません。そしてアメリカでの弾劾とイス
ラエルでの適正な法的処置によって公職を解任されなければなりません。

レバノンの新たな悲劇は、数百人の市民、子ども、女性そして男性の死
をもたらしました。400万の人口のほぼ4分の1にあたる百万人が家
を捨て国内外に脱出しました。平和がもたらされても破壊されたインフ
ラの再建には何十年もかかるでしょう。レバノンとイスラム教世界全体
を通して、イスラエルとアメリカに対する怒りは、ほかのどんな感情を
も上回っています。新たな怒りはすべての大陸に広がっています。

もし2人の兵士の拘束が、イスラエルが行ったような国全体、国民全体
に対する攻撃を正当化するなら、法もなく戦争の対案もなく、平和への
希望もないことになります。

3週間以上前のことは忘れてしまう人でなければ、3人のイスラエル兵
の拘束が今の暴力のきっかけになったとは信じられないでしょう。イス
ラエルとレバノン国境の紛争は何十年と続いてきたことで目新しいこと
ではなかったはずです。今年、パレスチナ議会選挙でハマスが多数派と
なって以来、イスラエルはパレスチナ閣僚の半数を誘拐し、外務省施設
や他の建物を破壊して、西岸とガザとでパレスチナ人の虐殺を実行して
きたのではなかったか。

私たちは問わなければなりません。今年初めにアメリカによってシリア
の平和維持軍がレバノンから強制退去させられたこと、そして元レバノ
ン首相ハリリ氏が暗殺された後のイスラエルの政治的圧力が、レバノン
南部のリタニ川までイスラエル軍が急襲して領土を再占領する前触れで
なかったかどうか。シリア軍がレバノンに駐留している間は、そのよう
な攻撃は起きていませんでした。

さらに私たちは、レバノンとパレスチナに対する攻撃がシリアとイラン
に対するより大きな軍事行動への前兆でありはしないか、訊ねなければ
なりません。ブッシュ大統領は、彼がイランとシリアの政権交代を何よ
り望んでいて、そのためにレバノンとパレスチナに暴力の責任を押し付
けようとしたのを極めて明瞭に示しました。

イラクでそうだったように、レバノンで私たちは侵略戦争、最高度の国
際犯罪を目撃しました。国連憲章の第一原則に違反するレバノンの主権
侵害。空からの攻撃に対し無防備な国家に対するイスラエル空軍機の攻
撃を含む大規模な過剰攻撃。民間人をターゲットにする攻撃。そしてレ
バノンのすべての人が苦しむ集中的な攻撃です。

パレスチナの将来は、中東の平和の主要な課題のまま残されています。
その未来はオスロ合意以来、常にさらなる危険に晒されています。パレ
スチナの全住民がイスラエルが更新する戦争へのロードマップが繰り出
す暴力に苦しめられています。

ジョージ・ブッシュ大統領は、国際的な政府首脳の中でただひとり、レ
バノンやパレスチナに対するあらゆる攻撃、イスラエルのあらゆる行動
を支持します。これは、平和に心を砕き偽善では平和をつくれないこと
を理解するすべての人を侮辱するものです。

ブッシュ大統領が恐怖と無法の軍事力を優先する彼の政策を遂行するの
を許せば、私たちは世界中に暴力を拡大する危険を冒すことになります。

9月30日、私は国連チャーチ・センターであなたにお会いするのを楽
しみにしています。この歴史的な集会は「アメリカとイスラエルの戦争
犯罪の責任を追求する国際キャンペーン」における一連の国民的で国際
的な社会的集会の第一歩となるでしょう。

▲IACを主催するラムゼイ・クラークは米国の元司法長官である。

http://www.iacenter.org/archive-2006/rc-aug302006.htm
(IAC=インターナショナル・アクション・センター)