▼ブッシュ大統領の一般教書演説の反応▼

起立して拍手するいつもの光景に、イラク戦争に言及する段になると、
決まりの悪い沈黙が生まれました。現政権の置かれた立場を象徴するか
のようなブッシュ大統領の演説から一夜明けた24日、大統領予備選か
らの撤退を表明したジョン・ケリー上院議員(マサチューセッツ州選出)
が、議会の「増派反対決議」に関連して本会議場で演説を行いました。
いつになく晴れやかな様子で「シーア派とスンニ派の和解と共存を政治
的に達成する中で感謝されつつ撤退するのが当面の目標であるべきなの
に、両派の武装勢力を敵に回して反米気運を煽っているのは本末転倒」
と歯切れよく言い放ちました。

また上院軍事委員会では共和党のチャック・ヘーゲル議員(ネブラスカ
州選出)が「人命をピンポン球のようにもてあそぶのはいい加減にして
欲しい」と発言するとともに、増派反対決議に賛成票を投じました。彼
は翌日のNBCでは「この戦争はアメリカの勝ち負けではない、イラク
国内の各勢力が和解できるかどうかだけがポイントなのだ」と述べてい
ます。共和党議員団の多勢は、増派反対決議に反対はしたものの、「大
統領の政策は間違っている」とコメントする議員が多数見受けられたの
が印象的でした。

同じ24日、チェイニー副大統領がCNNのウォルフ・ブリッツアーの
インタビューにおいて、「イラク政策が失敗だというのはゴミのような
見解だ」と強気な発言をしています。とはいえ、この日もCIA工作員
身元漏洩事件の公判が行われており、彼の補佐官リビーはむろんのこと、
副大統領自身の関与にも言及が及んでいるとのニュースが聞こえてきて
おり、悪あがきとの印象が拭えません。

イラク問題だけではなく、「レイムダック化したブッシュが、起死回生
を狙ってイランに攻め込むのではないか」との危機感が政界の一部には
あり、先週末には上下両院の民主党で「イラン攻撃禁止決議」を通過さ
せブッシュを縛ろうという動きがありました。MSNBCで人気急上昇
中のキース・オルバーマンなどは、「私は本当に危険だと思っている」
と繰り返し放送で述べて、イラン敵視の報道を続けるFOXニュースを
「FOX・ナッシング(無意味)チャンネル」と呼んで牽制までするに
至っています。

いずれにしても、ブッシュが「スンニ派もシーア派もイスラム急進主義
は全て悪」という単純な見解をまたしても持ち出し、それに対して上下
両院が「ミュート(だんまり)」の時間で応えた瞬間に、この6年間の
アメリカが抱き続けてきた善悪二元論が溶解した感があります。世界は
それほど単純ではないということです。

▼バグダッドで掃討作戦展開 駐留米報道官が明らかに▼
毎日新聞07 Feb.2007

イラク駐留米軍のコールドウェル報道官は7日、首都バグダッドの治安
回復と武装勢力・民兵組織の掃討を目指す米・イラク軍の合同作戦がす
でに開始されていると明らかにした。AP通信が伝えた。バグダッドで
は3日に死者135人を出す自爆テロが発生し、イラクのマリキ首相ら
が合同作戦の開始が遅すぎると不満を表明したばかり。米軍発表にはイ
ラク側の不満を緩和する狙いもあるとみられる。

コールドウェル報道官は7日の記者会見で、「マリキ首相の計画(掃討
作戦)は実行され始めており、準備が整い次第、後日、完全な形で実行
される」と述べた。報道官は参加部隊の規模などは明らかにしなかった
が、「一部の部隊はすでに配置されており、今後、増派部隊が配備され
る」と説明した。

イラクからの報道によると、イラク治安部隊は6日からバグダッド中心
部への配置を急いでいる。イラク政府のダッバグ報道官はロイター通信
に「明らかな作戦開始の時期はない」と述べており、作戦規模は徐々に
拡大されるとみられる。

バグダッドでの大規模掃討作戦は先月6日にマリキ首相が発表。米軍も
準備状況を断片的に明らかにしてきたが、本格的な開始には至っていな
いとの見解を示してきた。

しかし、バグダッド中心部の市場で今月3日起きた自爆テロの犠牲者数
は03年3月のイラク戦争開戦以降、最悪を記録。また、米軍報道官は
7日、バグダッド北西部で米軍のヘリコプター(チョッパー)が墜落した
と発表した。ヘリコプターの墜落は1月20日以来5機目。AP通信に
よると、イスラム教スンニ派組織がインターネット上で撃墜を認める声
明を出した。

先月10日にブッシュ米政権が発表したイラク新政策は米軍増派による
バグダッドでの治安回復を主眼に据えている。だが、首都では宗派間抗
争による攻撃やテロが相次ぎ、治安は悪化の一途をたどっている。マリ
キ首相は今月6日、イラク軍幹部らに合同作戦開始の遅れへの不満を表
明した。米軍が7日に「すでに作戦は開始されている」との認識を示し
たことは不満を和らげる狙いがあるとみられる。

▼1週間で推定1000人が死亡▼CNN 05 Feb.2007

イラク内務省は4日、ここ1週間で銃撃や爆弾事件によるイラク全土の
死者が推定1000人に達したとの見解を明らかにした。

推定死者数は内務省と保健省、国防省のデータを集計して算出され、民
兵組織やテロ組織のメンバー、民間人、イラク治安部隊要員が含まれて
いるという。

首都バグダッド中心部では3日、市場を狙った自爆テロがあり、少なく
とも128人が死亡、343人が負傷した。内務省の爆弾処理担当者に
よると、犯行には1トンの爆発物を積んだトラックが使用されていた。
4日には中部バクバ北方20キロのカリス市内で、バス停留所を狙った
自動車爆弾事件があり、4人が死亡、20人が負傷。バクバ東方20キ
ロのカナン市内にある屋外市場でも爆発物を積んだバイクが爆発し、5
人が負傷した。またバグダッド市内では路上爆弾や銃撃、迫撃砲で14
人が死亡、46人が負傷した。

▼米・イラク軍、バグダッドで大規模掃討作戦開始へ▼AP 通信
05 Feb.2007

イラク軍顧問を務めるダグラス・ヘックマン米軍大佐によると、バグダ
ッド市内にはすでに、米軍、イラク軍の部隊が展開している。米軍から
は既存の1万5000人に加え、約8000人がバグダッド入りして、
イラク人部隊に加わるとみられる。同大佐はまた、作戦の期間について、
「今夏の終わりには成果を示せるだろう」と述べた。

マリキ政権が発足した昨年5月以来、バグダッドで掃討作戦が実施され
るのは3度目。これまではマリキ首相が自らの支持基盤であるイスラム
教シーア派民兵組織の掃討に消極的だったために成果が挙がらなかった
との見方が強い。しかし、ヘックマン大佐は今回の作戦について、シー
ア派民兵の本拠地サドルシティーなども対象になると言明している。


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