■イラク首相、米軍の壁建設に「待った」■23 April 2007

「テロリストの侵入を防ぐ」として、イラク駐留米軍が首都バグダッド
の特定の街区全体をコンクリート壁で囲う工事を始めたところ、イラク
側から「治安対策の失敗隠し」「人権侵害だ」と強い反発が起きている。
マリキ首相も22日、「建設中断を命じた」と明らかにした。

駐留米軍によると、壁を建設しているのは、バグダッドの中央を流れる
チグリス川東岸のスンニ派地区アダミヤ。東岸は宗派対立の進行でほぼ
全域がシーア派地区になったが、同地区だけが孤島のように残された。

アダミヤにはスンニ派武装勢力が潜み、1月には米民間警備会社のヘリ
が撃墜された。シーア派地区へのテロの拠点でもあり、シーア派民兵組
織が報復として頻繁に迫撃砲弾を同地区に撃ち込んできた。このため、
壁は地区住民を守るだけでなく、スンニ派武装勢力の行動を規制する意
図もあるとみられる。

米軍のキャンベル准将は21日、「宗派の分断線に沿って街を分割する
意図はない。住民により安全な生活を提供するためだ」と釈明。イラク
治安部隊や地域住民との調整もしており、「効果がなければ撤去する」
と臨時の措置を強調した。

しかし、イラクの議員らが一斉に抗議した。クルド勢力のオスマン議員
はAFP通信に「米軍と政府が、治安対策に失敗した証拠だ」と批判。
マリキ首相も22日、訪問先のカイロで会見し、「私は壁に反対。建設
は中断される」と明言した。

バグダッドでは、省庁やホテル、市場、警察などあらゆる公共施設が爆
弾テロよけの壁に囲まれ、一定の効果をあげている。しかし、街区全体
を壁で囲う例はなく、スンニ、シーア両派の分断を物理的に象徴するも
のとして、イラク人にはなお抵抗感が強い。

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■訪日したイラクのマリキ首相に手みやげ577億円■06 April 2007

日本政府は6日、戦争で破壊されたイラクの上水道や電力設備の修復な
どのため、総額約577億円の円借款を新たに供与する方針を固めた。
9日にイラクのマリキ首相と会談する安倍晋三首相が支援を表明する見
通し。すでに供与が決まっている円借款1028億円についても両国間
で正式契約する。

日本政府としてイラクの復興支援に今後も協力する姿勢を示すとともに、
石油埋蔵量が世界3位の同国との経済関係を強化し、石油輸入の安定確
保を図る狙いもある。

政府はイラクに対し、総額15億ドル(約1785億円)の無償資金協
力と35億ドル(約4165億円)の円借款を供与する方針を表明。無
償資金協力はすでに使い道が決定し、円借款も案件ごとに順次発表して
いる。

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■カーシム・トゥルキさんの講演■15 April 2007

イラクのファルージャで支援活動中に武装勢力に拘束された高遠菜穂子
さんら三人の日本人が解放されてから15日で3年になる。高遠さんは
人質事件以降もイラク国外から支援を続け、バグダッドで路上生活する
少年たちが手に職をつけるなど、着実な成果が実っている。

4月2日、東京都文京区の文京区民センターで行われた支援グループの
一員、カーシム・トゥルキさんの講演会には約90名が出席し、テレビ
朝日のクルーも取材に訪れた。講演会の冒頭、イラク支援ボランティア
の高遠菜穂子さんがイラクの現状について報告した。イラクではイラク
人がヨルダンなどの海外に約200万人避難し、「国内避難民」と呼ば
れる人々も約170万人にものぼる現状や、イラク国内の情勢について
はイラク国営放送が報道しないと海外メディアが報じないため、3〜4
年前から一般市民が家庭用ビデオカメラなどを使って市民メディアを通
じて伝えようと努力していることを述べた。

また、かつてのイラクではイスラム教スンニ派・シーア派・クルド人・
キリスト教徒など様々な宗派の人々が暮らしていたが、イランにつなが
りが強いとされているイスラム教シーア派の亡命イラク人が政府の実権
を握ったため、シーア派民兵組織の民兵が軍人や警察官になり、米軍の
代わりに検問に立ったら住民に「お前はシーアかスンニか」と質問し、
イスラム教スンニ派と分かると逮捕する(一部ではキリスト教徒や同じ
シーア派住民も逮捕される)などの組織的なスンニ派浄化が進められて
いることなどが語られた。

日本に滞在中のカーシムさんには、16歳になるいとこが3月27日に
イラク軍に捕まって殺害され、4日後の今月になって遺体がゴミ捨て場
で発見されるという惨いニュースが伝えられた。

講演で彼は、「ラマディでは民間人が何人死んだかというのはニュース
にならない。毎日、ラマディでは民間人が死んでいます」と切りだし、
厳しいラマディの現状や自身の体験などを語った。

電気・電話・医療サービスが絶たれたラマディ

ラマディでは2003年にイラク戦争が終わって数日後、米軍のイラク
占領に反対する平和的なデモが行われたが、米軍が武力攻撃したため、
約10人が死亡、これをきっかけに住民と米軍との間で「報復の連鎖」
が始まった。

米軍は掃討作戦を実施し、ラマディの総合病院を占拠。駅は10回も空
爆され、サッカー場も破壊されて20カ所にもわたる学校が占拠された。
学校は狙撃兵のポイントになるので周辺の住宅などがブルドーザーで破
壊され平らにされ、住民は避難民となった。ラマディにあるイラク唯一
のガラス工場は、今では米軍の刑務所になっている。発電所なども攻撃
されたので、電気・電話・医療サービスがカットされてしまった。唯一
の通信手段はインターネットで、直接衛星回線につないで外部とのやり
とりを行っている。

日本人ジャーナリストと同行中に拘束

2003年6月、日本人フリージャーナリストの志葉玲さんと取材活動
中に米軍に捕まり虐待された。初めて米海兵隊に逮捕された。なぜ逮捕
されたかはわからない。「北朝鮮のスパイか」と言われ、軍事基地の写
真を撮っていると言われた。連行された空軍基地には200人もの人が
いて、若者・老人・障害者もいた。私語は一切禁止された。

棒で米兵に打ちのめされ、頭には袋をかぶせられた。袋をかぶせられた
まま両手両足を縛られ、外に連れていかれた。熱いコンクリートの上に
4時間置き去りにされた。2度目の拘束は、アルカイダグループに誘拐
されたとき。4時間ほどだったが、アメリカとなにも関係ないことがわ
かると釈放された。

ブログを書いて米軍に拘束、連行

最近、また海兵隊に捕まった。理由はラマディのことをブログに書いた
から。高遠菜穂子さんが「これ(ラマディの現状)は世界に伝えるべき
だ」と言った。僕のメッセージを転送したことで、多くの人々から反応
があった。2006年9月27日深夜2時、海兵隊が家に押し入ってき
た。家中の家具を壊し、金目の物を盗み、コンピューターを没収した。
一緒に兄も捕まった。僕のブログをプリントアウトして、注意深く米兵
の殺された数、民間人の殺された数を読んでいた。

ラマディではありふれた日常で、海兵隊はドアを蹴破って入ってくる。
家族は目隠し・手錠をされ、家の一カ所に集められ、女・子供も同じ扱
いを受けた。探している人が見つかるまで、家族は人質として扱われる。
探している人が見つかると解放される。僕の18人の家族は電気もない、
窓を閉められた状態で一つの部屋に押し込められ、窓から銃口を突きつ
けられて脅された。

僕と兄は米軍の戦車に押し込められた。目隠しと手錠をされていたが、
米兵と一緒に走らなければならず、何度も転んだ。基地に連れて行かれ
2日間そこにいた。ラマディ周辺にはたくさんの米軍基地があり、基地
に収容されている人は最後には元ガラス工場の刑務所に連れて行かれた。
囚人はオレンジ色の服を着せられ、1日2度は裸にされた。一度はシャ
ワーを待つときで、20分ほど全裸でシャワーを待つのだが、親子でこ
れをやらされているのを見た。もう一度は真夜中前、軍の情報機関の尋
問を受ける前と後には必ず裸にされた。裸にされている間、士官も兵士
もからかってきた。体調が悪い人も裸にされ、米軍の診療施設に連れて
行かれた。

ファルージャ再建プロジェクトに取り組む

ラマディとファルージャのエンジニアと教師からなる仲間で再建プロジ
ェクトを行っている。ファルージャでは街の7割が破壊されてしまった。
若者の中にはアメリカに対する怒りがある。武力闘争に走ってしまう若
者もいる。そうした若者を再建工事で忙しくさせて近隣の人々のために
役立ってもらう。

怒りや憎しみを持つ若者と話し合うのは難しく、実際に肉親を殺された
人に平和を説いても相手にされなかった。そこで実際に学校の再建工事
を行い、手伝ってくれと言った。僕たちがやっていることは微力で困難
が大きいが、地元の住民から信頼されている。これまでに診療所やイン
ターネットセンター、消防署を再建した。

ちなみに、ファルージャ戦闘の時は米軍戦車の消火活動のため消防車が
唯一ファルージャ入りを許され、消防車が救急車の代わりを務めていた。
米軍に占領された後は、学校の備品は破壊され、壁に狙撃の穴をあけら
れた。

兄を殺した米軍兵士

いろいろな体験があるなかに、2006年6月の兄の死があります。兄
は3歳の息子を車に乗せていたが、海兵隊の射撃を避けようとして事故
を起こした。病院に行く途中、海兵隊のチェックポイントがあり、父と
兄とケガした兄はそこで止められた。戻ることも許されず、40分後に
兄が死んだことを確認してから通された。僕にとってこの米兵は殺人犯
だ。

もしラマディ市内に診療所があれば、検問所であんな目にはあうことは
なかった。次に僕はこの街に診療所を建てる。

講演後、参加者からの「日本政府に対してどう思われるか」との質問で
カーシムさんは、「いかなる支援でも、銃を持つ支援は偽りの支援です。
兵士は兵士であり、民間の支援は民間の支援です。イラクの人たちの支
持は得られません」と語り、「どんなものも米軍に対する支援は、アメ
リカの犯罪に対する支援です」と、航空自衛隊をいまだに派遣している
日本政府を批判した。

また、イラク国内での宗派対立については「宗派対立は民間人の対立で
はなく政治的な対立です」としたうえで、「イラクのシーアとスンニの
人々は兄弟のように暮らしています。基本的に対立はありません。対立
を起こしているのは欲深い政治家です」と語った。

▲カーシムさんのブログをまとめた本が日本で翻訳出版されています。
「イラクからの手紙ー失われた僕の町ラマディー」著カーシム・トゥルキ
共訳 高遠菜穂子 細井明美 A5版 84ページ 
500円(送料込680円)
お求め先はイラクホープネットまで。
http://www.iraq-hope.net/


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きままなブログを始めました。よりのんきでよりビジュアルな内容に
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