グアムでの日米合同演習というのは漠然とはわかっていても、日本の自

衛隊がここまできていることに、そしてまたアメリカのメディアがこう

分析していることに、思わず冷や汗をかきます。6月23日付ニューヨ

ークタイムズ紙の「日本は軍事的束縛から脱する」という特集記事です。

日本のメディアが伝えなくとも、お隣のメディアはちゃんと伝えていま

した。

以下、人民日報の記事です。

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日本の自衛隊による戦後初の爆弾投下訓練は北朝鮮を狙ったものである

と、米紙ニューヨークタイムズは分析していた。

ニューヨークタイムズは23日付の1面と6面で「連日の爆弾洗礼、日

本は軍事力抑制から抜け出す」と題した記事で、自衛隊が先月西太平洋

の孤島で500ポンド(約227キロ)爆弾を投下する訓練を行ったと

報じた。

同紙によると、これは一見普通の軍事訓練だが、日本としては防衛目的

の軍事訓練のみを許容する憲法の規定を越える非常に重大な事件という

わけだ。

とりわけ最新型の F2戦略爆撃機がグアムから240キロ北方の外国の

島まで飛んで爆撃訓練を行ったことには、「非常に挑発的で、意味深い

メッセージが込められている」とし、この爆撃機はおそらく北朝鮮のあ

る地点に爆弾を投下して帰還する訓練を行ったものと同紙はみている。

このような攻撃的軍事訓練に対する心配の声に対して日本は、「爆弾投

下は防衛のためのもの」という詭弁(きべん)を展開している。訓練を

行った航空自衛隊の司令官は「爆弾投下は常に攻撃を意味するものでは

ない。爆弾は防衛のためにも使用可能だ。われわれはその訓練を重点的

に行っている」と奇怪な論理を展開した。

同紙は軍事的タブーを破り始めた日本の行動について、北東アジアの安

全保障の軸を日本に任せようとする米国の戦略的支援によるものと指摘

する。最近5年間で自衛隊は米軍の一部のようになり、両国は緊密な軍

事関係を維持している。

日本はインド洋に護衛艦と燃料供給船を待機させ、アフガニスタンの米

軍や他国の軍隊を支援している。イラクではクウェートから飛来する米

軍とともに、物資運搬の支援を行っている。

今回の訓練は日本と米国がグアムで行った初めての訓練であり、日本で

今後導入が有力視されている最新鋭の F22戦闘機なら、日本の北部から

グアムまで2700キロを給油なしに飛行できる。今回の訓練に参加し

た自衛隊のパイロットは「一気に攻撃できる」として露骨に自慢した。

日本は最近になって米国が輸出を禁じている最新鋭の F22戦闘機導入に

強い意欲を示している。 F22は、現時点ではステルス性能を持つ完ぺき

な戦闘機との評価を受けている。

ニューヨーク・タイムズは自衛隊について、構成員は24万1000人

と周辺国より小規模だが、アジアでは最も精巧な組織と評価しており、

400億ドル(約4兆8000億円)に上る防衛費は世界でも5本の指

に入ると指摘する。また、国防予算以外で偵察衛星の打ち上げも行って

いる。

日本の安倍政権は北朝鮮の脅威と中国の軍事力強化を名分として、最近

になって防衛費を2倍に増やし、第2次大戦での従軍慰安婦問題など過

去の罪をあいまいにするため、帝国主義軍隊の名声を強化しようとして

いる、と同紙は報じた。

マサチューセッツ工科大学で日本問題を研究するサミュエルズ教授は、

「安倍首相や小泉純一郎前首相のように、伝統的な価値観を特有の歴史

的観点から見る政治家たちは、太平洋戦争で日本が犯した過ちはもう問

題ではなく、他国のように軍事力を強化しなければならないと考えてい

る」と分析した。

最も大きな問題は、米国が日本の軍事大国化を積極的に支援していると

いう事実だ。グアムでの訓練で、日米両国は2週間の空中戦シミュレー

ションを行い、最終日には西太平洋の孤島に爆撃訓練を敢行して最後を

飾った。

米軍司令官は「今回の訓練は新しい環境でお互いの信頼を強めるのに役

立った」と満足感を示した。

米国の支援で日々軍事力を強化している日本を見詰める韓国人たちの心

情は穏やかではない。キム・ソンジュンさんは「従軍慰安婦問題に対す

る謝罪は拒否し、爆弾投下訓練を防衛のための訓練と言い訳する日本を

見ると本当に心配になってくる。そのような論理を展開するなら、防衛

のために北朝鮮を攻撃し、米軍と対立すれば防衛のために第2の真珠湾

攻撃もできるということになる」と述べた。

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同じく、ニューヨークタイムズ紙の報道を伝える23日の共同通信は微

妙に異なっている。以下、共同通信の記事です。

23日付の米紙ニューヨーク・タイムズは1面の特集記事で、自衛隊に

ついて、海上自衛隊によるインド洋での米艦船への給油活動など「数年

前なら考えられないと思われていた変革を実行に移した」と指摘、軍事

的制約が徐々に取り除かれていると報じた。その上で、こうした変化が

周辺国の不安を呼び起こしていると伝えた。

この他の「変化」の具体例としては(1)イラク南部サマワへの陸上自

衛隊派遣や航空自衛隊による同国内での空輸活動(2)防衛庁の「省」

昇格(3)攻撃能力を持つ米最新鋭ステルス戦闘機F22ラプターの調

達検討、などを挙げた。

その背景については、集団的自衛権行使容認派の小泉純一郎前首相や安

倍晋三首相の志向に加え、ブッシュ米政権が進めるテロとの戦いに貢献

しなければ「米国に見捨てられると彼らは恐れている」(米マサチュー

セッツ工科大のリチャード・サミュエルズ教授)との見方を紹介。

ということで、以下はいよいよ22日付ニューヨークタイムズ紙の問題

の記事です。

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■爆弾を次々に投下、日本は軍事的束縛から脱する■ NY Times

22 June 2007 by Norimitsu Onishi

グアム、アンダーソン空軍基地:先月、ここ合衆国空軍基地での年一度

の演習に参加するため、日本はグアムから150マイル以上北方の西太

平洋のターコイズカラーの海に浮かぶ小さな島、 Farallon de Medinilla

に500ポンドの本物の爆弾を投下する訓練を行った。

初めて本物の爆弾を投下することをパイロットはこう説明した、直撃の

シグナルに「シャック!」と叫んで、空中から飛ぶ稲妻を見届ける。

「緊張のレベルが違った」とコックピットから天火で焼いた滑走路に降

り立つナガタテツヤ大尉(35歳)は言った。

ほぼどこの軍隊にとっても演習は人の興味を引かない平凡なものだろう

が、戦争を放棄する憲法によっていまなお抑制され、防衛のためだけに

戦力を許される国、日本にとっては、大いに意義深い魅力的なものだっ

た。日本には本物の爆弾の試射場がひとつもないほど、地上に本物の爆

弾を落とすのは攻撃的すぎると長いこと考えられてきた。

日本から直接飛行して、遠い外国の土地に本物の爆弾をぶつける訓練を

するのは、受け入れがたい刺激とみなされているはずだ。これらの戦闘

機はことによると北朝鮮に向かって飛び、無事に本国に帰還する前に標

的を破壊できたとの暗黙のメッセージが明白だったからだ。

だが、ここミクロネシアからイラクまで、日本の自衛隊はできないリス

トからアイテムをどんどん帳消しにしてきている。特に2001年9月

11日の攻撃以降、変化の増大は実質的に第二次世界大戦以降の日本の

軍隊(=自衛隊)における最も重大な変質に等しい。北東アジアくまな

く、中枢をあわてさせると同時に、自衛隊は米軍にさらに接近して、い

つでも作戦を動かせる状態にもってきている。

わずか5年の間に、日本の軍隊は数年前にはとてもありそうもないと考

えられた変化を成し遂げた。インド洋で日本の駆逐艦と燃料補給船は、

アフガニスタンで戦うアメリカと他国の軍隊を助けている。イラクでは

日本の航空機が積荷と米軍部隊をクウェートからバグダッドに輸送して

いる。

日本は攻撃と防衛との境界線をぼやけさせる武器を取得している。グア

ム爆撃直線飛行のために日本は最新型の F2戦略爆撃機を配備した。始

まりはここの処女飛行、そして日本と米国により共同で開始した。 F2

戦略爆撃機は、これまでの戦闘機ではありそうもない、燃料補給なしに

北方の日本からグアムまでの1700マイルを飛行することができた。

プライドをあらわにして日本人が言ったように「直撃」である。

日本は最近、米国の法律で輸出が禁じられる、敵の争われる領空を貫通

してターゲットを破壊するといった攻撃能力を持つことでもっぱら知ら

れる、米最新鋭ステルス戦闘機 F22ラプターを購入したい欲望を強く

示した。

国内では、国際的にずっと低姿勢でいた防衛庁が今年、防衛省になった。

平和憲法の改正に導くことができる法案を強引に押しつけるのに、安部

晋三首相は幅広く人気のある前任者、小泉純一郎から受け継いだ議会の

過半数(優勢)を使った。

近隣国のそれより小規模とはいえ、隊員24万1000人の日本の自衛

隊はアジアで最も洗練された軍隊と考えられた。ここ5年、400億ド

ル(約4兆8000億円)の防衛費は世界ランキング5位内に入る。日

本はまたスパイ(偵察)衛星打ち上げと、沿岸監視を強くするのに、国

防予算でない予算から巻き上げている。

安部のような日本の政治家たちは北朝鮮からの脅威をすばやくとらえる

ことで軍の変質を正当化してきている。中国の出現、中国の年間軍事予

算は2桁の勢いで増えている、そして9月11日の攻撃、それらの脅威

をあおってさえいると評論家は述べる。同時に、戦時の性奴隷(従軍慰

安婦問題)を含め、帝国軍隊の戦犯を完封する(とりつくろう)ことで

日本の帝国軍隊の評判を元に戻すことに精力的になっている。

進行中の変化はすでに憲法と他の防衛規定を犯してきていると、日本の

評論家は話す。特にイラクでの派遣任務の詳細を政府はなんとか国民の

目から隠そうとやっきになっている。

「現実はすでにどんどん先に進んでしまっているので、彼らは追いつく

必要性と憲法の改正についていま話し合っている」と民主党の幹事長、

鳩山由紀夫は言った。

米マサチューセッツ工科大の日本専門家リチャード・サミュエルズ教授

は、かつて日本の政界の規格外だった安部や小泉のような修正主義者の

政治家らは、不安定な時代にうまく主流になることに成功したと語った。

「太平洋戦争中の日本の不品行に関する出訴期限法は期限切れ」だとの

見解、そして普通の国のように日本は軍隊を持つべきだとの見解を、彼

らは共有した。

前任者たちはアメリカが導く戦争にかかわりあうのを恐れた。だが新し

い指導者らは、もしその戦争に貢献しなければ米国によって日本が見捨

てられることになるのを恐れたとサミュエルズは語った。日本の軍の変

質について書かれた彼の本「日本の安全確保」は8月に出版される。

「そこでどうするか?」と彼は言った。「前に進み出る。とにかく、彼

らが長いこと待ち望んでいたことにそれは一致した。つまり優先(選択)

の収束点があったのだよ」

今日、アジアのミサイル防衛枠の開発と融資において日本はアメリカの

最大のパートナーだ。日本の陸軍と空軍の司令官などは日本の米軍基地

に入ってきてもいる、つまり二つの軍隊は、軍の専門用語で「共同利用

ができる」のだ。

「日米安全保障関係はできるかぎりひとつに単一化すべきだと考えます、

われわれの異なる役割は明白にされる必要があります」と小泉政権下の

防衛大臣、石破 茂は言った。

復興を手伝う名目の特別措置法に従って、イラクで初めて象徴的な陸軍

が比較的おだやかな展開をさせられた。救助活動に束縛する故にイラク

南部サマワの非戦闘地域にだ。とはいえ、昨年、自衛隊が去った後に日

本の輸送機3機が、クウェートからバグダッドまで定期的に米軍部隊と

積荷を輸送するのを開始した。

兵士が携行する武器は除いて、輸送機が武器を輸送しているのかどうか

日本の当局は教えるのを拒否する。国民の反対を心配する自衛隊当局者

らは危険と認められる反戦活動家やジャーナリストをスパイしていた。

人を罪に陥れる文書を日本共産党が入手した後、防衛省はこれが事実で

あることを認めた。

民主党の鳩山は、武装したアメリカ軍部隊を輸送することは日本の平和

憲法に背くものだと言った。

「人道的援助に従事する代わりに、自衛隊は基本的にアメリカ軍部隊に

従事している」と彼は言った。「アメリカ軍部隊と空自はひとつの軍隊

として働いている、グアムでも一体となって訓練しているように。」

議会で安部は自衛隊の活動が憲法を犯したというのを否定した。そして

日本の部隊は非戦闘地域に束縛されており、他のどの軍隊とも共同司令

のもとで軍事行動をとっていないと言う。

グアムでは2週間、アメリカと日本のパイロットたちが迎撃と空中戦を

シミュレートした。最終日、それぞれの側が交替で小さな島を爆弾でさ

んざん打ちのめした。

日本の飛行隊の司令官、アリマタツヤ連隊長は、こういう爆撃は敵を侵

略することで日本の陸軍や航空機を守ることができると言った。

「爆撃はいつも攻撃的な武器を意味しない」とアリマは言った。「防衛

にも使うことができる、別の機会を与える爆撃、主としてわれわれがト

レーニングを受けるのはこれである。」

アメリカの飛行隊の司令官、トッド・フィンガル中佐は、訓練は新たな

環境に彼らをさらすことによってパイロットが自信を培う助けになると

言った。

「スポーツにおけるロードゲーム、相手の本拠地での試合と同等と考え

る」とフィンガルは言った。

相手の本拠地でその力をはっきりと出すことで日本の軍隊はシャイでは

なくなっている。実質上の力にふさわしい、原子力潜水艦、長距離ミサ

イル、あるいは大型航空母艦が、日本にはない。

だが、ヘリコプターを輸送する2隻の航空母艦はもちろんのこと、空中

で燃料補給して長距離飛行をそれらにさせることになる4機のボーイン

グ767空軍タンカーを取得している。合衆国はもっと買えとせきたて

ると同時に変化を歓迎している。

「日本が存続している制限は実にユニークだ」と匿名ということで遠慮

なく話すことができたペンタゴン職員は述べた。「君が日本で見ている

変化は、ああいう制限の情況において非常にユニークな変化だよ。世界

中で続いている他のすべての情況において、あるいは防衛の領分で地域

や世界に貢献するための日本の潜在性という情況において、その変化は

かなり小さい。」

小さいか否か、過去を改める日本の風潮に直接比例して日本の不信が深

まっている地域に、彼らは懸念を引き起こしている。ステルス戦闘機 F

22ラプターを購入したい日本の欲望に対し、韓国は鋭く反応した。盧

武鉉大統領は、「北東アジアはいまだに武器競争にあって、われわれは

ただ傍観しているわけにはいかない。」と言った。

元防衛大臣の石波は、日米同盟によって地域の不信はやわらいでいると

言った。だが、日本の無力が、積極的に力を提示する能力を制限される

戦時の過去を甘受するのを彼は認めた。

石波は第二次世界大戦に言及して、「なぜわれわれがあの戦争を避ける

ことができなかったか、そして日本がアジアに対して何をしたかをすべ

ての人が理解しない限りは、われわれが力を提示する能力(権限)を得

られたとしても、おそらく危険であろう。」と言った。


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