▼マイケル・ムーアの発表の自由を抑圧する▼
By グレッグ・パラスト 07 May 2004

ディズニーの肥えたネコどもがマイケル・ムーアの新作「華氏911」
にとどめを刺すとき、連中はアーティストを検閲する以上のことをした
ことになる。ムーアの発表の自由を抑圧することは、ひたすら、アメリ
カ合衆国でビン・ラディン一族の数人が関係する証拠を含め、サウジア
ラビア人のテロへの資金供給に関する調査をブッシュ政権がつぶすとい
う、最も不愉快な事実を隠す、最新の巧みな措置なのだ。

なぜ私にわかるか、ムーアの新しいドキュメンタリー映画のベースにな
っているオリジナルの調査報告は、イギリスBBC TV とガーディアン紙
での仕事の調査チームと共に私が書き、映像にしたからだ。

2001年9月13日までヴァージニア州フォールズチャーチ郊外で、
「容疑のテロリスト組織」の表看板に使われていた、2名のビン・ラデ
ィン一族の調査からFBI 職員が手を引いていたことを示すドキュメント
を911のテロ攻撃から2ヶ月後の2001年11月11日にBBC TV
番組ニュースナイトが表に出した。その時には捜してる相手はいなくな
っていた。

私たちはさらに、核の闇市場を動かすパキスタンのカーン研究所の調査
をブッシュ政権が妨げていたと、アメリカのかなり上級の政府職員らが
BBC に情報を流したことを報告した。調査員らはなぜ妨害されたのか?
金を追跡するとサウジアラビア人のもとに至ったからだ。

FBI 職員らは、1996年パリでもたれた特別な会合から金の流れをた
どることを強要されたのを、翌日、ガーディアン紙のチームが伝えた。
申し立てによると、そのホテル・モンソーロイヤルでサウジの億万長者
どもがアルカイダの真剣な「教育」活動に資金を提供することに同意し
ていた。

このニュースはイギリスと世界中の夜のニュースで発表したのに合衆国
では報じられなかった。なぜか?

私たちのニュースチームは偶然にも幾つかの賞をもらうことになる。中
でもカリフォルニア州立大学ジャーナリズム養成所のプロジェクトセン
サーアワード(危険すぎて発禁処分に付される検閲賞)は憎かった。そ
れは、あっさりとアメリカの報道機関から締め出された大変重要な記事
と引き換えに得たご褒美(賞)なのだ。 それには傷つく。
私は新聞雑誌記者流の追放の身となって英国送りとな ったアメリカ人、
LA キッズなのだ。

アメリカはどうなってる?
なんだってFBI 職員が金を追跡できないのか?彼らがアラビアにおもむ
くことになろうともだ。私たちが政府機関内の口止めされた人たちから
繰り返し聞かされたように、サウジの金を追跡すると、パパ・ブッシュ
と彼の運の良い息子たち、それに権利保持者のもとに至るからだ。私た
ちはそのこともまたBBCで伝え、アメリカを除く世界中の夜のニュース
がトップで伝えた。

アメリカ合衆国でこのニュースを伝えるのをアメリカのメディア王たち
はなぜ恐れるのか?BBCとガーディアン紙の記事は、アメリカの政治力
学における石油汚染と、最も力のある政治家一族の血のマネー中毒とい
う個々のテーマを関連づかせる忌まわしい汚点のようなものだった。そ
の名前を口にする勇気がないというのがニュースだった。

合衆国のメディア国境パトロールの及ばない、私たちのBBC 調査報道を
マイケル・ムーアが引用しようと試みたのはこれが最初ではない。現に
ロンドンのニュース編集室には、たとえアメリカの電波に私たちの記事
を乗せられなくても、子供スーツを着たあの丸々太った男に口を滑らせ
ることができるというジョークがある。ムーアは、「エンターテイメン
ト」として、検閲を越えてニュースを持ち込むことができた。

硬いニュースをアメリカにもたらすムーアの地下鉄工作の例がこれだ。
前フロリダ選管責任者・現国務省のキャサリン・ハリスが2000年大
統領選より先に有権者名簿から何万という黒人市民を外したと私はガー
ディアン紙とBBC TV で伝えた。彼女の選挙管理事務所は、ほとんど全
く罪のない人の名ばかりで占められた、単なるおもわくの「重罪犯人」
リストを使った。選挙管理事務所が承知していた名簿は、ばかげたもの
だった。

アル・ゴアにまだ見込みがあるうちに、私はガーディアン紙でその記事
に関する一回分を刷った。ワシントンポスト紙は私の記事を7ヶ月後に
掲載した。その時には、おそらくブッシュ・ホワイトハウスはクスクス
笑いを漏らしながら記事を読んだことだろう。

世界中でその一面記事が躍ったにもかかわらず、黒人有権者の粛正は合
衆国では一度も陽の目を見ることはなかった。それは、彼の著書「バカ
でマヌケなアメリカ白人」の冒頭にこれをもってきたムーアのためのニ
ュースではなかったのだ。

それではミッキーマウスの大物さん、野球帽の男(ムーア)を検閲しな
さいな。さっさと映画スクリーンを暗くして、私たちの記事をボツにし
ている無分別を広めることだ。代わりに、「任務完了」やったぞ!と親
指をあげてみせる、ニセの空軍飛行士を見せるんだね。わが国の政治家
連中が今回は電子投票のからくりで次期選挙の盗みを準備する間、殺人
者にクレジットカードを与えた王族にとり、石油の価格を引き上げるこ
となどわけもない。

さあ自己を正当化するなよ。合衆国のテレビニュースは今すっかりFox
化していて、ほとんど例外なく新聞はいまだに我らが最高司令官の言い
逃れ表明に卑屈に追従する。

だが、例のニュースがおかしなドキュメンタリーの中に隠されていると
き、ムーアの映画の配給をやめさせるのは、まるで好ましくないニュー
ス狩りと、不必要なニュースの破壊任務のようでうさんくさく見える。
メディアの大物どもがそこで止まっているとでも?グアンタナモ米軍基
地の新しいハリウッドウイングに拘束される、マイケル・ムーアの特大
サイズのオレンジの囚人スーツ(アフガン戦争で拘束されたグアンタナ
モの捕虜が着ているジャンプスーツ)姿はどうなの?

http://www.workingforchange.com/article.cfm?itemid=16912
グレッグ・パラスト:「金で買えるアメリカ民主主義」角川書店