■ CNNで見ないサウスカロライナ■by グレッグ・パラスト

サウスカロライナの予備選のカラー、黒人と白人なのか?

27 January 2008

2000年のサウスカロライナ:暴動鎮圧用ギアでがっちり固めた警官

600人が、ひどく怒ったチャールストンの造船所の労働者数十人と対

戦する。暗闇には、ロックとクラブと同胞のいかすしゃれもの。警官ら

は抗議者からクソどもをぶちのめす。もちろん、騒ぎの共謀罪で逮捕さ

れる組合の男たちだ。そしてもちろん、手錠をはめられた5人の男のう

ち4人は黒人だ。検察官:知事に立候補する福音を説きたてるこちこち

のプロテスタントの司法長官、白人。結末:州は白人 vs.黒人のまっぷた

つに引き裂かれる。

2008年のサウスカロライナ:土曜日、パルメットステイツ(サウス

カロライナ州のあだ名)は私たちの大統領を正しく選ぶかもしれない、

すなわち、少なくとも民主党員の大統領に関する考えでは。 CNNとお偉

方の政治論理によれば、かなりの住民数の黒人がプライド(オバマ)に

投票するか?それとも経験(ヒラリー)に投票するか?それが唯一の問

題だ。換言すれば、選挙はおちぶれて、つまらぬ人種問題になる。

2000年に騒ぎを起こしたことで責任を負わされた港湾労働者の顛末

は、黒人には彼ら自身の人種に投票する非常にりっぱな理由があること

を示唆する。港湾労働者が南部の正義に直面したと同時に、中心地を南

部連合国旗がなびく黒人差別がなかなかすたれないこの土地で、これは

歴史に残る幸運にいたるほどのチャンスだ。

だが、サウスカロライナの顛末には、黒人と白人以上のことがあるかも

しれない。

警官と黒人との2000年の戦いのテープを巻き戻そう。それは、ちょ

うど寄港していたコンテナ船から積み荷を降ろすため、国際港湾労働者

の地元組合1422の組合員たちが「その日の仕事をもらおうと整列し

た」1月19日の早朝のことだった。その仕事は高い賃金のきつい仕事

だった。経験豊富な組合員は年俸6万ドル以上を稼ぐことができた。

この南部連合国に最後まで抵抗する黒人男性が、きちんとした賃金を得

られる数少ない場所のひとつだった。すなわちどんな男もってことだ。

その日、積荷の降ろしをさばく港湾労働者の請負人が、組合の最低賃金

の三分の一で喜んで働く、経験もスキルもない、組合員証もない、乞食

を港で雇うことにした。

その晩、黒人だか白人だかなんであれ、組合労働者は生存と生計のため

に闘った。

2000年サウスカロライナでの騒動の核心は、黒人対白人ほどではな

かったが、組合対非組合だった。それは「払いがよい日当を捜す者」対、

それを「払わない方法を捜す者」との戦いだった。昔も今も問題は階級

闘争だ。動かす人や振る人と、動かされる人や振られる人との争いなの

だ。

チャールストンの港湾労働者は、アメリカの将来、ちょうど今のアメリ

カについて読むことができた。文字通り、ハイウエイの真下にあるカロ

ライナ織物工場で働いた彼らの従兄弟や兄弟がその工場がぼうっと見え

るメキシコ行きの列車に乗せられたとき、彼らの仕事に別れのキスをす

るのを見ることができた。

ビル・クリントン大統領は NAFTA(北大西洋自由貿易地域)に署名をし、

中国を貿易の「最恵国」にして、浮気なにやにや笑いを浮かべて「変革」

のためと私たちを激励した。

だが、「変革」は見たところフレンドリーな雰囲気ではなかった。200

0年、ギルフォード工場はカロライナ・グリーンズボロの織物製造工場

を閉鎖して、メキシコのタンピコでそれを再開した。400人の職が南

に行った。サウスカロライナ・ロックヒルのスプリング工場が閉鎖し、

480人の労働者を見捨てた。フィールドクレスト・キャノンはサウス

カロライナ・ヨークから撤退し、グレートアメリカ工場はあっさり破産

した。

当時のサウスカロライナは、トマス・フリードマンの不思議な自由市場

空想物語から無視されたグローバリゼーションの顛末なのだ。

今週、米国のメディアが黒人教会から、かわいく見せる写真作戦を放送

して候補者間の忘れられてよい口げんかを繰り返す一方で、サウスカロ

ライナの現実の問題がありがたいことに今日発売された本、 Suzan Erem

と E.Paul Durrenbergerによる「On the Global Waterfront」の中にき

ちんと配置される。

EremとDurrenbergerは、典型的な経済レジスタンスの自暴自棄の行為

としてチャールストンの5人の港湾労働者の事件を描く。

トマス・フリードマンのベストセラー「フラット化する世界」は彼の大

物との高揚するインドでのゴルフゲームで始まる。 Eremと

Durrenbergerがゴルフシューズをはくことは決してない。2人の本は

グローバリゼーションの服をはぎ取り、よごれた下着のパンツいっちょ

にする。

フリードマンは百万長者に会いにゴルフコースに行く旅行の途上でバン

ガロール(インド南部)までビジネスクラスで来たと強調したが、「グロ

ーバルウオーターフロント」の作者らは三等船室で行く。そして2人が

書く人々はまったくどこにも行かない。その人たちは、織物工場での職

を失ったせいで健康保険の費用を負担する経済力がないヴァージニアの

客に売るため、グアテマラから来たウォールマートの Tシャツのコンテナ

を動かす荷役人足だ。

そして本は労働組合について語る。(子どもたちの耳をふさげ!)

サウスカロライナは組合の土地柄である。そして組合がぶちこまれる土

地柄だ。でも今日、誰も労働組合を屁とも思わないだろ?わずか7%、

14人にひとりの米国の労働者がこれに属するだけだ。エルヴィスがジ

ョン・ケネディを殺したと信じるアメリカ人の数より少ない。

「港湾労働者」で心に浮かぶのは、グッドガイが悪者の組合のボスをた

たきのめす、マーロン・ブランドの波止場だ。組合のボスは凶悪犯で群

れをなして弱い者いじめする、港湾労働者の敵だった。その映画の監督

スタンリー・クレイマーは、その時代の反組合、アカ狩りのジョー・マ

ッカーシー精神をパーフェクトに拾い上げた。今日、それはたぶん下火

になった。

私たちのメディアにおける選ばれた労働者のリーダーたちは常に「組合

のボス」である。だが本物のボスである CEOたち、工場を閉鎖してそれ

を中国に追っ払う連中は、決して「ボス」ではなくて「企業家」だ。

それどころか、名士あつかいされる組合つぶしの王様、故サム・ウォル

トンは、彼が生前にウォルマートの役員会にすえた「マイリトルレディ」

と呼ぶ女性、ヒラリー・クリントンが、大統領職の最も先頭を行く人だ

と知って、今日さぞかし鼻が高いことだろう。最低保証低価格でアメリ

カを買っているサウジや中国を歓迎すると国家のドアに貼り出した、彼

女はおそらくアメリカの「歓迎者」になれる。

それで2000年に重罪の暴動を起こした罪で告発された5人の組合員

はどうなったか?グローバリゼーションの真のヒーローたち、スペイン

の港湾労働者らがサウスカロライナの非組合員(スト破り)の船荷を降

ろすのを拒否した後、国際的な組合のキャンペーンから、彼らは自由と

組合の地位を取り戻した。

今から10年も前に刑務所に入れられた5人の船荷扱い人の顛末になぜ

こうも惹きつけられたかを EremとDurrenbergerは自問自答する。私た

ちすべてをウォルマートの50億ドルに追いやるおそれがあるグローバ

ル化への狂気の行進の中で、勇気と熱意と団結とが、いかに勝利に導け

るかをチャールストンの5人が示すせいだろう。

港湾労働者の蜂起について、ヴィデオを見よ、そして彼らの本からもっ

と知ることだ。

  http://www.ontheglobalwaterfront.org/

▲グレッグ・パラストはニューヨークタイムズ紙のベストセラー「金で

買えるアメリカ民主主義」の著者です。 YouTube チャンネルから英BBC

のパラストの調査報道を見よ。

企業の不正や恐喝行為の調査からパラストがそのスキルをジャーナリズ

ムに転じたとき、彼はただちに英国で「この時代の最も重要な調査報道

員」( Tribune Magazine)と見なされた。英国で彼の最初の報道はBBC

放送とガーディアン紙に掲載された。

また、選挙不正、対テロ戦争、グローバリゼーションなどの調査報道で、

米国でも最も気骨のある重要なジャーナリストの1人と見なされる。だ

が、米国のメディアからは煙たがられ、はじき出される。2000年の

米大統領選挙でブッシュ陣営がフロリダの黒人票を組織的に無効化した

手口を暴いて以来、2004年、2008年と選挙にまつわる不正を次々

と暴いてきた。

ベストセラーとなった「金で買えるアメリカ民主主義」(2002年)は

日本でも邦訳された(現在完売状態でオークションでのみ入手可能)。新

著は「 Armed Madhouse: From Baghdad to New Orleans - Sordid

Secrets & Strange Tales of a White House Gone Wild(武装したマ

ッドハウス:バグダッドからニューオリンズー狂乱するホワイトハウス

の汚い秘密と奇談)」


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きままなブログを始めました。よりのんきでよりビジュアルな内容に

なっています。こちらもごひいきに。

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