■ボクは暗殺者と恋に落ちた■インディペンデント紙 06 March 2008

二人は列車のなかで出会い恋をした。そうしてジェイソン・ P・ハウは、

ガールフレンドのマリリンがコロンビアの情け容赦のない内戦で右翼の

「死の部隊」の暗殺者として秘密の二重生活を送っていることに気づい

た。二人の話がメジャーのハリウッド映画になることで、彼は運の尽き

た特別なロマンスを生き返らせる。

君のガールフレンドが秘密を共有したがるとき、新たな関係のたびに問

題が生じる。普通は、他に何人と寝たかとか、セックスに関係すること

だ。常に秘密は二人の関係の共通基盤を変え、正直が結果に付随する。

だが、もし君のガールフレンドに多くの異性と関係を持つこと以上に謎

めいた陰険な秘密があるとしたらどうなるか?

戦争で病弊したコロンビアの麻薬生産地帯の中心にある、汗だくの安ホ

テルの部屋のベッドの縁に裸で座ったボクは、タバコに火をつけて、メ

イクラヴしたばかりの女の子が性交後の無上の喜びが驚きで吹き飛ぶほ

ど陰鬱な秘密をばらすのを聞いた。

報道カメラマンになる方法を学ぶため、ボクは数ヶ月間コロンビアにい

た。理論上の大学のコースに出席するとか、なれあいのスタジオで肖像

写真をとるとかでなく、自分を極限に放り投げることで。

この国の歴史で平和な時代はまれだった。過去40年かそこら、 FARC

(コロンビア革命軍)で知られるマルクス主義に影響された反乱グルー

プが政府と戦争をやっていた。そして誘拐や強奪、違法なコカイン取引

に税を課すことで増大する軍に資金を供給した。裕福な地主や麻薬王を

FARCが誘拐することへの対応として「自警団」として知られる右翼の

死の部隊が現れた。 AUC と呼ばれる組織の保護下に、これら非公式な

軍隊または民兵組織(地元ではパラスで知られる)は、 FARCの反逆者

との汚い戦争を後押しする政府や軍の高官たちによって密かに支援され

る。

この三角関係の争いはコロンビア国民から重い代償を強要してきたし、

強要し続ける。過去40年間に20万人を超える国民が命を失い、暴力

または脅迫によって300万人以上が自分の家をもぎ取られてきた。

FARCの反逆者を殺すための政府軍によるエクアドルへの突然の侵入に

続いて、今週、争いはウゴ・チャベスのベネズエラと共にエクアドルと

コロンビア両国を巻き込む外交危機の一点に集中した。

この残忍な行為すべてが単なる麻薬戦争として退けられるのは、コロン

ビア国民にはひどい不公平だ。そのルーツは、土地と産業とビジネスの

90%以上を所有するほんの少数の裕福な上流階級のポケットを満たす

貧困生活を送る巨大な労働者階級という、国に浸透する経済的そして社

会的不均衡に埋もれて世に忘れられる。それ故に、ボクのゴールはラテ

ンアメリカの40年の争いにかかわったグループの各メンバーに会って

写真を撮ること、そしてこの争いを説明しようと試みることだった。

ボクは強い FARCの存在がある国の一部に行くことで始めた、そして長

い忍耐の後に、彼らのキャンプのひとつに住み込ませてもらいたいと反

逆者たちを説得した。彼らの毎日の暮らしぶりを記録して、政府軍との

銃撃戦で彼らといっしょにいたりした後、彼らの断じて許せない敵であ

るパラスを捜して去るときだった。

ボクはエクアドルとの国境にあるコロンビア南部のプチュマヨに向かっ

た。そこは麻薬売買の中心のひとつで、 FARCとパラスとの間の進行中

の小競り合いの舞台だ。首都プエルトアシスまで行くのに田舎のバスの

旅で2−3日かかった。

途中、ボクは同乗者と話し始めた。マリリンという美しいコロンビア人

の女の子で、彼女は大都市のひとつで衣類を買う短い旅から戻るところ

だとボクに話した。ボクの目的を説明するとマリリンは、民兵組織にも

軍人にも友達がいるので助けられると言った。彼女の家族の家に滞在す

るようボクを誘った。彼女の家族は町外れに沿道の店とバーを持ってい

た。ボクは彼女にひきつけられたが、こんなふうに親しくなるとは、そ

して二人の未来がこんなふうに進展するとは、思っても見なかった。

ボクはそれから数週間彼女の家族の家で過ごし、コカ畑を撮影するため

と民兵組織に会うため田舎に刺激的な体験をしにでかけた。マリリンと

ボクは一緒にハンモックに横たわり長い午後を過ごした。ときたま手を

つないでキスをしたがその先には進まなかった。結局、時間と資金が尽

きてボクはイギリスに帰らなければならなかった。さよならを言ったと

き、戻るために最善を尽くすとボクが約束すると、ボクはもう「家族の

一員」だとマリリンは言った。

6カ月後ボクは戻った。この争いを全面的に探検し、できる限り知識を

身につけて、たぶん本を出版すると固く決心して。マリリンと彼女の家

族といっしょにしばらく過ごすつもりでボクはプエルトアシスにとって

返した。だが、驚きを受けること必至だった。マリリンが AUCの仲間に

加わってエル・ティグレの近くの村の戦闘で精力的な働きをしたと言っ

たのだ。他の25人の民兵組織の戦闘員と少なくとも15人の反逆者に

加え、彼女の側で戦ってきた別の女の友達が殺された。戦闘がやんだと

き、村の全人口が逃げた。マリリンの兄はいまコカ畑で働いていて、枕

の下に隠して眠るピストルを持ち歩く。ボクはそれがショックだとは感

じなかった。結局、これはあらゆるタイプの暴力によって引き裂かれた

国ってことだ。どちらの側につくか命じるのは、運、不運だけなのだ。

何ヶ月かが過ぎた。ボクの計画を発展させるため国中を旅した。結果は

国際的なコンペでの受賞を含め、積極的な注目を受けた。そしてそれが

戦争を記録するためイラクに行くことを思いつかせた。そして実際ボク

はイラクに行った。でも、毎日のクルマ爆弾とロケット攻撃と共にバグ

ダッドで6カ月暮らした後、ボクはコロンビアに戻ることを渇望してい

た。

初めての出会いから1年、使い古したタクシーでマリリンの家に帰り着

いた。ボクは座って「使い走り」から戻る彼女を待ちながら彼女の父親

と冷えたビールを飲んだ。そうしてボクは彼女と4歳になる娘ナタリー

の手を取って家の裏手の木陰のある川まで歩いた。雰囲気に変化があっ

たのを感じたが、ボクが感じ取ったことを正確に指摘することはできな

かった。

二人の関係が違ってくるようだったら、家族の家にいるより町のホテル

に泊まろうかと彼女に尋ねると、一緒にいやすくなるかもしれないから

とこれに同意したので、ボクは自分で部屋を見つけた。その夜、彼女が

ディナーに来た。種をまいた下地の年が今にもうまくいこうとしている

とボクは考え始めた。マリリンはその夜泊まった。

マリリンの故郷プエルトアシスは赤道から1度か2度上にある。せまい

ホテルの部屋は息が詰まりそうで、バルコニーの窓からは露天商のシャ

ウトと早朝の往来の喧噪が流れ込む。マリリンはボクに言わなきゃなら

ないことがあると言った。

そうして、ボクにスリルをもたらすと同時に困惑させもする告白で彼女

はボクを打ちのめす。ボクがイラクに行っていた何ヶ月かに AUC内での

彼女の役割が変わったのだと彼女は説明した。彼女は都会の民兵に加わ

り、暗殺者になっていた。彼女の仕事はいま情報屋(密告者)と裏切り

者を消すことだった。これまでのところ、エリア内で少なくとも10人

殺したと彼女は言った。ボクはタバコに火をつけて深く吸い込んだ。ボ

クがはき出す煙越しにマリリンはボクを見た、そしていま言ったことに

対してボクがどう反応するか見ようと待っていた。

奇妙にも、彼女の告白には人が期待するほどのインパクトはなかった。

ボクは嫌悪にひるまなかった。暴力に包囲されるコロンビアとイラクで

過ごした何ヶ月かがボクの見方を変えていた。死や苦しみに対して免疫

になっているとは思わないが、確かに、そう簡単にはショックは受けな

くなっていた。犠牲者と勝者との違い、反逆者と難民との違いは、たい

てい単なる見方の問題のように感じた。

彼らが信じるとボクが推測する大義のために命を賭けようとしている「実

行家」や反逆者や兵士の一団をボクは常に愉しんでいた。ボゴタの高所

得者層向けの高級クラブに精通している、身なりのきちんとした裕福な

美人コンテストのクイーンにはボクは冷たくされた。後でそうではない

と感じることになるとはいえ、マリリンの言葉に対するボクの当初の反

応は、賛成に近似していたかもしれない承認だった。交戦地帯に愛人が

行くとき、ボクは彼女のことをすごく「クール」だと感じたと思う。

初めの頃、ホテルの部屋にいつもピストルで武装しての彼女の訪問は大

いにボクを当惑させたわけじゃなかった。初めはシュールなもやだった

マリリンがしていることのリアルな含みが、だんだんとわかるようにな

っていたとは思わない。ボクは若くて、すごい冒険を生き延びていた。

この争いに真にそして完全にかかわり、没頭する人に近づいたというの

が最も的を得ているのは確かだった。最近一緒に寝るようになったばか

りの女性は雇われた殺し屋で、ベッド脇のテーブルには銃があった。

ベルトからピストルをはずし、ジーンズを脱いでこっそりベッドに入る

彼女を見て、彼女が手を下したと告白した殺人、頭を至近距離から銃弾

によってぶち抜かれた地元の死体保管所で見た死体と、ボクに抱かれる

女性とをどういうわけかボクはまったく同一視することができなかった。

陶酔させるトロピカルな気候、地元のラム酒、 Aグレードのコカイン、

そして腕に抱かれる性的魅力のある22歳の組み合わせでハイになり、

幻想と現実の境がぼやけるようになった。ボクはクエンティン・タラン

ティーノの映画に生きてるように感じた。

前夜、彼女が請け負った殺しで、女性の首を切り手足をもぎとるのを助

けてもらえないかと友人を説得したんだと、ある朝マリリンが言った。

これは密告者を殺すんではなく、どちらかといえば、彼女の友達が自分

のボーイフレンドの別のガールフレンドを殺すのに彼女を雇ったのだ。

どうなったかを彼女はそれはリアルに説明した、ついにくたばった迫真

性をほとんど感情なしにだ。彼女に対するボクの気持ちが変わるのがわ

かった。ロマンチックな輝きは急速に失せ始めた。彼女はもはや正当化

される内戦の一部には思えなかった。彼女は確かに金と引き替えに命を

奪うフリーランスの殺し屋にすぎなくなっていた。

それでもまだ彼女には性的魅力があって一緒にいたかったのはわかって

いたが、別のなにかがボクの頭の中で飛び回っていた。前はよく他の人

に対して生じていたはずの考えがやっとだんだんと動き出してきた。

この1年、彼女が娘と一緒に川で泳いだり、寝つかせるのに本を読んで

やるのをボクは写真に撮ってきた。いまボクが記録していたイメージは、

ほぼ正反対の側にある彼女の人生一点に集中した。本能的自衛をおもい

ついたボクは、彼女を「対象」に余儀なく至らせた。

彼女の人生と彼女がのめり込むようになったことについてインタヴュー

させる用意ができてるかどうかボクはマリリンに尋ねた。頭からすっぽ

りウールのバラクラヴァ帽をかぶりピストルを振りかざして、ボクらの

会話をヴィデオに撮るのを彼女は許可した。

まずどうやって准軍事組織(民兵組織)とかかわり合うようになったの

か、なぜ仲間に加わることにしたのか、尋ねることでボクは始めた。最

初の犠牲者を殺すのをどう説得されたか、どう感じたか。彼女はためら

いがちに始めたが、顛末が見えてくるに従って次第に大胆さ(度胸)が

増した。

「初めて人を殺したとき、私は恐れていた、おびえていた。最初の人は、

私にできるかどうか確かめるため殺した。でも殺す負い目はある。殺さ

なければ彼らに殺される。最初の殺しがきつかったのは、私が殺した人

が「殺さないでくれ。私には子どもがいる。」と言って泣いてひざまずい

て命乞いをしたからだった。面倒で悲しかったのはそのせいだった。で

もその人を殺さなければ、 AUC(自警軍団)の者に殺される。人殺しの

後はずっと震えたままでいる。食べられないし、誰とも話せない。私は

自宅にいたが、殺さないでくれと命乞いをするあの人のことがずっと忘

れられなかった。私は引きこもった、でも時間と共にすべてを忘れた。

上官はいつも「大丈夫、最初だけだ。二人目を殺すときはオーケーだ。

」と言う。でもずっと震えはある。

「二度目はちょっとだけ楽、でも彼らが言うように、一人殺せれば何人

でも殺せる。」

「恐怖を放免しなければならない。いまも殺しているけど私の身になに

も降りかからない。私は正常だと思う。以前は私には殺す義務があった、

私は殺すために送られた。でもひとたび組織を抜けると、義務はなかっ

た。いまはお金のために仕事をするだけ。」

「私の友人たちのひとりを殺した、なぜって彼らは私を殺すつもりだっ

たからよ。ゲリラと関係を結んで反対側のために働いたので気をつける

よう私に伝えた。つまり、私の命か彼らの命かだった。それで、私は殺

しを行う許可を求め、 AUCが許可した。AUCが調査して私の友人たちが

ゲリラのために働いたのは正しかったとわかった、それで私は彼らを殺

した。私にはとてもつらいことだった。私は埋葬に出て、ヴィジル(ロ

ウソクをともして祈る通夜)をした。彼のお母さんが泣いているのを見

るのはつらかった。息子を死なせたことで私に罪があるのは承知してる。

でもそれが人生、そして AUCの学校で、まずは自分、他人は二の次、と

教えられた。私は全部で23人殺した。」

とても親しくなったこの聡明な若い女性が自分の人生を語るのを聞いた

とき、途方もない悲しみが押し寄せた。マリリンは情況(環境)の極端

な犠牲者だった。退屈と興奮の追求が、彼女を洗脳して彼女の人として

の人生になんの尊厳も残さなかった准軍事組織に彼女を出会わせた(接

触させた)。彼女自身でもなければ、彼女の家族でもなく。

だが、彼女の言い訳、またはその欠如がボクをいらだたせ、悪いのはす

べて国だと彼女が述べたとボクは彼女に言った。アウトサイダーとして

のボクの免責特権と究極の率直な立場から、怒っていらいらして判断す

るだけで、彼女に一体感を持つことは不可能なのがわかった。

彼女を「対象」に至らせるのはうまくいかなかった。ボクは、超然とし

て客観的でいられるとか自分の感情をわきへ押しやれるとは思えなかっ

た。その時点をはるかに超えて遠くまできてしまっていた。ボクが経験

してきていたことの強烈さを楽しんだレベルにある一方で、あまりにも

深みにはまるせいで、代償は高くついた。過去数ヶ月に見たり聞いたり

したことは途方もないことなのをボクは実感した。その途方もない事態

から、ボクのコロンビアに対する情熱はふくらんできたし、このひどく

誤解された国で起こっていることについてのボクの理解はさらに広くな

っていた。でも、それによって何かをふいにしたし、傷つけられたとも

感じた。

ボクはイラクに戻ったあと、アフガニスタンでの戦争を取材するため移

動した。1年の課程におよび、マリリンとボクは定期的に Eメールを交換

した。主としてボクがどこにいるのかを尋ねるのと彼女のことを忘れな

いでと求めるものだった。インタヴューの後にボクが彼女に言ったこと

には大きなインパクトがあったと彼女は告げた。そのようなことは誰も

彼女に話さなかった、現に誰も彼女が自分の人生でしていることに異議

を唱えなかった。新しいことに着手したかったが、 AUCがメンバーをや

めさせないこと、少なくとも生きていられないことを、よくわかってい

たと彼女は言った。

長期の音信不通の後に、彼女の身になにかあったとボクは恐れ始めた。

真実を知るためにボクはプエルトアシスに戻ることにした。

玄関でボクを見つけるなり彼女の家族は正常な驚きを示した。両目に涙

があふれる父親がマリリンは死んだと伝えたとき、ボクの恐れのすべて

が確かめられた。家から誘拐されて石たたきの刑に処されて死んだとき、

彼女は25歳と2カ月だった。誘拐者らは彼女の頭を石で砕いてから銃

で撃った。

翌朝、彼女の6歳になった娘ナタリーは孤児として目覚めた。彼女の両

親は3番目の娘と、歩くこと話すこと自分で食べることさえできなくな

って嘆きのあまりつぶれた彼女の兄を失っていた。暗殺者としての時期

に彼女の手にかかって死んだ多くのうちのひとりのために復讐しようと

する地元の誰かによってマリリンは殺されたのではなかった。自分の組

織によって彼女は、コロンビア人が密告者のことを呼ぶ、サポ(不快な

やつ)を表象する石たたきの刑に処されて殺されたのだ。

FARCからプチュマヨのコカ畑の支配をもぎ取るための戦争で准軍事組

織と軍とが並んで戦っていたとき、まったく都合がよいことに、彼女の

最近のボーイフレンドは政府軍兵士だった。だがその関係がまずくなっ

て、彼女の寝室の会話が続いたとき、彼女を殺させるのに十分だった。

ボクもまた寝室の会話を共有していたので、マリリンの死はボクにとっ

て特別意味深だった。ボクたちは友達で、そのあと恋人だった。二人と

もが人をひきつける致命的な力にはまり込んでいた、コロンビアのきた

ない卑劣な戦争を除いては、二人の人生に決して共通点は多くなかった。

話すのはなかなか難しいことなのに気づいた。ボクがなんと思っていた

か、実は自信がなかった。

他の人間の命をわざと奪っていた若い女性、たたきのめされる責任があ

った同じ種類のきたない世の中の正義を受けた若い女性に、ボクは残念

だと感じていたのか?彼女の人生を変えることで交わされた会話やボク

に感謝して彼女のいる混乱からどうしたら抜け出せるかについてもっと

語る必要があったとある受け取った Eメールを、ボクは心の中で思い返し

ていたか?彼女を助けるためにもっと力を尽くしたいと願っていたか?

彼女が暗殺者とは見当もつかなかった頃に彼女にキスするのはどんなだ

ったか忘れないようにしていたか?彼女の両親や、いつか自分の母親が

なぜ殺されたかの説明となる事実を望むことになる美しい娘に、残念だ

と感じていたか?石で頭を破壊された後、彼女がどんなだったか想像し

ようとしていたか、それとも恐らく想像しないようにしていたか?

実は、このどれについてもボクは考え、感じ、想像してきていた。とは

いえ同時に、彼女の家族が感じる苦しみがなんであれ、彼女は他の多く

の人々に幾度となくこの同じ苦しみを生じさせていたのを知っていた。

翌朝早くに、正装して花を持ったマリリンの母親とナタリーと一緒にマ

リリンの死体が埋葬されているところを見に出かけた。彼女の棺はコン

クリートの箱の中だった、そしてまたこの争いによって殺されていた姉

の墓の上で永眠する。埋葬してくれとせがむ死体の数がずいぶんと前に

利用可能なスペースを上回っていた。並んで埋葬するうんと小さな墓は、

生後3カ月で生まれつきの原因となるもので死んだ彼女のもうひとりの

姉の遺骨だ。マリリンの母親がどんな気持ちで孫娘の手を握り、自分の

3人の娘すべての墓に目をやっているか、ボクには想像できなかった。

准軍事組織を撮影するためプチュマヨに深く進むボクの計画は、もはや

それほどいい考えには思えなかった。マリリンは常に適切な方向にボク

を向けてきたし、ボクが強引に進むとき、いい考えではないと警告した。

彼女の生と死についてもっと知りたかったが、逆の人々に間違った質問

をして殺されたくはなかった。

モーターバイクをふかすのとトラックの警笛を鳴らす音を背に夕食を食

べた夜、別の地元の人間がマリリンの身の上に起こったことについてさ

らにボクに語った。スープを飲む間にその女性はマリリンがボクに認め

たよりずっと長く AUCに掛かりあっていたこと、そして彼女がエル・テ

ィグレの村人26人の大量虐殺に掛かりあったと町では一般に考えられ

ているのをボクに語った。犠牲者の多くが川に投げ込まれる前に首を切

られ腹を裂かれていた。ボクは次に利用できる出発便の座席を予約した。

眼下に消えるプエルトアシスにじっと目を凝らしたとき、飛行機は雲で

覆われた。ボクの iPod では誰かが「この都市はボクらをクレイジーに

させた、出ていかなくちゃ」と歌っていた。

ほぼ9000マイル離れたアフガニスタンのカブールにある暗くて凍る

ようなホテルの部屋で座ってこれを打ち込んでいるとき、ボクはまた別

の決して終わらない争いを取材する。死に至る理由が異なるものかどう

かにボクは好奇心を持つ。彼女は本当に情報屋だったせいで殺されたの

か?ことによると Eメールで知らせてきたように、AUCを抜けて新しい

人生を始めたかったせいでマリリンは殺されたのではないか?

これはボクが信じたいと思うこと。彼女には本質の変化があったとボク

は信じたい。彼女は冷血ではなかった、彼女がそうだと思われている冷

酷で凶悪な殺し屋ではなかったと信じたい。でも精いっぱいだまされよ

うと、無理しているのがボク?

▲これはもともと「アリーナ」マガジンに発表された記事です。ジェイ

ソン・ P・ハウは今年後半に出版の「コロンビア:Between the Lines」

の作者。注文は下記よりーー。

contact books@conflictpics.com


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