■ビルマ、「テロ戦争」の犠牲者■ UK ガーディアン紙 03 June 2008

by ジョン・ピルジャー

昨日、ボクはラングーンのアウン・サン・スーチーの家に電話した。

ボクはインヤ湖を見下ろす彼女の家のドアまでの小路を想像した。ふぞ

ろいのヤシを貫いて仕掛け線が見える。ばかげた軍服を身につけた男ど

もによって絶たれた1990年の民主的実施で地滑り的大勝で選ばれた

党の女性の刑務所だというのを、これが思い起こさせる。彼女の電話が

鳴り続ける。つながっているのかどうかおぼつかなく思う。かつてボク

の「元気ですか?」に応えて、彼女はピアノを調律する必要があると笑

いちらした。彼女はまた、起きていて休息してる状態であることや、彼

女の心臓の鼓動を聞いてる状態であることも話した。

いま彼女の黙殺は完ぺきだ。今週、ビルマの暫定軍事政権が彼女の自宅

軟禁を更新して、13年目に着手する。ボクが知る限り、1月以降、医

師が彼女を訪ねるのを許されてきていないし、彼女の家はサイクロンで

ひどくダメージを受けていた。しかもなお、バン・キムン国連事務総長

が最近のへいこらするビルマ旅行で彼女の名前を口に出す気になれなか

った。「国際社会」を代表すると主張する人たちにとって、あたかも彼女

と勇敢な彼女の支持者たちの運命が困りものになっているかのようだ。

火曜日、単に彼女の党、国民民主連盟( NLD)のバナーを広げて見せた

にすぎないことで、支持者たちは拷問といっそう悪いことを招き寄せた。

なぜそうなのか?

ビルマを助ける方法をよくわかっている政府の連中や、その関連機関の

発言はどこだ?かつて重くのしかかる不幸のもとから抑圧をゆるめた頼

もしい実力者、社会を「利益」に役立つかどうかの点からみるのでなし

に、その犠牲者としてみる、正真正銘の有能な調停者はどこだ?彼らの

国際的な社会貢献のまったくの道義的精神力によって国連の事務次官補

の任に耐えた、デニス・ハリデイズとハンス・フォン・スポネックスは

どこだ?

答は簡単だ。彼らは「テロ戦争」と呼ばれるウイルスによってほとんど

絶たれてしまった。かつて善意の心と正しい認知力とりっぱな信念の男

女が議会で任務を果たし、世界が他者の人権擁護を具体化していたとこ

ろに、いま臆病がある。ウエストミンスターの議会を考えてもみてくれ、

イラク侵略をとがめ、その犠牲者たちのために遠慮なく話すのは言うま

でもなく、違法なイラク侵略に議会自体をまるめこんで査問会議を開く

こともできない。昨年、著名なイギリスの医師100人が、当時の国際

開発使節ヒラリー・ベンに、イラクの子どもたちの病院に緊急の医療援

助を送るよう嘆願した。「95ペンスの酸素マスクがなくて赤ちゃんが死

んでいる」と彼らは書いた。使節は嘆願をにべもなく拒絶した。

ビルマの軍政は遅れることなく受け入れるべきだと、いま英政府が主張

する援助の類に、子どもたちのための医療援助がぴったりだからボクは

言及する。「ビルマで苦しんでいる人々がいる」と憤慨したゴードン・ブ

ラウンは言った。「食べ物なしで置かれる子どもたちがいる、、、国際援助

が提供されてるときに、政権が取り入れるのをじゃましようとするのは、

まったく容認できない。」デイヴィッド・ミリバンドは「有害な怠慢」と

賛成する。イラクの子どもたち、アフガニスタンの子どもたち、ガザの

子どもたちにもそう言ってくれ、そこでの英国の役割は同じくらい怠慢

で有害だ。バグダッドのシーア派地区の子どもたちの多数が、アメリカ

と、 BBCがイラクの「民主政権」と呼ぶものによって粉々に爆破される

とき、英国は例のごとく口を閉ざす。イスラエルがガザの子どもたちを

苦しめ飢えさせているのに、「ボクたち」は何も言わず、停戦をもたらす

ためのハマスとの試みをことごとく無視する。もっぱら、あえて名前を

言わない聖戦の名目で。

パレスチナからビルマまで「二度とない」点で、人権宣言の精神のリニ

ューアルでさえ、冷戦後何年かの人道にめざめた日であったかもしれな

いものは、そのすべてをおびやかしている飽くことを知らない独占的な

権力の野心によって無効にされた。「テロ戦争」は、ビルマ内部警備組織

の凶悪犯をオーストラリアとイスラエルに訓練させる。たいていの人道

援助と、ビルマに「賢い」プレッシャーをもたらすかもしれない紛れも

ない国際協調主義を、それは遠回しに消滅させる。これについてはアウ

ン・サン・スーチーがかつて語ったことだ。

彼女の国の軍事介入の白痴的言動を捨てて、「将軍たちを維持させる多額

のドルを彼らに与える、将軍たちと取引する人たちについてはどうなの

か?」と彼女は尋ねた。彼女は石油とガスの巨大企業、トタルとシェブ

ロンのことを引き合いに出していた。トタルとシェブロンは実際上、年

間27億ドルを政権に手渡す。そしてヤダナパイプラインの建設を支援

した、チェイニー副大統領が元 CEOの会社、ハリバートン。そして強制

労働で建設された橋と道路の向こうに旅行者を届ける多数の英国の旅行

会社。オードリートラベルはそのビルマの休日をガーディアン紙にて販

売促進する。譲渡契約(憲章)に違反して、 BBCは、奴隷労働もしくは

サイクロンもしくは仕掛け線の向こうの女性に頓着なく、ビルマの旅行

者になる「ボクたち」の権利の手に負えない擁護者、ロンリープラネッ

トの旅行ガイドの75%を買収している。なんたることだ、恥を知れ。

www.johnpilger.com

▲ジョン・ピルジャー:独自の取材方法で有名な、イギリスで活躍する

オーストラリア出身のジャーナリストでドキュメンタリー映画作家。

50本以上のドキュメンタリーを制作し、戦争報道に対して英国でジャ

ーナリストに贈られる最高の栄誉「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」

を2度受賞、記録映画に対しては、フランスの国境なき記者団賞、米国

のエミー賞、英国のリチャード・ディンブルビー賞などを受賞している。

ベトナム、カンボジア、エジプト、インド、バングラディッシュ、ビア

フラなど世界各地の戦地に赴任した。著書には「世界の新しい支配者た

ち」(岩波書店)など多数の著書がある。最新の著作は「 Freedom Next

Time: Resisting the Empire(次こそ自由を:帝国への抵抗)」で、ア

フガニスタン、ディエゴガルシア島、インド、パレスチナ、南アフリカ

の現状などについて書いている。 


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なっています。こちらもごひいきに。

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