■ここまではオバマはガザについて要点がわからない ... ■

インディペンデント紙  22 January 2009 ロバート・フィスク

もしオバマに、中東の誰もが言っていることについて話す勇気があったな

ら、助けとなっただろうに。いや、それはイラクからの撤退の話ではなか

った。中東の誰もがそれはわかっていた。グアンタナモの終わりの始まり

を彼らは予想したし、中東特使としてジョージ・ミッチェルの指名の可能

性は予想された最悪のものだった。もちろん、オバマは「徹底的に殺され

る罪なき人びと」について言及した、だが、これは確かにアラブ人が考慮

していた「徹底的に殺される罪なき人びと」ではなかった。

昨日、マフムード・アッバスに電話があった。たぶんオバマは彼がパレス

チナ人の指導者だと考えるのだろうが、彼が国際支援と「全面的」がなに

を意味するのであれオバマが見たところ彼に申し出ている「全面的協力」

という輸血でもってなんとか生き続ける死骸に近い幽霊政府の指導者な

のを、おそらくアッバス氏を除き、すべてのアラブ人がよくわかっている。

そしてまたオバマがイスラエルに義務的に電話をかけたことも、誰にとっ

ても驚きではなかった。

だが、中東の人びとにはそれどころか、「イスラエル」の言葉はもちろん、

「ガザ」の言葉の欠如は、オバマの就任演説をおおう暗い影だった。彼は

気にかけていなかった?彼は見て仰天しなかった?なぜ黒人の男の父親

が60年前レストランで食事をとれなかったか、黒人の権利について語る

ことが、わずか3年前に選挙に勝ったのにその後まずい人たちに投票した

からと懲罰された民族の悲運にアラブ人の気持ちが集中することになる

のを、オバマの若いスピーチライターは十分に理解しなかった?それは中

国人の店にある瀬戸物の象の懸案ではなかった。それは中国人の店の床に

高く積まれる全くの死体の山だった。

もちろん、シニカルになるのは簡単だ。アラブのレトリックにはオバマの

月並みな考え「勤労と正直、勇気とフェアプレー ... 忠誠心と愛国心」に

相通ずるものがある。しかしながら新大統領が彼自身と彼が後任になって

いる悪徳の政権とのあいだにうんと距離を置いても、依然として9.11

が雲のようにニューヨークにのしかかる。私たちは「煙が充満する階段を

突撃する消防士の勇気」を憶えていなければならなかった。それどころか、

「わが国は暴力による脅しと憎しみの遠くまで影響が及ぶ(遠大な)ネッ

トワークと交戦中である」は、アラブ人には全くのブッシュだった。旧ブ

ッシュとイスラエルの不安の種の言葉「テロ」に言及するのは、新ホワイ

トハウスが依然として意味を了解してきてないという厄介な徴候だった。

この故に、タリバンのようなイスラム教徒のグループについて、実はとも

かく見たところでは「罪なき人びとを徹底的に殺していた」が「私たちよ

り長生きできない」とオバマに言わせる。おそらくイラン政府を意図した

ものであっただろう、スピーチのなかの腐敗する人たちと意見の相違を黙

らせる人たちはどうかと言えば、大部分のアラブ人がこの習性を中東のア

メリカの友人となっている主人役、エジプトのホズニ・ムバラク大統領(も

ちろん、彼もまた昨日オバマから電話を受け取った)、サウジアラビアの

アブドラ国王、他の独裁者とヘッドチョッパー(頭をぶち切る連中)と結

びつけるはずだ。

ハナン・アシュラウィはそれを正しく理解した。イスラエルはもちろん、

パレスチナの安全保障、パレスチナの正義、アラブ人の地にユダヤ人だけ

のユダヤ人のための違法な入植地建設の終焉、アラブの不一致だけでなく、

あらゆる暴力による脅しを終えるなど、中東における変化は「早急」でな

ければならないと彼女はただちに言った。だが、仮に丁重なジョージ・ミ

ッチェルの指名がこの要求にかなうことを意味したとしても、中東では現

に「 Bマイナス」の就任演説はこれに合致しなかった。

イスラム教徒への好意的なメッセージ、「共通の関心事と相互の敬意に基

づく新たな前進の道」は、世界がじっと見つめて憤激させられたガザの血

の粛清の写真に全然注意を向けなかった。なるほど、ひどいブッシュがい

なくなったのをアラブ人と他のモスリム国家の多くは、そしてもちろん、

世界の大部分は喜ぶことができるとも。またグアンタナモもしかり。だが、

ブッシュの拷問とラムズフェルドの拷問は罰せられるのか?あるいは、水

や布きれを使う必要がなく、男たちが絶叫するのを聞く必要がないところ

で、落ち着いて仕事を進められるのか?

もちろん、この男にチャンスを与えよう。たぶん、ジョージ・ミッチェル

はハマスと話すだろう、彼はやってみる男だ、だがデニス・ロスのような

以前の失敗者たちに、そしてラーム・エマニュエル、それどころか、ロバ

ート・ゲイツやヒラリー・クリントンにぜひとも言ってもらうことはなに

か?オバマの就任演説よりいっそう大きな教訓、ダマスカスのパレスチナ

人でさえ二つの言葉の欠如を指摘した、パレスチナとイスラエルだ。この

二つに触れるには刺激的すぎた、そしてワシントンの凍てつくような日に、

オバマは手袋さえしていなかった。

▲ロバート・フィスクは英インディペンデント紙の中東特派員。

「 The Great War for Civilisation: The Conquest of the Middle

East」を含め、彼は中東地域に関する多数の本を書いている。


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