▼「華氏911」に入れ込むディカプリオ▼ New York Daily News
http://www.nydailynews.com 15 June 2004

俳優レオナルド・ディカプリオがマイケル・ムーアの「華氏911」の
ロスのプレミアに姿を見せたあと、6月7日の上映会に出席するため、
ニューヨークに飛んだ。彼は自分の公式サイトをすっかり環境保護活動
と選挙啓蒙に塗り替えている。
映画の公開を拒否したディズニーと争って配給権を買い取ったミラマッ
クスの創始者ハーヴェイ・ワインスタインは、「レオは自分の映画を売
り込むよりはるかにこの映画のほうをプレスに売り込んでいる」とから
かった。
映画を撮ったムーアに、数回会ったディカプリオはデイリーニュースに
次のように話した:
「誰に投票するかで、どっちつかずの態度の人がまだどっさりいると思
う。映画を見て駆り立てられる人がいるはずだよ。前回の選挙では若者
が投票しなかった。問題だよ、今度はそれが主な争点になるだろうな。
若者も、同じように、たくさんの人を選挙者名簿に登録させなくちゃ。
それも若者の候補者に投票させるようにね」
ディカプリオの場合は、「ジョン・ケリー」だと教えてくれた。
全米映画協会は、映画にR指定(17歳以下は大人同伴のこと)を加え
ることで若い人たちが映画を見るのを妨害したかったと、ニューヨーク
のプレミアに出席した監督スパイク・リーは考える。
「映画をR指定にするのはずるかったよな」とスパイクは語った。「で
も十代の子たちはそれでもこの映画を見に行くべきだよ。ジョン・タト
ゥーロは今夜のプレミアに息子を連れてきてたよ。暴力にこだわってい
たけど、十代の子はこの映画よりヴィデオでもっとすごい暴力を見てい
る。でも、これはまねごとじゃない。発砲すると銃弾がどういうことを
しでかすか、子供に見せたほうがいい」

過去に例のない森林火災、干ばつ、洪水が、世界各地で多発する。
記録的な熱波がカナダ、アメリカ本土、ハワイ、中国、ロシア、アラス
カを襲った。
インドで気温摂氏49度を記録した年に1500人以上の死者が出る。
フランスは記録的な猛暑のせいで約1万人が死亡した。
これは映画、「デイ・アフター・トゥモロー」のストーリーではない。
私たちのかけがえのない地球で、ここ数年内に実際に起きてる現象だ。
直接気づかなくても、まだまだある異常現象のこれはほんの一部:
=イギリスでは異例の早さとなる12月23日にマルハナバチが目撃さ
れた。
=イギリスでは昨年、史上初めて37.8度を記録した。
=アメリカでは2003年の西ナイルウイルスの感染例が4000件以
上に達した。
=スイスの氷河は最高の後退率を示した。
=2050年までに100万種以上の生物が絶滅する危険性がある。
=アラスカの年間平均気温は1960年以降5度上昇した。
=日本のここ5年間の平均海面水位は過去100年で最も高い水準とな
った。
=欧州のここ10年の暑さは過去500年で最も暑かった。
=クルマの年間炭素排出量は平均2トン。
=今後10年以内に1500億ドルの被害が出ると想定される。
製作:エクソンモービル 監督:ジョージWブッシュ
映画「The Day is Today」(気候変動はすでに起きている)
そのときあなたは誰を責めますか?

▼ビッグスクリーン対ビッグオイル 25 May 2004 greenpeace.org

地球温暖化はすでに起きている。エクソンモービルは君が気づかなけれ
ばいいがと願っている。
ハリウッドが科学をもてあそぶのは承知してる。だが、気候変動大災害
映画、「デイ・アフター・トゥモロー」が現実の地球温暖化の危険性に
ついて人にもっと考えさせ、行動させるなら、親指2本でやった!!の
合図を送ろうじゃないか。

映画はもっぱら、世界の環境に起こるはずの大変動のスピードを誇張し
てるとの、もっともな非難に陥っている。数時間で北アメリカに押し寄
せる科学的にありそうもない急速冷凍(事実、氷河期は一瞬にして起こ
る)や同時に押しかける数百年の嵐、ロサンジェルスを襲う高層ビルを
半分引きちぎる複数の大竜巻とニューヨークを飲み込む大津波に、何十
年もかけて起こることが圧縮されるのを、映画製作者自ら認めている。
これに肉薄する段階での極限のできごとはシナリオのようではないとか
このようなできごと、特に北半球の冷凍化などは、まったく起こり得な
いと環境科学者たちは述べている。
だが潜在する前提として最も折り合いがつくのは、極端な気候がすでに
出現しており、地球温暖化がそれをもっと頻繁で、もっと過酷なものに
すると予想できる点だ。映画で政治家が経済的損失を引き合いに出して
警告を無視するのは、現実世界でも同様である。

現実にすでに死者が:
異例の猛暑で昨年フランスでは1万4千人以上が死んだ。WHO 世界保
健機構は、地球温暖化がもたらす異常気象と不健全なできごとで、年間
16万人が死んでおり、その数は2020年には二倍になると見積もっ
ている。
世界最大手の再保険会社のひとつ、ミュンヘン・レーのトーマス・ロス
ターが12月に英ガーディアン紙にこう語った。「洪水と猛暑に特有の
表現で私たちは100年に一度のできごとと話したものです、だが今年
南フランスで100年に一度の熱波があり、先月には100年に一度の
洪水があった、どれもみな同じ年に起きている。これが今起こっている
気候変動で、保険会社には大きな頭痛の種です」

地球温暖化に関する最初の門外漢の本「エンドオブネイチャー」を書い
たビル・マッキベンは1980年代以降、この問題に一般大衆の関心を
引こうと騒ぎ立ててきた。政治家どもは何かがせきたてるまで手を着け
ようとしないのを私たちはよく知っている。そしてマッキベンは、私た
ちが直面していることについて広く行き渡った大衆の理解力のなさを嘆
く。今日生まれてくる子供の寿命内に、世界で知られる生物の四分の一
までが絶滅すること;低地地域の全人口が洪水で消え失せること;北ア
メリカのマラリア;キラーストーム、農業パターンの破壊的変化と地球
全体にわたる食糧生産能力の深刻な削減などがそれだ。

恐怖はもっともだ:
これに注意を向ける現実の救済行為が始まっていない、マッキベンは、
Granta と題する発行物で、「ひどくいらいらさせる世界」と申し立て
る。「恐怖にほとんど中身がない」からだ。そして問題は、一般大衆が
関心を持つほどに悟るまで、政治家は私欲に従うつもりでいることだ。
そして昨今、世界最大手の石油会社エクソンモービルのような財界の実
力者グループによる大々的ロビー活動の成果とキャンペーン資金の提供
によってその私利追求が指図される。

この映画に誰が怒っているか、注目するのはとても興味深い。
痛烈な映画批判で、カト研究所のパトリック・マイケルズは今日地球が
19世紀より温暖化している事実を「良好な真実」と呼び、映画ばかり
か、異常気象が次第に増加していると指摘する科学を簡単に片づける。
マイケルズ氏に支払うためカト研究所に資金を供給するのは誰か?世界
で一番環境に害を与える、エクソンモービルだ。
テク・セントラル・ステーションのロバート・ボーリングは映画を軽蔑
する上に、その中で京都議定書の批准に反論する。「気候の衝撃はそれ
が起こるまで何十年も気づかれないのだが。もちろん、プロトコルの望
ましくない経済的衝撃はすぐになんなく気づかれる」。次世代の地球の
責務についてはそれでおしまい。テク・セントラルに資金を供給するの
は誰か?なぜ、彼らのウエブサイトにはこんな言い方があるのか。
「テクノロジーで信頼を分かつスポンサーとなる企業によってテク・セ
ントラル・ステーションは支援される.... そして私たちはAT&T 、エク
ソンモービル、ジェネラルモーターズコーポレーション、インテル、マ
クドナルドに感謝する.... 」
競争計画研究所(CEI )のレイン・マーレイはアル・ゴアを嫌うのと同
じくらいこの映画を嫌う。国連の気候変動に関する政府間調査員団が地
球温暖化について警告すると、間違った科学で有罪だと彼は主張する。
そしてそれを証明するため、「クーラーヘッズコアリッション(冷却剤
社長連合)」がスポンサーの4人の専門家調査員団を披露する。彼は、
クーラーヘッズコアリッションが彼の研究所によって始められたことに
触れるのを怠った、あるいはCEI がそこから資金供給されるのを。いや
待ってくれ、まさか、これは偶然?またここにもエクソンモービルだ!

真実とウソ
ひとつは映画をフィクションとして片づける。 もうひとつ、映画が実例
を出して説明しようと試みる問題の事実を否定するというのがある。
フィクションはいわば文明を推し量る正当なレーダーで、それは民主的
な討論を具体化する効果的な場である。映画「チャイナシンドローム」
が1979年に観客の前で上映されたとき、タイトル自体が、核溶融は
地殻を貫通して燃焼するというのを前提とした誇張表現だった。けれど
もオリジナルの脚本は実際の原子力の危険を知りすぎるくらいよく知っ
ていた技術者によって書かれ、彼は強調するためにすでに起きていた現
実の問題を単に増幅したにすぎなかった。映画が初上映されて11日後
に起きたスリーマイル島での原発事故は、映画のベースラインの前提が
ゆるぎないものであるのを立証した。原子力がひたすら安全なことを重
複するセーフガードが約束するとの原子力産業の主張は傲慢だった。以
来、合衆国では新たな原子力施設は承認されていない。
キューブリックの映画「博士の異常な愛情」についてはどうか?人類を
破滅させる、核による破壊を作動させる阻止不可能な仮想装置は全くの
フィクションだったが、「MAD :米ソ相互間の抑止戦略の前提となる
相互確実破壊能力」の狂気の沙汰について真実を語った。キューブリッ
クの怪奇なジャックD. リッパー将軍の期待に応えている現実世界の軍
人がいないことを私たちはただ期待するしかない一方、ソ連は、法律の
枠外に置かれてきた。そして、爆撃投下は5分で始まるとのロナルド・
レーガンの安っぽいマイクの前でのお笑い演芸場が、キューブリックの
最もばかばかしいヴァージョンに置き換えられていやしないか。

チャレンジ
文明は物語によって形づくられる。実際の論点について、難しい問題を
持ち出すため物語は想像上のできごとを使う。「デイ・アフター・トゥ
モロー」は映画だ。事実を目立たせるのにフィクションを使う。地球温
暖化は私たちの注意を必要とする。待ったなしだ。
温暖化を止めるには遅すぎる。もうすでに人が死んでいるし、世界は永
久に変わってしまっている。だが、毎日何もしないことでぎりぎりまで
もってくる、現実のホラーと現実の大災害から、将来の世代を救うのに
遅すぎることはない。
努力目標は40年以内に世界の石油・石炭・天然ガスなど化石燃料依存
に終止符を打つことだ。これはエクソンモービルが君たちに耳を傾けて
欲しくないメッセージであり、ジョージ・ブッシュの地位を確保してお
くため、彼らが大金を支払うアメリカの予定表に従って行動しないとい
うメッセージだ。 将来では遅すぎる。行動するのは今日、いまだ。
エクソンを買わない。エッソを買わない。

▲作家のビル・マッキベンは、人里離れたニューヨーク州アディロン
ダックの山中に住み、環境問題からテクノロジーの及ぼす影響といっ
たテーマまで、幅広く執筆活動を行なっている。マッキベンは携帯電
話を持っていない。彼の住んでるところは携帯電話が通じないのだ。
森の中で、何にも邪魔されずリラックスする方法を知っている人間が
いるとすれば、それはマッキベンだろう。
しかし、そのマッキベンでも、年に一度リュックを背負い一人旅に出
ると、「頭の中に染みついたCNN」を追い出すのに何日もかかるとい
う。「生活が時間に追われていることを、まさに実感する」と、かつ
て「ニューヨーカー」誌の専属ライターだったマッキベンは、氾濫す
る情報に圧倒されないための会議冒頭の基調講演で述べた。
「情報が常に、際限なく流れ込んでくる」
「しかし、常に情報浸けにならないこともできるのだ」と。
(WIRED NEWS 2004年5月13日 )