■ガザを 忘れずにいるか?■ハーアレツ紙 24 April 2009

by ギデオン・レヴィ

アリアン・アブ・アウンはそばに松葉杖を置いてテントの中で横たわって

いる。彼はタバコを吸い、ちっぽけなテントの空虚な場所を凝視する。

下の息子が彼の膝に座る。小部屋ほどの大きさのテントに10人が詰め込

まれる。この3カ月、テントが彼らのわが家だ。イスラエル防衛軍がキャ

スト・リード作戦の間に集中攻撃を浴びせた以前の家は跡形もない。彼ら

が難民になるのはこれが二度目、アブ・アウンの母親はかつてアシュケロ

ンの近くにあった Sumsum町のわが家をいまでも忘れずにいる。

53歳のアブ・アウンは、ガザのベイトラヒの町にある自宅が爆撃された

とき、なんとか逃れようとしていて負傷した。それ以来、彼はずっと松葉

杖生活だ。戦争のまっただ中で彼の妻は出産し、いま赤ちゃんは彼らとい

っしょに気を滅入らせる寒々としたテントの中にいる。水曜にガザ地区を

のみ込んだ嵐の間にテントが飛ばされたので、一家は代替品を据えなけれ

ばならない。彼らがコンテナに水を得るのは時たまだけ、小さなブリキ製

の小屋がベイトラヒアの Al-Atatra地域にあるこの新しい難民キャンプ

「キャンプ・ガザ」の100家族のバスルームとして用を足す。今週末、

アブ・アウンは特につらかったと思われる。彼の一家のためのもっと大き

なテントを赤十字が拒んだのだ。彼はまた、豆を食べるのがやっとでもあ

った。

3カ月間、アブ・アウン一家と他の数千人が戦争後に建てられる5つのテ

ント野営地で暮らしてきている。新しい家を建てるのは言うまでもなく、

崩壊した家屋の後片付けをするのにも着手してきていない。数千人が廃墟

となった彼らの家屋のすぐ近くで暮らす、数千人がテントの中、数千人が

親族でぎゅうぎゅう詰め、数万人が新たなホームレス、そして世界は彼ら

に関心を失ってきている。今からひと月半前に、ハデな大宣伝で召集した

75カ国が含まれ、ガザ再建に10億ドル譲渡することで合意した、エジ

プトのシャルムエルシェイクでの援助国会議後、何もなかった。

ガザは包囲される。建築資材など何もない。必要とされてる時パレスチナ

人に統一政府をつくる能力がなく、どこにも金やコンクリートが見あたら

ずにアブ・アウン一家がテントで暮らし続ける条件を、イスラエルと世界

が整えている。米国によって約束された9億ドルさえレジ(金銭登録機)

にとどまる。支払われるかどうか疑わしい。アメリカの約束だ(信用でき

るものか)。

戦争についてたくさん論じられて以来、きっかり3カ月、ガザがまたして

も忘れられる。イスラエルが、犠牲者の暮らし向きに興味を持ったことは

一度としてない。いま、世界もまた忘れてきている。まったくカッサム・

ロケット弾がない2週間が、実践すべき第一議題から完全にガザをはずし

てきている。ガザに住む人たちがあわててロケット弾発射を再開しなけれ

ば、誰も再び彼らの暮らし向きに興味を持たないだろう。耳新しくはない

が、とかく暴力によるおどしの次の周期を誘発しやすい、これは特に悲嘆

させ悲しみに沈ませるメッセージなのだ。と同時に、彼らは発射するだろ

うから、彼らが援助を得られないのは確実になる。

誰かがアブ・アウン一家や彼らのような他の犠牲者の悲運の責任を引き受

けなければならない。もし彼らが地震で損害を与えられているなら、おそ

らく世界はずっと前に彼らが元通りになるのを助けてきているはずだ。

イスラエルでさえ、 IDF(イスラエル防衛軍)でも、ZAKA、Magen David

(ダビデの星) Adomから援助輸送車隊を急派したことだろう。だが、ア

ブ・アウン一家は自然災害ではなく、メイド・イン・イスラエルの力と生

身の人間によって損害を与えられた、それも初めてではなく。

その応答:償い(補償金)なし、援助なし、修復なし。イスラエルと世界

はガザを再建するのにあまりにも先取りしすぎた。彼らは無言になってき

ている。ガザを忘れずにいるか?

アブ・アウン一家の廃墟からは新たな絶望が芽を出す。前のものよりもっ

と悔しい思いだろう。家柄のすぐれた8家族が精神的にも肉体的にも破壊

されてきており、世界がよそよそしく乗り気にならない。犠牲者に賠償す

るとか、引き起こした廃墟を再建することで、私たちはイスラエルをあて

にすべきではない。その倫理上の義務は言うに及ばず、これが明らかに重

要性であるとしても、話題はそのことを語りもしない。

世界はまたもやイスラエルの異常なやつを除去しなければならない。だが、

緊急人道援助を提供することで、イスラエルはどんどん政治的条件、ガザ

を廃墟のままにしておき、ガザが受けて当然で死に物狂いで必要とする援

助を提供しないための誠意のない口実を整えてきている。ガザはまたもや

援助などを与えられず思うように処理されてきており、アブ・アウン一家

はテントに入れたままにしておかれる。そして交戦状態が再び始まるとき、

私たちはまたもやパレスチナ人の残忍性や野蛮な行為について聞かされ

ることになるのだ。

▲ギデオン・レヴィ:イスラエルの新聞ハーアレツ紙に怒りのコラムを書く

記者。


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