「もし私たちがベネズエラ国民だったら、2004年8月15日には、
ウゴ・チャベス大統領に投票するだろう」
このネットで広まるマニフェストに署名した人の中に、作家のタリク・
アリやジャーナリストのナオミ・クライン、ジョン・ピルジャー、ル・
モンドのイグナシオ・ラモネ、ロンドン市長ケン・リヴィングストンら
の名に混じり、フランス人ミュージシャンのマヌ・チャオ、イギリス人
映画監督のアレックス・コックス、マイク・ホッジス、ケン・ローチ、
そして劇作家ハロルド・ピンター、ブラジル人建築家オスカー・ニーマ
イヤーと、多彩なアーティストの名があるのが目を引き、興味深い。
8月15日に国民投票を実施することが正式に発表されてリコール投票
で勝負に出た反対派の挑戦をチャベス大統領は「受け入れる」と国民に
向けた演説で明言した。
米国と反対派がチャベス打倒の目下の焦点にしているのが、昨年の夏以
来、反対派が進めてきたリコール国民投票だ。署名集めは昨年12月に
行われ、反対派は340万票を獲得したと豪語した。だが今年3月2日
国家選挙委員会(CNE)は不正署名と疑わしい署名を除いた180万
票しか認められないと裁定を下した。同じ筆跡による多数の署名や、偽
の身分証明書の使用、企業ぐるみの署名など、ありとあらゆる手段を使
った不正が発覚したからだ。その後、争いは最高裁へと移った。最高裁
選挙法廷は、CNEによって除外されたうちの約80万票を有効にする
決定を下したが、3月23日、最高裁長官イワン・リンコンと最高裁憲
法法廷は再びその決定を無効とした。それから約2ヶ月間、疑わしい署
名の数とその再確認をめぐり綱引きが行われた。
結局、決着をつけるために、5月27日から30日まで不備のある署名
120万人分についての補正作業が行われた。署名した人は自分の署名
の有効性を確認でき、それを取り消すこともできた。この結果、有権者
の20%(243万6083人)をわずかに上回る245万1821人
の署名が有効とされ、大統領リコールの国民投票を実施する条件をクリ
アすることになった。

▼私たちがベネズエラ人だったら▼CounterPunch 27 July 2004

もし私たちがベネズエラ人だったら、2004年8月15日、ウゴ・チ
ャベス大統領に投票するだろう。
このマニフェストに署名した私たちは、 ウゴ・チャベス大統領と共に、
自分の将来を自由に決める権利を擁護するベネズエラの大多数の国民の
奮闘に連帯を表明したいと思います。
同時に、法の支配とベネズエラ憲法を一貫して尊重してきた大統領を、
専制君主として描き出そうとする主流メディアの情報操作キャンペーン
を批判したいと思います。
1998年12月の民主的選挙で、そしてそれ以降行われたすべての選
挙で、ウゴ・チャベスは地滑り的な勝利を収めてきました。選挙キャン
ペーンの際に行なった約束に従い、チャベスは何十年にもわたって少数
の寡頭制支配下にあったベネズエラで、政治・経済・社会に及んで根本
的な改革を進めてきています。この改革プログラムの結果、彼はベネズ
エラ並びに、国際的な企業と金融組織、そしてそれらの利益を守ろうと
するメディア組織の標的にされてきました。
ウゴ・チャベスはベネズエラの大多数を占める貧しい人々を守り、また
大規模な民主的参加プロセスの結果行われた1999年の民衆投票で採
択されたベネズエラ新憲法の原則を推進しようと尽力しています。99
年の憲法は異例なまでに進歩的なもので、選挙で選ばれた公職員は誰で
あれ、任期の半ばで住民投票による審査を受けることができるとありま
す。この規定の結果、今年2004年8月15日、ウゴ・チャベスが5
年の任期終了まで大統領でいるべきかどうかを決める住民投票が行われ
る予定になっています。
このような憲法規定はラテンアメリカでは唯一のものであり、恐らく、
世界でもユニークなものです。任期終了前に自分の人気が試されるのを
受け入れる、勇気ある国家元首が世界中にどれだけいることか?ウゴ・
チャベスはこの勇気を示し、それによって、過去にクーデターや経済的
破壊活動、ウソや任務拒否によりベネズエラの立憲秩序を破壊しようと
してきた反対派に、民主的な教訓を与えたのです。反対派は、これまで
無視してきた法的な枠組みに従って行動する義務を負っています。
8月15日、ベネズエラ国民が、より自由で公平な社会を建設し続ける
ことのできる新たな勝利を祝福するのは確実と私たちは考えています。
シモン・ボリーバルが夢見た国です。
このような理由で、私たちは、改めて次のように宣言します:
もし私たちがベネズエラ人だったら、2004年8月15日にはウゴ・
チャベス大統領に投票します。

以下、署名:
Tariq Ali ( Pakistan- Great Britain): Writer
Perry Anderson (Great Britain): Historian
Walden Bello (Filipina): Economist, 2003 Right Livelihood Prize
Tony Benn (Great Britain): Politician
Robin Blackburn (Great Britain): Sociologist
Victoria Brittain (Great Britain): Journalist
Atlio Boron (Argentina): Economist
Chico Buarque (Brazil) musician
Jose Bove: ex spokeman of la Confederation
Paysanne Bernard Cassen: Founder of ATTAC
Luciana Castellina (Italy): Journalist
Manu Chao (Spain- France): Musician
Jean Pierre Chevenement (France): Politician
Alexander Cockburn (Ireland- USA): Journalist
Alex Cox (Great Britain): Film Maker
Celso Furtado (Brazil): Economist
Eduardo Galeano (Uruguay): Writer
George Galloway (Great Britain): Politician
Richard Gott (Great Britain): Historian
Eric Hobsbawm (Great Britain): Historian
Mike Hodges (Great Britain): Film maker
Francois Houtart (Belgium): Centre Tricontinentale
Saul Landau (USA), author, film Maker
Ken Livingstone (Great Britain): Mayor of London
Naomi Klein (Canada): Journalist
Ken Loach, Film Director
Fernando Morais (Brazil) : Writer
Sami Nair (France) : Sociologist
Oscar Niemeyer (Brazil): Architect
Adolfo Perez Esquivel (Argentina): Nobel Peace Prize
James Petras (USA): Sociologist
John Pilger (Australia): Journalist
Harold Pinter (Great Britain): Playwright
Ignacio Ramonet (France): Writer
Emir Sader (Brazil): Sociologist
Jeffrey St. Clair (USA): Journalist
Joao Pedro Stedile (Brazil): Landless Peasant Leader
Rudy Wurlizer (USA): script writer

▼今回もまたクーデターの影にアメリカが▼

ベネズエラで「クーデター未遂事件」が発覚した。5月初めのことであ
る。世界中がイラク情勢の緊迫化、米軍によるアブグレイブ拷問事件の
スキャンダルに釘づけになっているなかでのことだ。時まさにベネズエ
ラ国内が「4・11クーデター」阻止の2周年を祝っている最中の出来
事だった。捕らえられたコロンビアの準軍事組織グループの最大の狙い
のひとつは、チャベス大統領の殺害だった。幸運にも事件はベネズエラ
警察によって未然に摘発、阻止された。そして今回もまた、ブッシュの
アメリカが背後で暗躍していたことが明らかになった。米=コロンビア
の右翼勢力=反チャベス勢力が結託して、政権転覆を企てたのだ。チャ
ベス政権は、反米・反帝国主義を前面に掲げてアメリカによる軍事干渉
への備えを訴え、国民の団結を呼びかけている。
「イラクだけではない。米国はハイチに続き、ベネズエラへの介入を狙
っている」

▼混迷するべネズエラ:階級格差が引き起こした国を二分する対立▼
(NHK 報道スペシャル 03 April 2004 からの要約)

80年代に頂点を極めたべネズエラの繁栄は、アメリカと密接につなが
る石油産業からもたらされた。影でアメリカが動いたと言われるクーデ
ターに失敗した反大統領派は、2002年にゼネストを決行。べネズエ
ラ石油公社が全面ストップすると、チャベスは政権退陣を迫った公社の
従業員2万人を逮捕。新聞紙面でその名前を公表するという強硬策に出
る。このとき職を失った人々、チャベスが進めてきた社会改革のせいで
職を失った人々と石油産業にたずさわる国の中枢の人々が、石油の富を
独り占めしてきた経済界のバックアップを得て、2003年11月28
日、政府の罷免を求める国民投票に必要な240万人の署名運動に乗り
出した。メディアを所有する経済界の後ろ盾で、反大統領派は贅沢な広
告や番組を使って連日大統領を攻撃する。署名運動の会場は高級住宅地
の一角に設けられた。
一方、貧困から抜け出そうとする大統領支持派も、「大統領をやめない
で!」とデモを行う。1999年に44歳の若さで大統領に就任したチ
ャベスの支持基盤は2400万の人口の実に8割に及ぶ貧困層である。
このランチョ(ほったて小屋)と呼ばれるスラムの住人は、チャベスの
特別予算による電気とガスの供給や、職を得る機会などにより、確実に
生活が改善されている。チャベスが演説するときに左手に持つブルーの
豆本、「新憲法」には、国民すべてが参加する民主主義と、石油の富の
公正な分配が明記されている。
石油の6割がアメリカに行くベネズエラ石油公社は、アメリカの力が行
使されるところだったが、チャベスはここの改革にも着手すると完全に
国家のものとした。ゼネスト後、石油が高騰してアメリカの危機感を招
いた。大統領補佐官ライスの公式発言は反大統領派を勢いづかせるもの
だった。こうやって見てくると、アメリカが強行したついこの間の「ハ
イチ大統領強制排除」のことを考えないわけにはいかない。あれが起き
たのは、チャベスがアリステッド大統領を助けるために軍を動かす寸前
だった。アメリカと距離を置く政策を行ってきた元司祭のアリステッド
もまた、貧しい階層の人々から支持された。ハイチで警官を襲撃するな
ど、町をパニックに陥れた無法者の武装集団を指揮していたのは、アメ
リカ人だった。

▼ベネズエラ反体制派の大立ち回り▼by モーリス・ルモワーヌ
ル・モンド・ディプロマティーク April 2004

「70%ものベネズエラ国民がチャベスを拒絶している」
2003年8月19日、大統領がついに任期半ばに達した時、フランス
をはじめとする各国メディアによって決まり文句のように繰り返された
のがこの言葉だった。インフレと失業率の上昇に伴い、貧困が拡大した
のは事実である。古い政治体質と結びついた官僚制化、利権政治、買収
が、いまだに蔓延しているのも事実である。
しかし、その一方で、政府によって激しい再建策がとられた(解雇者1
万8000人)石油産業が、生産能力を回復して、国の財政を支えてい
ることを忘れてはならないだろう。貧困層を対象とした社会政策にも注
目すべきだ。農地改革。労働者地区での持ち家政策。キューバから数千
人の医師の協力を得て、スラム街や僻地で行われた保健医療、バリオ・
アデントロ計画。100万人規模の識字教育キャンペーン、ロビンソン
計画。中学で中退せざるを得なかった人たちが対象のリバス計画。市場
より安い価格での生活必需品の販売網、メルカル計画。2001年から
2003年にかけ、人民銀行と女性銀行を通じて総額5000万ドルを
融資したマイクロクレジットの実施などである。民衆が大統領を支持し
ていることも忘れてはならない。当の大統領は、まもなく私たちにこう
語ってみせることだろう。
「何もしなかった冴えない社会民主主義の大統領として終わるくらいな
ら、倒されるほうがましだ」