■ハイチの拉致■ICH 27 January 2010
by ジョン・ピルジャー

ハイチから盗むのは迅速であからさまだ。1月22日、ハイチのす
べての空港と海港を占有し、道路を「確保する」ために、合衆国は
国連から「正式な承認」を確保した。ハイチ人は誰もこの取り決め
に署名しなかった、この合意に法的根拠はなかった。アメリカの海
上封鎖と、人道的救助の訓練を受けてない1万3000の海兵隊員、
特殊部隊、秘密工作員、傭兵の到着で、強国が支配する。

首都ポルトープランスの空港はいまアメリカの軍事基地で、救援便
はドミニカ共和国に行くよう指示される。ヒラリー・クリントンの
到着ですべての便が3時間停止した。ハイチに在住するアメリカ人
800人が食べ物を与えられ給水され避難させられるとき、きわど
く損傷を負ったハイチ人たちが手助けされずにあとまわしにされた。
アメリカ空軍が渇きと脱水状態に陥る人々に水のボトルを落とすま
で6日が経過した。

最初のTV報道が重大な役割を演じて、広く行きわたるけしからぬ暴
力の印象を与える。ワシントンから急派されたBBCの記者マット・
フレイは、「暴力」と「セキュリティ」の必要性についてわめいた
とき、過度呼吸のまぎわのように見えた。地震被災者の明白な威厳
と人々を救助するため独力で苦労する市民のグループの証拠、そし
てアメリカの全般的な評価でもハイチの暴力は地震前よりかなり少
なかったにもかかわらず、フレイは、「略奪が唯一の産業」で「ハ
イチの過去の威厳は長いあいだ忘れられる」と主張した。かくして、
ハイチにおける的確な米国の狂暴性と搾取の歴史は被災者にゆだね
られた。2003年、アメリカの残酷なイラク侵略の直後の時期に、
フレイは、「その他の世界、特に今は中東に、善をもたらしたい、
アメリカの価値をもたらしたいとの願望は... ますます軍事力に結
びつけられる。」と報じた。

ある意味で彼は正しかった。いわゆる平時に人間関係が強欲なパワ
ーによって軍事配備を施されるようなことはこれまでなかった。バ
ラク・オバマでありながら、アメリカの大統領が評判を悪くする彼
の前任者の軍権力組織に政府を服従させることはこれまでなかった。
ジョージ・W・ブッシュの戦争と支配の政策を続行することで、オ
バマは7000億ドルを超える空前の軍事予算を議会から得ようと
してきている。要するに彼は軍の大成功に向けてのスポークスマン
になってきている。

ハイチの国民にとってグロテスクではあるが巻き添えは明白だ。彼
らの国の支配では米軍に加えてオバマは「救済活動」にジョージ・
W・ブッシュを指名してきている。確かにパパ・ドク(独裁者フラ
ンソワ・デュバリエの愛称)のハイチに舞台を設定するグレアム・
グリーンの「コメディアンズ」から盗んだパロディだ。大統領とし
て2005年のハリケーンカトリーナの後に続くブッシュの救済活
動は実質上、多くのニューオリンズの黒人住民数の民族浄化に等し
かった。2004年、彼は民主的に選ばれたハイチの首相、ジャン・
ベルトラン・アリスティードの拉致を命じて彼をアフリカに追放し
た。人気のあるアリスティードには、ハイチの低賃金長時間労働の
搾取工場で苦労する国民のための最低賃金といった控えめな改革に
必要な法律を制定するむこうみずがあった。

私がハイチで耐えていたとき、ポルトープランス・スペリオル・ベ
ースボール・プラント(野球製造工場)で私はウィーンウィーンと
まわるヒス音の接合装置の前で身体をかがめる非常に幼い少女を見
守った。多くの人が腫れぼったい目をして、腕は深く裂け傷ついて
いた。私がカメラを取り出すと追い出された。ハイチはほとんど、
アメリカがその神聖化された国技、野球のための装具を作るところ
だ。ハイチはほとんど、ウォルトディズニーの契約者らがミッキー
マウス・パジャマを作るところだ。米国はハイチの砂糖、ボーキサ
イト(アルミニウムの原鉱)、サイザル麻(ロープ、ブラシ用麻)
を支配する。コメの栽培が輸入アメリカ米に取って代わられて、都
市に町に、いいかげんに作られた安普請の家に人々を追い込んだ。
非常に長い間、フィリピンからアフガニスタンまでずっと彼らの専
門できている残虐行為で悪名高い、アメリカ海兵隊によってハイチ
は侵略された。

ハイチにおける国連の代理人(外交使節)に自分を任命させてきて
いるビル・クリントンはもうひとりのコメディアンだ。かつてBBC
によって、「ミスター・ナイスガイは... 問題を抱えたみじめな国家
に民主主義を連れ戻した」とちやほやされたクリントンは、ハイチ
の最も悪名高い私掠船の船長で、搾取工場の大実業家の利益のため
に経済の規制緩和を要求した。近ごろ彼は、ハイチの北部を、領土
を横取りするアメリカ人の「旅行者の遊び場」に変える、5500
万ドルの取引を進めてきている。

旅行者のためでないのがポルトープランスの5番目に大きな建物、
アメリカ大使館だ。数十年前にハイチの水域で石油が発見されて米
国は中東が干上がり始めるまでそれを予備に取って置いた。もっと
差し迫って、ハイチ占領にはラテンアメリカに対するワシントンの
「巻き返し」計画での戦略的重要性がある。目標は、米国がスポン
サーの政権によって長いこと拒まれた経済的・社会的正義の初めて
の経験を何百万人に与えてきているベネズエラ、ボリビア、エクア
ドルで人気のある民主主義の打倒と、ベネズエラの豊富な石油埋蔵
量の支配、増大する地域協力のサボタージュだ。

あえてまた最低賃金と富裕層が税を支払うのを擁護したホンジュラ
スのホセ・マヌエル・セラヤ大統領に対するクーデターに加えて、
昨年、最初の巻き返しの幸運が到来した。違法なクーデター政権へ
のオバマの極秘の支持が、中央アメリカの脆弱な政府に明確な警告
を伝えた。昨年10月、長いことワシントンによって資金を供給さ
れ死の部隊によって支援されるコロンビアの政権が、米国空軍の文
書によると、「その地域の反米政府と戦う」ために7つの米軍基地
を与えた。

メディアのプロパガンダは、おそらくはオバマの次の戦争になるも
のの根拠を用意してきている。12月14日、ウエストイングラン
ド大学の研究者たちが、BBCのベネズエラに関する報道の10年の
研究の最初の調査結果を発表した。304のBBC報道のうち、チャ
ベス政府の歴史に残る改革について言及したのはわずか3つ、そし
て今にも彼をヒットラーになぞらえる大部分が、チャベスの非凡な
民主主義の記録を中傷した。

そのような事実の歪曲と、西側権力に追随する隷属が、英米の法人
メディアの全域にはびこっている。ベネズエラからホンジュラス、
そしてハイチまで、よりまともな人生あるいは人生そのものを求め
て苦闘する人々が私たちの支援を受けるのは当然だ。

www.johnpilger.com

▲ ジョン・ピルジャー (John Pilger):独自の取材方法で有名な
イギリスで活躍するオーストラリア出身のジャーナリスト、ドキュ
メンタリー映画作家。50本以上のドキュメンタリーを制作し、戦
争報道に対して英国でジャーナリストに贈られる最高の栄誉「ジャ
ーナリスト・オブ・ザ・イヤー」を2度受賞。記録映画に対しては
フランスの国境なき記者団賞、米国のエミー賞、英国のリチャード・
ディンブルビー賞などを受賞している。ベトナム、カンボジア、エ
ジプト、インド、バングラディッシュ、ビアフラなど世界各地の戦
地に赴任した。著書には「世界の新しい支配者たち」(岩波書店)
など多数の著書がある。最新の著作は「Freedom Next Time:
Resisting the Empire(次こそ自由を:帝国への抵抗)」で、アフ
ガニスタン、ディエゴガルシア島、インド、パレスチナ、南アフリ
カの現状などについて書いている。 


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