■大統領の指揮するアメリカ市民の暗殺■Salon
27 January 2010 by Glenn Greenwald

ワシントンポスト紙のダナ・プリーストが今日、「過去6週間にた
くさんの人を殺害してきているイエメン軍との秘密共同作戦に米軍
チームと情報機関が深くかかわっている」と報じる。ソマリア、パ
キスタンに加えて現在イエメンが、どのような宣戦布告もなしに、
どのようなおおやけの討議もなしに、まず間違いなく(明確ではな
いが)どのような議会の認可もなしに、私たちの軍が秘密裏に戦闘
行為に計り知れないほどかかわってきている新たなイスラム教徒主
体の国であるとき、もちろんこれは驚きではない。多数の一般市民
を殺害した12月後半のイエメンのミサイル攻撃で、米国が演じた
正確な役割はいまだ不明のままだ。

だが、プリーストの記事に隠されているのは、大統領としてそこに
名のある人々が殺害されるのを認可している秘密の「殺人リスト」
に、いまアメリカ市民が置かれるという彼女の意外な新事実だ。

9月11日の攻撃後、米国または米国の国益に反してテロ行為を遂
行するか組織化することでアメリカ人がかかわったとの有力な証拠
が存在するなら、ブッシュは海外でアメリカ市民を殺す権限をCIA
と軍に与えたと軍や情報機関の当局者らは言った... 

オバマ政権は同じスタンスを採用してきている。アメリカ市民がア
ルカイダに加わるにしろ、「彼らを標的にできるかどうかの見地は
実際にどのようにも変わりはない」と政権の上級官僚は言った。
「その時には彼らは敵の一部である」と。

CIAとJSOCの両方が彼らが殺すか捕獲しようと謀る「ハイバリュー
のターゲット」と「ハイバリューの個人」と称される人物のリスト
を維持する。JSOCのリストには昨年遅くに加えられた名前、ニュー
メキシコ生まれのイスラム教聖職者アンワル・アウラキを含め、3
人のアメリカ人がいる。数カ月前の時点でCIAリストは3人のアメ
リカ人を含んでいて、今はアウラキの名が加えられていると情報機
関は言った。

それどころか、確かにアウラキは昨年12月のイエメンのミサイル
攻撃で主要ターゲットの一人だった、あの集中攻撃のひとつで彼が
殺されたと、結局のところ誤って、匿名の当局者が興奮して発表し
た。

少しだけこれについて考えてくれ。前任者のジョージ・ブッシュの
ようにバラク・オバマは、テロに関連しているとの裏付けがまった
くなく告訴されていない未検査の主張と「米国の人と国益にとって
継続する差し迫った脅威」の態度に準拠するだけのアメリカ市民を、
当局に殺害せよと命じる権利を主張してきている。彼らは罪(言い
がかり)に異議を唱えるためにできる手腕や告訴や裁判の権利を与
えられていない。驚くばかりに、彼らがテロリストだったとの大統
領の主張にまったく準拠する(2〜3のアメリカ市民に加えて)単
に外国人を告発なしに投獄するブッシュ政権の政策は何年も激しい
論争を起こした。思い起こせば、あれは憲法に対する由々しき脅迫
だった。どのような種類の適正な手続きまたは照合調査なしに、投
獄ではなくて殺す、アメリカ市民の暗殺を命じることで、オバマの
政策は少なくとも同じくらいに論争を起こすべきではないのか?

米軍が実際の戦場で戦っているとして、そのときは他の誰もがそう
であるように彼らにアメリカ市民を含め、積極的に彼らと戦う戦闘
員を殺す権利があるのは明らかだ。それこそが戦争の本質。それが
戦闘地帯の本物の戦場で交戦する戦闘員を殺すことが許される理由
だが、彼らがひとたび捕らわれて力なく拘留されたら、彼らを拷問
する理由とは言っていない。だが、戦闘はここで私たちが話してい
ることではない。この「殺人リスト」にある人々は、自宅でベッド
に寝ている間に、あるいは友人または家族と一緒にクルマに乗って
いる間に、整然と並んだ他のすべての行動に従事する間に、殺され
るらしい。さらに危ういことに、前のブッシュ政権のようにオバマ
政権は「戦場」を世界全体と定義する。

この8年から私たちがよくわかっているように、両党の権威主義者
らは、そもそも暗殺の標的はテロリストであるが故に死に値すると
強く言い張ることで、このふるまいを反射的に正当化するに決まっ
ている。しかしながら、実は重要性を持つのは米国政府が彼らをテ
ロリストと非難してきているということだ、権威主義者の気持ちの
持ち方を除けば、それはテロリストであるのと同じことではない。
米国政府によってテロリストだと非難される多数のグアンタナモの
拘留者たちがまったく無実なのが判明してきている。そして拘留者
に対する令状の見直しを提供した連邦判事の大多数が、彼らに対す
る言いがかりを正当化するにはほとんどまったく証拠不十分だと認
めてきている。そしてこの程度まで彼らを釈放するように命じた。
米国政府は「最たる悪人のなかの極悪人」だけが収容所に残ると強
く言い張るとはいえ、そこには拘束される多数の拘留者が含まれる。

政府の告発は本質的に真実だとの傲慢を避けるため、まともな人々
に証拠が義務づけられることはないにしろ、それを必要とする人々
には証明する証拠が山ほどある。そしてこの事例では、彼の名前と
宗教にもかかわらず、どの点から見てもスコット・ブラウンとその
娘たちがそうであるのと同じくらいアメリカ市民であるアンワル・
アウラキには彼がテロリストなのを活発に否定してアメリカの息子
を殺すことなかれとアメリカ政府に懇願している家族がいる。明ら
かに苦悶のアンワル・アル・アウラキの父が、息子はアルカイダの
メンバーではないしテロリストと一緒にイエメン南部に潜伏してい
ないとCNNに語った。

「彼らが息子をどう扱うかが心配です、彼はオサマ・ビンラディン
ではありません、彼らは息子を息子ではない何かに仕立てる必要が
あります」と、アメリカ生まれのイスラム教聖職者アンワル・アル・
アウラキの父、ナセル・アル・アウラキ博士は言った...

「自由を潔く放棄するように、戻るようにと息子を説得するためベ
ストを尽くしますが、彼らは私に時間を与えません、彼らは息子を
殺したがっています。アメリカ政府はどうやって彼らの市民のひと
りを殺せるのでしょうか?これは答える必要のある法律上の問題で
す」と彼は言った。

「時間をくれるなら、息子と何らかの接触を持てますが、問題は彼
らが私に時間を与えてくれないのです」と彼は言った。

何が真実かをわかっているのは誰なのか?政府の言いがかりが真実
で、それに応じて処罰を行うのは当然のことと私たちが決め込む前
に、私たちに「裁判」と称されるものがあるのはなぜか?あるいは、
少なくとも何らかの手続きがあるのはなぜか? マーシー・ホイー
ラーが特に言及するように、過去にアメリカ政府は外国人に対して
のみならず、アメリカ市民に対しても、同様にテロの誤った言いが
かりを繰り返し行ってきている。彼女はこう所見を述べる。「大統
領がアメリカ市民の暗殺のために電話をかけることができるなら、
つながりの薄さなど実際どうでもいいことだろうと思います。」

ロナルド・レーガンによって署名される1981年大統領令は「合
衆国政府によって雇われるかまたは合衆国政府のために行動するな
んびとも、暗殺に従事するかまたは暗殺に従事する陰謀を企てては
ならない」と規定する。ジュネーブ国際協定前、南北戦争の途中で
エイブラハム・リンカーンは戦争を指揮するための原則を表現する
ことをフランシス・リーバーに命じた。それは1863年4月、リ
ンカーンによって署名される一般命令100の中に組み入れられた。
「暗殺」と題される第4節で規定する一部は以下である。

 戦争法は敵対する軍、市民、敵対国の被支配者のいずれにも個々
の所属を布告することを許さない、現代の平和の法律がそのような
故意の法律の保護を奪われることを許すくらいなら今は、無法者が
逮捕者によって裁判なしに殺害されるかもしれないのを許さない、
それどころか、そのような非道を嫌悪する。最も厳格な報復は、な
んであれ権限によって作られるそのような宣言の結果として犯され
る殺人に従事すべきなのだ。文明化された国家は、ぞっとするほど
嫌って、敵の暗殺の見返りの提供を野蛮に退歩すると考える。

そのりっぱな宣言とオバマ政権がしていることを少しでも折り合い
がつくようにできる人がいるだろうか?そして、もっと一般に、殺
したいと思うアメリカ市民の殺人リストを一方的に集めることで、
大統領にはどんな法的根拠が存在するのか?

すべてのことで最も印象的なのは、アフガニスタンで米国が、暗殺
目的で彼らを標的にするために、麻薬密売人またはともかくもタリ
バンと関連しようとしているのではないかと疑う、アフガン市民の
「殺人リスト」を集めていたのが最近明らかにされたことだ。殺人
リストが明らかにされたとき、裁判なしに人々を殺すことは当然与
えられるべき手続きに違反して法の原則をむしばむと、アフガン当
局者らがその場で「猛烈に」異議を唱えた。

反麻薬活動をめざすアフガニスタンの内務副大臣モハマッド・ダウ
ド・ダウド将軍は、麻薬研究室とオピウム(アヘン)の隠れがを破
壊することで最近の彼らの手助けゆえに米国と英国の特殊部隊を賞
賛した。だが、裁判に引き渡す代わりに秘密の証拠に基づく麻薬王
の容疑者を殺すため、外国の軍隊が独断に基づいて行動しようとす
るのが心配だと彼は言った。

「彼らは私たちの法律、私たちの憲法と法的慣例を尊重すべきです」
とダウドは言った。「私たちにはこの人々を私たち自身で逮捕する
責任があります」...

アフガンの前内務大臣アリ・アフマド・ジャライは、長い間、麻薬
密輸業者と提供者を厳重に取り締まるようペンタゴンとそのNATO
同盟国にしきりと促してきた、そしてついに同盟軍がアフガンの反
麻薬活動機関に作戦上の支援を提供することで合意したのがうれし
かったと述べた。だが、外国の軍隊が彼ら自身で密売人を追い詰め
て殺す誘惑を避ける必要があったと彼は言った。

「ここには憲法上の問題があります。有罪を証明されない限り、人
は無罪です」と彼は言った。「もし彼らを殺すか捕獲することに成
り行くとなれば、訴訟手続きの見地から本当に彼らが有罪だとどう
やって証明するのですか?」...

どうやら私たちは、民主主義や法の原則、西洋の正義の基本的指針
について教えるためにアフガニスタンにいる。なのに、アフガン当
局者らはこの無法、彼らの市民の米国政府の独断に基づく法の適正
な過程なしの暗殺、「殺人リスト」に、猛烈に異議を唱える。政府
は法の原則と憲法の誓約について私たちに講義する必要があると。
純然と対比してみると、私たち自身の政府、私たちのメディア、私
たちの市民は、私たち自身の市民に向けられる無法の暗殺、それが
一体全体どうしたのかとまるでなにも不都合を見いだせないようだ。
そしてブッシュ・チェイニーの拘留政策を酷評してもこれを擁護し
たがる人たちのどぎつい問題ーー。告発や法の適正な手続きなしに
米国市民の暗殺を是認するのに、告発や法の適正な手続きなしに外
国人をグアンタナモに投獄することに誰がどう異議を唱えられると
いうのか?

▲ Glenn Greenwald:私は前にニューヨークの憲法と公民権訴訟者
でした。私はニューヨークタイムズ紙の2冊のベストセラー本の
作者です、ブッシュ政権の大統領権力の濫用について批判した
「How Would a Patriot Act」 (May, 2006)と、ブッシュの遺産
を考察する「A Tragic Legacy」(June,2007)です。私の最新本、
2008年4月に出版された「Great American Hypocrites」は、
共和党によって使われるごまかしの選挙戦術と主流派報道機関に
よるプロパガンダを考察します。


♯お知らせ♯

きままなブログを始めました。よりのんきでよりビジュアルな内容に

なっています。こちらもごひいきに。

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