8月3日、日本の新聞はそうでなくても、この日、イギリス、フランス
の主要紙の一面は、警戒レベルを引き上げたブッシュ政権の根拠となっ
た情報が911以前のアルカイダの古い計画だったとのワシントンポス
トの報道を引用してアメリカがしていることに注意を促すものだった。
これをアメリカ以外の国がやったなら、暴動が起きてもおかしくないこ
とではなかったか。国がでっち上げをやっている。アメリカが北朝鮮と
変わらないことをやってしまったように思えて、きわめて気持ちが悪か
った。アメリカの経済学者ポール・クルーグマンがブッシュ政権は「革
命勢力」と書いた。政治が乗っ取られている。まさに「革命が起きてい
る」としか言いようがないのではないか。こんなことをやっているのに
氾濫する情報のなかに、これもまた埋もれてしまう。

▼恐怖政治▼3年前の情報で今ごろ厳戒態勢のニューヨーク
ワシントンポスト紙 03 August 2004

米国土安全保障省が、ワシントンの世界銀行やニューヨーク証券取引所
など、金融関連施設の警戒レベルをオレンジに引き上げた。その根拠と
なった情報は、911テロ以前の古い計画に関するものだったことが判
明。ワシントンポストが取材した複数の情報局関係者によれば、「今の
ところ新しいテロ計画が進行中という情報はない。なんで今になって危
険レベルを上げるのか、さっぱりわからない」ということである。

つまり、ブッシュ政権は、これまでずっと無視し続けてきた各情報局に
山積された過去のテロ計画情報に3年を経過してやっと対応しはじめた
ということだ。 この調子だと、CIAやFBI の引き出しの奥から、埃をか
ぶったアルカイダのテロ計画情報が見つかるたびに、ニューヨークの街
は厳戒態勢になりかねない。

米国土安全保障省のトム・リッジ長官は、実は、米国のテロ対策が全く
ダメな状態であることを自覚して、そのプレッシャーに耐えられないと
弱気になっている。今回のテロ警告の直前(7月30日)、リッジ長官
はブッシュの再選如何に関わらず辞任するつもりであることをうっかり
漏らしている。

ところで、ニューヨークにテロ厳戒態勢を敷いた日は、偶然にもブッシ
ュ再選キャンペーン開始と重なっている。国内のテロ対策はブッシュ再
選の売り文句のひとつであり、911調査委員会最終報告の直後に情報
組織の再編政策をいち早く打ち出すなど、ブッシュは、あたかもテロ対
策に真剣に取り組んでいるかのように振舞っている。そんな時にテロの
警告で厳戒態勢になれば、誰もが次期大統領のテロ政策に注目するとい
うものだ。

今回のニューヨーク厳戒態勢は、トム・リッジ長官が辞任前にブッシュ
に宛てた「お礼の手紙」の意味合いが強いのかもしれない。テロ警告を
出した翌日、リッジは国民に向けて下記のように呼びかけている。
「アメリカらしさを継続しましょう。仕事に行ってください。追って施
行される安全対策があなたを守ってくれるはずです。さあ、仕事に戻り
ましょう」
(イラク戦争を決めたときブッシュが国民に向かって呼びかけた、「さ
あ、国民のみなさんは普通に生活を愉しんで下さい。ショッピングをし
て下さい」と、まるで同じ脳天気ぶりだ)

▼国家の危険。それとも大統領の危難?▼By Andrew Buncombe
03 August 2004 英インディペンデント紙

昨夜、おそらくアルカイダが東海岸の金融機関を攻撃するつもりであり
そのスパイが標的を監視する任務をすでに遂行していると諜報員が警告
してから、アメリカは身を引き締めていた。

パキスタンに集まった情報がこれらの都市にある機関が標的にされてる
ことで一致を見た後、ニューヨークでは警察が通りを封鎖し、ワシント
ンでは国際金融の従業員に追加のセキュリティチェックを全部やるよう
に命じて、ニューアーク、ニュージャージではバリケードと重装備の保
安措置の駐留を加えた。

日曜の夜に国の警戒レベルがオレンジに引き上げられた後、ジョージ・
ブッシュ大統領は「私たちは国が危険な情況にある」と言った。「危険
に立ち向かうためにできることはなんでもしている。この警告は私たち
が直面し続ける脅威を思い出させるための厳粛な注意である」

7月13日の公表されてないパキスタンでのコンピュータ技術者25歳
ムハマド・ナイーム・ノーア・カーン逮捕の結果として集まった情報が
警戒態勢の基盤になっていると当局は言った。申し立てによると、彼は
アルカイダ情報システムを管理した。うわさでは、当局に警戒レベルを
上げさせた、他の情報と組み合わせた証拠書類に基づく警告は、先週金
曜にワシントンに渡された。

2001年9月の攻撃以来、合衆国は非常に多くのテロ警告を出してき
た。ある人々は昨日、政権の最新の警告の範疇に入るものに関し、懐疑
的だった。民主党の元大統領候補者ハワード・ディーンは心配事の多く
が情報へのアクセスなしであることを強調した。「何がそう判断させる
かを知るのが難しい。この決断に導いた情報に、私たち政権外のだれも
アクセスしていない」と彼は言った。

「ブッシュ大統領に都合の悪いことが起きるたびに、テロリズムという
トランプカードで彼がゲームするのが私は気がかりだ」と彼はCNNに告
げた。「彼のキャンペーン全体が、私はあなたがた国民を安全にしてお
くことができる、故にアメリカにとって困難な時期に私に忠実であれ、
そうしてトム・リッジが登場するというばかげた考えに基づく。これが
どれほど現実のことで、どれほど政治的かを知るのは不可能だ、私は、
両方ではないかとにらんでいる」

しかし、米国土安全保障省の長官リッジ氏と他の局員らは、通常の情報
部のおしゃべりよりもっと特定の意味を持つ警戒心を抱かせる情報だっ
たと譲らなかった。カーンの逮捕後、再発見される情報は「貴重な掘り
出し物」だったと彼らは言った。

アルカイダに標的にされている機関にはマンハッタンのニューヨーク証
券取引所とシティグループのビルディング、ワシントンの国際通貨基金
と世界銀行、ニューアークとニュージャージの金融諮問機関が含まれる
と当局は言った。

報告書は昨日、アルカイダのスパイがそういった機関の監視を遂行して
いたと断言し、ニューアークのビルの青写真を持つ容疑者らが発見され
ており、クルマ爆弾かそれに近い攻撃に着手するための試運転が最近、
実行されていたとニュージャージの調査員が言ったのを、ニューヨーク
タイムズが報じた。

ニューヨークとニュージャージでは警察が標的のビルを重装備の保安措
置下に置き、ウオールストリートに至る通りを封鎖して、橋とトンネル
からトラックを締め出した。ブルームバーグ市長とパタキ州知事は、市
の予防措置で自信を見せようとの奮闘で、証券取引所で開始のベルを鳴
らした。そんな虚勢にもかかわらず、びくびくする市場が警戒体制に反
応したとき、石油の価格はほぼ記録的な高さにまで値上がりした。

アメリカが接戦の大統領選の真っ只中にある場合、ことによると、政治
をもてあそぶブッシュ政権を非難する人がいても、驚くにはあたらなか
った。共和党からの批判の可能性を目的として、民主党大統領候補ジョ
ン・ケリーは昨日、ディーン氏のコメントから距離を置く必要があると
感じた。

同時に9月11日の攻撃以来、ガタガタ言うおしゃべりの範疇のものが
根拠と思われる非常に多くの警報を発令している。「ダーティボンバー
:汚い爆弾魔」とか呼ばれてるホセ・パディラの逮捕のように、一面で
は最大限の政治的インパクトを持たせるべく、もくろまれて発表されて
いる。他の警告は、後で正しくなかったことが示される情報に基づいて
いた。

最新の警報発令に関してリッジは、いつ、どこで、どうやってテロリス
トが攻撃するか、諜報機関が非常に重要な詳細を与えなかったことを認
めた。しかしながら当局は、アルカイダのスパイが標的を偵察していて
経路と病院や警察の位置はもちろん、従業員とどうやって接触するかを
探っていたのを情報が示したと言ったのだ。

▼ブッシュの2005年度防衛予算法案承認スピーチ▼
06 August 2004 (一部抜粋)

「私たちの敵は革新的で計略に富んでいる。私たちもそうである。彼ら
はわが国とわが国民を傷つける新たな手だてについて考えるのを絶対に
止めない。私たちも止めない」

今回ブッシュが通した2005年度合衆国防衛予算法案の総額は4千1
75億ドル(約46兆6300億円)、そのうち250億ドル(約2兆
7900億円)がイラクとアフガニスタンに充てられる。まさに80年
代の「強いアメリカ(byレーガン)」政策の再現である。
レーガン時代に戻ったのは防衛予算だけではなかった。現在、米国では
レイオフ率が8. 7%、20歳以上の男女では1140万人が一時解雇
状態だ。これはブッシュのおやじの政権の不景気時期を上回り、80年
代のレーガン政権時代のレイオフ率(9%)と並ぶ悪い記録だった。