■ イラク戦争は違法と2001年にブレアが警告■
インディペンデント紙 02 March 2010
by Michael Savage, Political Correspondent

チルコット審問(イラク独立調査委員会のこと:議長の名を取って
そう呼ばれる)によって差し控えられる秘密文書が、侵攻について
外務省の不安を明らかにする

侵攻は違法になる、「多数の犠牲者」とイラクの崩壊に導きかねな
い、と主張する外務省の有力な官僚の警告に加えて、イラク侵攻は
軍事行動が取られる2年以上前に政権内で議論されたことを、イン
ディペンデント紙は明らかにできる。

ゴードン・ブラウンが侵攻という政府の決定での彼の役割を説明す
るよう求められるイラク審問に出廷するちょうど3日前、結局はト
ニー・ブレアによって支持された政策にある程度まで抵抗する英国
政府の政策が出現する。

2000年の終わりに上級公務員によって作成された秘密の外務省
戦略文書はこの新聞によって入手され、本日初めて公表される。
イラク:将来の戦略文書は好戦的なイラク指導者サダム・フセイン
と交渉する選択肢を考慮する。それはジョン・チルコット卿のイラ
ク審問が発表を辞退してきている欠かせない重要文書のひとつだ。

「政権打倒」の政策は提案されるが、きびしく糾弾される。軍事行
動を取ることの結果についてびくびくおびえた不吉な査定でこう述
べる。「そのような政策は有益な国際的支持を少しも集めません。
成功する表だった攻撃はたぶん国土侵略を含める大規模な軍事行動
を必要とするでしょう。これは多数の人的損害と、ひょっとしたら
サダムによる抑止力かまたは大胆な抵抗の、最後の最後まで戦う極
端な行為の危険を冒すことになります。」

有力な官僚が付け加える。「それはまた違法でもある。これに反し
て、内密の攻撃は成功するようにはとても思えないしイラクをばら
ばらにする危険を冒す、それは明らかにその地域の私たちのもっと
広い利権と相容れないものになる。」2003年3月の侵攻の結果
としてイラクは暴力に身を落とした。100人以上のイギリス軍に
加えて数十万のイラク人が侵略直後の時期に殺された。

文書はまた、サダム・フセインを倒すのに軍隊を使うことはもっぱ
らニューヨークの9.11テロ攻撃後に議論されたとのブレア氏の
主張に疑いを差しはさむ。そしてこの夏、さらなる公開証拠を示す
ため、ブレア氏を再び審問にかけることで審問への圧力を強めるこ
とだろう。

自由民主党の党首ニック・クレッグは、それは英国をイラク戦争へ
持っていくブレア氏の決定に反対して「さらにいっそう有罪を証明
する証拠」だと言った。彼はまた、文書がチルコット審問によって
公開されなかったという事実が、国家機密などにかかわる微妙なデ
ータを明らかにする能力に関し「重大な疑問」を起こさせたと警告
した。政府は機密文書の公表を差し止める権限を保持してきている。
チルコット・チームと英国政府との間で合意した冒頭の定式文は、
異議を唱えられる文書の公表では最終決定権を行政長官ガス・オド
ネル卿に与える。
 
情報自由法を使って文書を確保する要求は最初拒否された。しかし
ながら、インディペンデント紙が内部調査を要求した後、ついに外
務省は米国と他の国々の見解を黒で塗りつぶした編集版を公表する
ことに同意した。「文書の公表は政府をもっと説明できるようにさ
せて信頼を増させる」と外務省は容認した。「大臣やその後の意思
決定に与えられる忠告の質を査定できるという公益がある。」

戦争に頼る決定を批判する者たちは文書に乗じた。「私たちを戦争
に従事させる政府の核心における彼の役割をゴードン・ブラウンが
擁護しようとする数日前、これはイラク侵攻を正当化しようとの試
みに反対して、さらにいっそう有罪を証明する証拠である」とクレ
ッグ氏は言った。「政権交代は違法で私たちの国益に反すると、外
務省は、はっきり忠告されていた。」

ジョージ・W・ブッシュをホワイトハウスに導いた2000年11
月の大統領選より先に、戦略文書は、当時の外務省中東政策の指揮
者William Patey卿によって依頼された。

兵器査察官のイラクへの出入りを許すよう求める1999年の国連
決議は、「瀬戸際でほころびを見せ始めて」おり、「威信を失う」
のはわけない、査察官との協力でサダムを見捨てる、という話だ。
しかしながら、それはサダムを「牽制する(封じ込める)」政策を
勧め、できたらバグダッド政権に押しつけられる制裁を緩めること
を忠告して「イラクの方に向かう私たちの政策目標達成のため最良
の選択肢」を残す。それはこう結論を下す。「この段階で他の代案
はパッとしない」ままであると。

△この記事を掲載したブログ版で、黒く消された問題の文書の画像
を見ることができます。

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■イラク戦争検証 欧州から学ぶべきもの■

イラク開戦から7年ーー。米国と連携した英国は戦争遂行の是非を
めぐる検証を進め、5日にはブラウン首相が証人喚問に臨む。“大義
なき戦争”に向き合おうという姿勢には見習うものが多い。

イラク戦争はブッシュ前米政権が英国と始めたが、大量破壊兵器の
開発や国際テロ組織アルカイダとの関係という疑惑は“幻”だった。
開戦以来の死者は、米軍が中枢同時テロ犠牲者数を上回る4千人を
超え、英国兵士は200人近く、イラク国民に至っては約10万人
にも上る。歴史的汚点だろう。

目下国家再建が進行し、オバマ米政権は米軍撤退にかじを切ったが、
戦争を客観的に総括するほどの余裕はない。

ところが英国は違った。戦争の正当性や占領政策に疑問を持つ世論
や野党の突き上げからにせよ、ブラウン首相が昨年7月、歴史学者
や元外交官ら5人からなる独立調査委員会を設立。政府の機密書類
を精査し、公聴会で政治家、外交官、軍、情報機関幹部を喚問し、
世界の耳目を集めてきた。

「イラクは生物化学兵器を保有し45分以内に攻撃できる」。開戦
前のブレア首相報告だ。ブッシュ政権も「イラクのウラン(核兵器
の燃料)入手を英政府が突き止めた」と断じた。だが公聴会で外務
省元幹部は「その情報は精度の高いものではなかった」、元法務長
官は「開戦の合法性は疑問」と首相に伝えたと証言した。

これに対し、1月末に登場のブレア氏は「フセイン政権の危険性を
放置できなかった。開戦判断に誤りはなかった」と反論。開戦当時、
ナンバー2の財務相だったブラウン首相も5日証言する。

実は復興支援で部隊派遣したオランダがやはり独立調査委員会をつ
くり、同様の検証を先行させ、このほど「イラク戦争への政府の支
持は国連決議に基づかず国際法違反だった」と結論づけている。

日本では自民党小泉政権が開戦を早々と支持、復興支援への自衛隊
派遣をめぐる議論などが国会でなされはしたが、第三者的な委員会
で検証する動きは見られない。

国柄や歴史観の違いは当然あるにせよ、民主主義を標榜(ひょうぼ
う)することは同じである。民主主義は国家のしたことを国民が知
り、省みることができてこそ成立する。日本の地域紛争への対応や
支援は今後も予想される。憲法や国際法を踏まえた検証の不可欠な
ことを欧州は教えているのではないか。

(中日新聞社説 2010年3月5日)


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