■何がチェチェンの女性をそのように危険にするのか?■
ニューヨークタイムズ紙 1April 2010
by ROBERT A. PAPE, LINDSEY O'ROURKE and JENNA McDERMIT

過去2年間、ほぼ毎月、チェチェンの自爆犯が攻撃してきている。
彼らの標的は、ロシアの兵士からチェチェンの警官まで、今週モス
クワの地下鉄で殺された罪のない一般市民まで、なんでもありだ。
自殺するのをいとわない人たちが負わせることができる恐怖を、私
たちはみな経験している。だが、普段の生活に取り組む多数の人々
を殺すため、カラダに爆発物をはりつけて故意に自殺することに、
何が若い女性や男性を追いやるのかを、私たちは本当に理解してい
るのか?彼らをあとまわしにするロシア政府の奮闘とは逆に、チェ
チェン自爆攻撃者は世間一般のステレオタイプに一致しない。何年
もモスクワはチェチェン爆破犯を、その多くがイスラム教を世界の
優位を占める宗教にしたいと思うまったく異質のイスラム過激派と、
ありきたりに描写してきている。しかもなお、多くのロシア人が、
この戦争は世界のテロ戦争の一部だと西側に納得させたがるかもし
れない、誰がチェチェンの自爆犯になるかについて事実はそれとは
違うことを明らかにする。

安全保障とテロリズムに関するシカゴプロジェクトの仕事で、私た
ち3人は、2000年に始まって以降すべてのチェチェン自爆攻撃
(自爆した63人を巻き込む別々の42件のできごと)を分析して
きている。多くのチェチェン分離主義者がイスラム教徒だが、宗教
的動機を公言する自爆犯はほんの少しだ。大多数は男性だが40%
以上が女性だ。外国の自爆犯はチェチェンで前例がなくはないが、
42件で私たちが出生地を確定できる38人がコーカサス地域の出
身だった。何かがチェチェンの自爆犯を駆りたてているが、世界的
なジハード(聖戦)ではまずない。

レバノン、ヨルダン川西岸、イラク、アフガニスタン、スリランカ、
他のところでの私たちのリサーチで発見してきているように、自爆
テロリストの作戦行動はほとんど常に外国の軍事占領に反対する最
後の手段だ。チェチェンは有力なこの事象の実例による説明となる
ものだ。

1990年代、ロシア連邦内の共和国チェチェンが独立を宣言する
のを妨げるため領分に派遣されていた数万のロシア軍を反乱者らが
追い出した。1999年、今度は9万人以上の軍隊を有してロシア
人が戻ると、文書により十分に立証された焦土作戦を遂行して、約
100万の人口から推定3万〜4万の一般市民を殺害した。初めて
ロシア人を駆逐する重要なカギとなる通常のゲリラ戦法と人質を取
ることは、今ではもう反乱者に勝ち目がなかった。新しい戦術が用
いられ、出だしから女性が中心だった。

2000年6月7日、チェチェンの2人の女性Khava Barayevaと
Luiza Magomadovaが爆発物を積んだトラックを運転してチェチ
ェンのAlkhan-Yurtのロシア特殊部隊の建物に突っ込んだ。わずか
2人の兵士が殺されたにとどまるとロシア人は主張したが、2ダー
ス以上の死者というほうがもっともらしいとチェチェンの反乱者は
述べる。

これは最初のチェチェン自爆攻撃で女性自爆犯の多くの利点を示し
た。チェチェンの女性攻撃者があまねくそうであるように、男性が
13人であるのに比べ、彼女たちは大いに効果的な攻撃ごとに平均
21人を殺害する。ことによると、はるかに重要な、彼女たちは男
女一様に、他の者たちを扇動して志を継がせることができた。

ミズ・Barayevaは二人の攻撃前に多くの自爆犯がするように殉教者
ヴィデオを作った。彼女はチェチェン独立のために攻撃していると
ロシアが警告する間に、彼女もまた明らかに男性たちを挑発して名
誉を解する心から同様の犠牲を払わせるつもりで言う強力なメッセ
ージを伝えた。「家にいることで女性たちの役割を盗まないで」と
彼女はチェチェンの男性に嘆願した。これまでのところ、32人の
男性が彼女の求めに応じてきている。

たとえば重要として、ミズ・Barayevaは、「黒い未亡人(black
widows)」運動に影響を与えることで責任を負うとみなされる。
「占領」のために夫や子どもや近親者を亡くしてきている女性たち
が、公平な事の真相のために使命を帯びて自殺した。

合計で15歳から37歳までのチェチェン人女性24人が自爆攻撃
を行ってきている、それには、最も破壊的な90人の死者を招いた
2004年8月の2機の旅客機の調整された爆破と、(ロシア当局
によると)40人近くが殺された月曜の地下鉄爆破が含まれる。

2004年に殺された反乱勢力のリーダー、アブ・アル・ワリドに
よると、爆破犯の動機はロシア軍勢との彼らの経験から直接生じる。
「これらの女性、特に殉教したムジャヒディーン(イスラム戦士)
の妻たちが自分の家で脅迫されている、彼女たちの名誉が脅かされ
ている」と彼はアルジャジーラに登場したヴィデオのなかで説明し
た。「彼女たちは恥をかかされることや占領下で生きることを受け
入れない」と。

そして女性自爆攻撃者にはもうひとつ強みがある。彼女たちは多く
の場合、目立たないで標的まで移動できる。ロシアのニュース雑誌
Kommersant-Vlastによる2003年7月の調査報告は、潜在的な
女性自爆犯がやすやすと世間の怪しみを避けることができたのを見
つけだした。2003年にチェチェン人自爆犯Zarema
Muzhakhoyevaが、モスクワのカフェを爆破しようとしてしくじっ
たわずか数日後、niqabを着用し、黒い肩掛けカバンをしっかりと
胸に抱いてそわそわしたそぶりでふるまう雑誌のジャーナリストの
ひとりは、同じカフェで1度として疑われることなく席につくこと
ができた。ことによると、チェチェンの女性がモスクワの10件の
自爆攻撃のうち8件を実行してきているのは驚くほどのことではな
いのかもしれない。

私たちはまだ月曜の爆破の詳細を学んでいるが、ロシアで大攻撃が
生じていたとの警告があった。今年2度、チェチェンの主要な反乱
勢力の司令官ドク・ウマロフがロシア本土での攻撃を警告するヴィ
デオ声明を発表した。「戦争は遠く離れているとロシア人は考える」
と彼は言った。「血は私たちの町や村に流れるだけでなく、彼らの
町にも流れるだろう... 私たちの軍事作戦はロシア全体を包囲する
ものとなる」と。彼はまた、彼の作戦行動がどのようなイスラム教
のカリフの統治回復にも関係ないこと、チェチェン独立に関係して
いるのを明確にした。「これは私たちの兄弟の土地であり、これら
の土地を解放することは私たちの神聖な義務である。」

あまりにも多くのチェチェン自爆攻撃で、もしかすると人は永続す
る平和の見込みについて懐疑的になるのを容易に許される。それで
も、交戦の歴史に関する精査が、どちらの側にも受け入れられるか
もしれない解決策を示唆する。

チェチェンの自爆作戦行動の軌道が厳格なパターンを明らかにする。
2000年6月から2004年11月までに27件の攻撃、200
7年10月まで攻撃はなく、以降18件。3年間の休止はなにを説
明するのか?

答えは、2つの理由のためにチェチェンで民衆の反乱への支援を失
った。1つは、チェチェンの反乱者がロシアの子ども数百人を殺害
した2004年ベスランの学校の大量殺戮への激しい嫌悪だった。
「すごい痛手が私たちに加えられていてもよかった」と当時、分離
主義者のスポークスマンは言った。「子どもたちを攻撃できたなら
チェチェン人はけだものかモンスターであると世界中の人が考え
る。」2つ目は、戦争で病弊した全住民を首尾よく味方に引き入れ
るため、ロシア人が確固とした決意と集中プログラムを遂行した。
軍事作戦は暗示的に少数の民間人を殺害した。反乱の闘士に恩赦が
与えられて2006年だけでおよそ600のチェチェン分離主義者
が降伏した。

あいにく、ロシア人は度を超した。2007年後半に取りかかるモ
スクワは、ラマザン・カディロフのチェチェン親ロシア政権に、残
存する活動家を撲滅するようせきたてた。それは、目に見えて残酷
な彼ら自身の措置を用いて野心的な報復テロ攻撃を遂行することで
応じた。

反乱者と疑われる者は誘拐され拘束された、その家族の家は焼かれ、
裁判で自白を強要するか強制して証言させるとの広く行きわたった
告発があった。2009年2月、タイムズ紙による調査がカディロ
フ政権下での大量の拷問と処刑の主張を報じた。そして「当局のウ
ソや妨害や目撃者の脅迫によって当局の政策について知っている情
報を隠す、チェチェン政府による奮闘(活動)」を列挙した。もう
ひとつ説明するべき謎がある。ロシアがチェチェンにおけるその軍
事作戦すべてを終えると発表した後、2009年の春、現行のチェ
チェン自爆攻撃のうねりはなぜ力を増したのか?そのわけは、カデ
ィロフ政府の報復テロ措置があまりにも苛酷で耳障りになっていた
ので、中にはモスクワを実際その地域の調停役をする勢力として見
始めていたからだ。

さらに、あざやかな叙述:チェチェン自爆テロは、ロシアによる直
接の軍事占領と親ロシアのチェチェン治安部隊による間接的軍事占
領の両方によって強く動機づけられる。もっと穏やかな2005年
から2007年の政策をもとにことを進めることで、攻撃すべてを
終わらせるものではないにしろ、両方の側が耐えられるレベルまで
かなり暴力を減らすことができた。

なぜならチェチェン分離主義者のニューウェーブはカディロフ大統
領をクレムリンの操り人形と見るからだ、どのような現実的解決も
チェチェンの核となる正当な社会制度を好転させる必要がある。最
初のステップは自由で公正な選挙を行うことだろう。他に、治安部
隊の中で国際的に認められる人道的ふるまいの規格を採用すること
や、チェチェンのイスラム教徒が彼ら自身の資源から利益を得るよ
うに、その地域の石油収益金を等しく分配することが含まれる。

政治的解決がすべての問題を解くことにはならない。だが、外交を
用いて反乱を抑えることがその担保権に入るのを、地下鉄攻撃がき
っとロシアにはっきりわからせる。直接ロシア軍によるにせよ彼ら
の代理によるにせよ、チェチェン人が自分たちは占領下に置かれて
いると感じる限り、暴力の周期はロシア中に大混乱を引き起こし続
けるだろう。

△Robert A. Papeはシカゴ大学の政治学の教授。Lindsey O’Rourke
はそこの博士号を有する学生、Jenna McDermitは人類学を専攻す
る大学生だ。


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