■チョムスキー:イラン問題であやうくなっているもの■
プラウダ(Pravda)29 April 2010
by Noam Chomsky

ドイツの刊行物 Freitagのインタヴューで、ノーム・チョムスキー
が、イスラエルとイランに対する米国の圧力およびその地政学上の
重要性について話をする。「米国の命令に従わなかったのでイラン
は脅威と考えられます。軍事的にこの脅威は不適切です。この国は
何世紀も国境を越えて好戦的にふるまってきていません。イスラエ
ルは米国の承認と支援のゆえに30年間に5回もレバノンを侵略し
ました。イランはなんであれこのようなことはしてきていません」
と彼は言う。

アフガニスタンにさらに多くの軍隊を送っているのに、バラク・オ
バマは2009年にノーベル平和賞を受賞した。約束された「変化」
はどうなったのか?

チョムスキー:私は彼にまったく期待をしなかったためにオバマに
失望しないごく少数のひとりです。彼の選挙戦が始まる前に私はオ
バマの立場と成功の見通しについて書きました。あなたのウェブサ
イトを見れば、これがビル・クリントン流の穏健派民主党員だった
のは私には明白でした。もちろん、希望(hope)と変化(change)
についてたくさんのレトリックはあります。だが、これは何でも書
くことができる白紙の一枚と同様です。ブッシュの最近の動きに絶
望した人々は希望を求めました。しかし、オバマのスピーチの中身
を徹底的に吟味する時間を人に求める根拠がありません。

彼の政府はウラン濃縮計画のためにイランを脅威とみなしました、
ところが一方、インド、パキスタン、イスラエルのような核兵器を
所有する国々は同じ圧力を受けませんでした。この処置の有り様を
あなたはどのように評価しますか?

チョムスキー:米国の命令に従わなかったのでイランは脅威と考え
られます。軍事的にこの脅威は的はずれです。何世紀もこの国は国
境を越えて好戦的に行動しませんでした。米国の支援を求めてアラ
ビア半島の2つの島を侵略したシャーの政府下の70年代に唯一好
戦的行動が生じました。もちろん、誰もイランや他の国が核兵器を
持つのを望みません。この国家が今日いやな政権によって治められ
るのは承知しています。でも、サウジアラビアまたはエジプトのよ
うな米国のパートナーにイランにあてはめると同じレッテルを適用
してください、人権で唯一イランに負けるだけでしょう。イスラエ
ルは米国からの承認と援助のゆえに30年間に5回もレバノンを侵
略しました。イランはそのようなことはなにもしてきていません。

それにもかかわらず、その国は脅威とみなされます...

チョムスキー:そのわけはイランが独自路線に従ってきており、国
際機関のどのような指図にも依存しないからです。ある意味では、
70年代にチリがふるまったと類似して彼らはふるまいました。こ
の国が社会主義者のサルバドール・アジェンデによって治められた
とき、「安定」を生むために米国によって不安定にさせられました。
それは少しも矛盾した行為の問題などではありませんでした。米国
の権威を回復させるため「安定」を維持すること、むりやり「不安
定」にして、アジェンデ政府を倒すことが必要でした。同じ現象が、
いま湾岸地域で生じています。テヘランはアメリカ合衆国の権威に
不服を唱えます。

テヘランにきびしい制裁を課す国際社会のゴールをあなたはどのよ
うに評価しますか?

チョムスキー:国際社会とは、おかしな表現。世界のほとんどの国
は非同盟ブロックに属し、平和目的のためウラニウムを濃縮するイ
ランの権利を強く支援します。それはいわゆる「国際社会」の一部
とはみなされないと、よく公然と反復してきています。米国の命令
に従う国だけがそれに属すのはもちろんです。イランをおどすのは
米国とイスラエルで、この脅迫は真剣に受け止められるに相違あり
ません。

どんな理由で?

チョムスキー:現在イスラエルには何百もの核兵器と発射装置があ
ります。後者の最も危険なものはドイツから来ます。この国は、見
えないも同然のドルフィン原子力潜水艦を提供します。これらは核
ミサイルを装備することができます。そしてイスラエルはこれらの
潜水艦を湾岸に移動させる準備をしています。エジプトの独裁政治
のおかげで、イスラエルの潜水艦はスエズ運河を通過するかもしれ
ませんね。 これがドイツで報道されたかどうか私は知りません、で
も、約2週間前にインド洋のディエゴガルシア島で核兵器のための
基地を建設したとアメリカ海軍が言いました。いわゆる「バンカー
バスター」を含める、核ミサイルを装備した潜水艦はそこに配置さ
れるのでしょう。バンカーバスターは数フィートもの分厚いコンク
リートの壁を貫通できる弾丸です。もっぱらイラン内政干渉(介入)
のために設計されました。著名なイスラエルの軍事歴史家、明白に
保守的な人、マーティン・ヴァン・クレベルド・レヴィは、「侵攻
後、イラン人たちはどのような核兵器も開発してきてないために気
が狂った」とイラク侵攻直後の2003年に書きました。(経験を
積んだ)実際的な見地からみると、侵攻を止める何か他の手立ては
あるのか?なぜ米国は北朝鮮を占領していないのか?なぜなら抑止
力があるからです。繰り返します。誰もイランに核兵器を持って欲
しくはありません、でも、イランが核兵器を使用する見込みは最小
です。米情報機関の調査分析でこれは証明できます。もしイランが
単発の核弾頭を身につけたかったとして、たぶん、その国は甚大な
被害をもたらされるでしょう。そのような運命は、政府の中のイス
ラム教聖職者らの気に入っていることではないはずです。今まで彼
らはどのような自殺衝動も示してきていません。

この一触即発の情況の緊張を除くためEU(欧州連合)になにができ
ますか?

チョムスキー:戦争の危険を除くことができました。最後には署名
するため、EUは核拡散防止条約の最も顕著な非加入国、インド、パ
キスタン、イスラエルに圧力をかけることができました。彼らがイ
ランの核プログラムに抗議した2009年10月、IAEA(国際原子
力機関)は、この国は核拡散防止条約に調印して核システムに国際
査察団が入るのを許可するとの、イスラエルが平然と無視した決議
文を採択しました。ヨーロッパと米国はこの決議を妨げることを話
し合って取りきめました。この決議に留意すべきでないと、オバマ
はただちにイスラエルに知らせました。

冷戦が終わって以降、ヨーロッパがどうなっているかは興味深いで
す。先の数十年のプロパガンダを信じた人々は、NATOが1990
年に解体するものと期待しなければなりませんでした。結局、その
組織は「ロシアの流民の群れ」からヨーロッパを保護するために創
設されたのです。いま彼らは「ロシアの流民の群れ」ではありませ
んが、組織は拡大して、ゴルバチョフにした約束すべてを破ります。
ゴルバチョフは、すなわちNATOは東ヨーロッパの方向に1センチ
足りとも進まないと、ブッシュ大統領とコール首相が言ったことを
信じるほど単純素朴でした。

国際的アナリストの評価では、ゴルバチョフは彼らが言ったすべて
のことを信じました。それはまったく賢明ではありません。今日、
NATOは東エリアに大々的に拡大してきており、世界のエネルギー
システム、パイプラインと通商ルートを支配するというその戦略に
従います。今日、それは世界での、アメリカ合衆国の介入のための
力の誇示です。なぜヨーロッパはそれを受け入れるのか?断固たる
態度を取らずに、まともにアメリカ合衆国を見ないからか?

アメリカ合衆国は軍事超大国であり続けるつもりですが、その経済
は事実上2008年に破綻しました。ウォールストリートを救うの
に数十億ドルが不足していました。中国からのマネーなしには、米
国は破産に加わっていたかもしれません。

チョムスキー:中国マネーについてよく講演があり、この事実から
世界のパワーシフトに関してよく憶測されます。中国は米国を追い
越すことができたか?この質問はイデオロギーの過激主義の表現と
私は考えます。米国は国際舞台の唯一の俳優ではありません。ある
程度まで重要ですが、絶対的ではありません。それぞれの州を支配
する俳優たちは主として経済、銀行と企業です。誰が世界を支配し
て政策を決定するかを、私たちが吟味するなら、世界のパワーとグ
ローバルな労働力のシフトを申し立てるのを控えることでしょう。
中国は極端な例です。彼らの利益にかなう範囲では、国境を越えた
企業と金融機関と州のあいだでこれらの相互作用が生じます。これ
が唯一のパワーシフトですが、それはヘッドラインを少しも提供し
ません。

Original source:
http://www.freitag.de/politik/1013-iran-obama-weltordnung-sanktionen
Translated from the Portuguese version by: Lisa KARPOVA - PRAVDA.Ru


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