イラクはますます燃えている。戦闘が各地で激化する11日から12日
朝までの24時間でイラク全土の死者は172人、負傷者は600人以
上に達したとAP通信は報じている。アルジャジーラは、米軍がナジャフ
にあるイスラム教シーア派の強硬派指導者サドル師の自宅付近をF16
戦闘機で爆撃、一帯で炎が上がっていると伝えた。(朝日新聞8/13)

昨日の新聞には、英BBCが11日夜のニュース番組で放映したフセイン
政権下で核兵器開発の責任者だったジャファル・ディア・ジャファル博
士とのインタヴューの一部が掲載された。「湾岸戦争後の91年、大量
破壊兵器はすべて破棄され、開発は二度と再開されなかった。イラク戦
争が始まった昨年3月の時点で、使用可能な化学兵器や生物兵器も存在
しなかった」と博士は証言。フセイン大統領自らの判断で大量破壊兵器
の追求を断念、関係者に指示を出した。湾岸戦争後の国連の制裁と査察
により、開発を続けるための資源を確保できないと判断したためとみら
れる。ジャファル博士は英国の大学で原子力工学を学び、81年6月、
イスラエル機の攻撃で原子炉を破壊された直後に「抑止力を持つ必要」
を強く感じた大統領の求めで、核開発を率いるようになった。昨年4月
のバグダッド陥落の2日前に彼はシリアに脱出、現在パリに住む。

12日のワシントンポスト紙は、大量破壊兵器の存在を疑わせる情報を
記者が入手して記事にしたものの、一面に掲載しなかった編集幹部の責
任を指摘し、戦争報道や編集のあり方を自己批判する長文の記事を一面
と国際面に掲載した。ニクソン大統領を辞任に追いやったウォーターゲ
ート事件報道でよく知られるボブ・ウッドワード編集局次長は、「開戦
の理由は当てにならないという情報を私たちが持っていることを読者に
警告すべきだった」と語っている。

▼もうひとつ後ろめたいニュース▼

文部科学省の所管公益法人で、税金と電力会社からの補助金で運営する
原子力文化振興財団が、「劣化ウランは安全だ」というパンフレットを
メディア向けに発行していた。
それは「劣化ウラン弾による環境影響」 というタイトルの原子力文化振
興財団がプレス向けに配布する「プレスリリース No.111」6月15
日付。今回はその全編が、劣化ウラン弾は安全なもので、環境への影響
はない。自衛隊員もなにも心配することはないという根拠のない宣伝に
なっている。国際機関などを引き合いに出しながら、「安全」に都合の
よい箇所だけを一方的に選び抜いただけのもので、客観性にも科学性に
も欠けていた。ただ単に劣化ウラン弾を使った米軍を免罪し、これに加
担する日本政府を肯定する内容になっている。
目的は、前書きの中でもはっきりと自衛隊のイラク派兵との関係に触れ
ているが、自衛隊派兵と関連して、劣化ウラン弾が安全だと宣伝するこ
と。こういう形で日本政府が劣化ウラン弾の安全宣伝に乗り出したとい
うことだ。メディア向けということから、メディアが「劣化ウラン弾は
危険」という報道をしないよう牽制する狙いがあることは明白だ。
(詳しくは下記のサイトで確認して下さい)

http://www.jca.apc.org/stopUSwar/DU/no_du_report19.htm

▼イラクの24歳の女性のブログより▼07 August 2004
http://www.geocities.jp/riverbendblog/

ナジャフとサドルシティの連日の事態で、300人以上が亡くなった。
もちろん、亡くなった人たちはみな「反乱軍」と呼ばれている。TVに
映った、アバヤにくるまれて道路の上にごろりと転がされた女性もその
一味ということに違いない。今日は爆発が数回起こり、バグダッドを揺
るがした。政府職員のなかには、明日は仕事に来ないように命令された
者もいる。

まさか、これが国の南部に住むシーア派の人々に約束された再建の試み
の一部だとでも?ナジャフはイラクで最も神聖な町とされている。ここ
には世界中からシーア派の人々が訪れる。なのに、この2日間というも
の、この町に爆弾や砲弾が降り注いだ。ほかでもない、抑圧されたシー
ア派の「救済者」であるアメリカ人によって。じゃあ、ここも「スンニ
・トライアングル」なわけね?道路の上の死骸の数々、死者や死にゆく
者を悼む人々、炎に包まれた建物と、どれもすでにどこかで見たような
気がする。TVには次から次に映像が映し出される。どこもかしこもフ
ァルージャの再現じゃないの。20年たったら、いま掘られているたく
さんのお墓について、いったい誰のせいにされるのかしらね。

私たちは懲りもせずに、何らかの形で非難声明が出るのを待っている。
私自身は、現在政権の座にあるみたいなふりをする、アメリカに選ばれ
た暫定政府をこれっぽっちも信頼していない。けれども、どうしてだか
操り人形のひとり、たとえばアラウィがTVに登場してすべての殺戮を
非難することがあるかもしれないという思いから離れられないでいる。
彼らのうちの誰かが、カメラの前で辞任を告げるとか、少なくとも爆撃
や焼討ちや殺戮にはもううんざりだと言い、その終結を求めるのではな
いかとの思い。バカげた望みだとはわかっているのだけれど。

ところで暫定憲法はどうしちゃったの?いまこそ必要だっていうのに。
私的居住の尊厳は今も侵害され続けているのに、多くの人々が今も不法
に拘束され続け、都市が爆撃され続けているのに。それなのに憲法には
米軍が爆撃したり火をつけてはいけないという規定が、どこを探しても
まったく見当たらない。

好都合にも、シスタ−ニ師はロンドンに行ってしまっている。パウエル
とその他の連中が決定を下すまで、彼の「病気」は回復しないだろう。
彼の仲間のシーア派の人々がナジャフやその他の地域で爆撃され、殺害
されたことについて、シスターニ師が糾弾するのを誰もが待ち望んでい
るというのに、彼は体調を崩したかなにかで倒れ、検査を受けにロンド
ンへ行かなくてはならなくなった。

シスターニ師が重い病気にかかっていると思うと、誰もが不安になる。
もしいま彼に死なれでもしたら、南部にいるシーア派の聖職者たちのあ
いだで権力闘争が始まることになるだろう。

すでにみんなが知ってることでしょうけど、先週、教会が爆撃された。
これには私たちみんながぞっとした。何世紀もというわけじゃないけど
何十年もの間、イラクでは教会とモスクが共存してきた。私たちはキリ
スト教徒の友人たちといっしょにクリスマスとイースターを祝い、彼ら
も私たちといっしょにイードを祝う。私たちはお互いに、「キリスト教
徒」とか「イスラム教徒」とかレッテルを貼りあうことを決してしなか
った。そんなことはほんとにどうでもいいことだった。私たちは隣人で
あり、友人であり、お互いに相手の宗教上の慣習や祝日を尊重しあって
いた。私たちの信仰は多くの点で異なっているし、そのなかには根本的
な違いもあるが、そんなことはまったく問題ではなかった。

キリスト教徒の人々がもはや安全だと感じることができなくなってしま
ったと思うと打ちのめされる。もちろん、現在、私たちの誰もが安全で
ないと感じているのは承知している。けれども、これまではずっと異な
る宗教間に誰もが知ってる安心感があった。結婚式や洗礼式や葬式に参
列するために教会の中に入ったことのあるイラク人は多い。戦争終結以
来、キリスト教徒の人々は痛い目にあわされ続けている。南部だけでな
く、バグダッドや北部の一部においても、住んでる家から追放されると
いうことが起こり続けている。キリスト教徒の多くが国外に脱出しよう
と考えているが、これは莫大な損失になる。イラクには、キリスト教徒
の高名な外科医、大学教授、芸術家、音楽家がいる。これが中東地域で
のイラクのすばらしいところだった。私たちはみんながうまく共存して
いるということで、有名だった。

この一連の爆発を企てた連中は、イスラムにできる限り最悪なイメージ
を与えようとする人々だと私は確信する。これはイスラムとは何の関係
もない。これは問題の一端だ。つまり多くの人々がこの戦争と現在の状
況を十字軍になぞらえて考えていること。「イスラム」が新たな共産主
義になってしまったのだ。これは、アメリカ人を脅えさせ、完全武装し
て「自衛」のために他国を攻撃するように仕向けるための、新たな冷戦
だ。「テロ警報」を発令して、人々を脅えさせ、アラブ人一般、ことに
イスラム教徒を差別するようにさせるのが、最適な方法だ。ちょうど、
この戦争が一般の西欧人やアメリカ人に対する憎悪を生み出すのにおお
いに役立っているように。

私はいつも教会の前を通るのが好きだ。私の住む地域にもすてきな教会
がある。教会の前を通るとき、私はいつも30色は使われているステン
ドグラスの窓を見つめ、なかにいる人たちにきっと無数の色と形が降り
注いでいることに思いをめぐらす。でも最近はここを通るのがつらい。
なぜなら、かつてこの教会へ礼拝に訪れていた人たちの多くが、いなく
なってしまったのを知っているから。彼らはシリアやヨルダンやカナダ
に発ってしまった。傷ついた心と苦しみを抱えて。
(バグダッドバーニングのサイトから全文をお読み下さい)