■外洋での人殺し■カウンターパンチ
2 June 2010 by Dave Lindorff

北朝鮮より悪い

デモで誰かを気絶するまで乱打しておいて「オレの警棒に頭をぶつ
けてきた」と犠牲者を非難する警官のように、イスラエルのベンヤ
ミン・ネタニヤフ首相はガザをめざす平和船団に対するイスラエル
の残虐な軍襲撃の犠牲者をイスラエル兵を攻撃したと非難してきて
いる。イスラエルの国連大使代理はそれ以上に、「国際法に従って
船に乗った兵士を攻撃するためナイフや棍棒や他の武器を使う平和
活動家とはどういう連中か?」と言った。

これを正すとしよう。質問するのはこうだ:「非武装の平和を好む
民間人でいっぱいになった船を襲撃して、まるで戦争地帯の敵軍だ
ったかのように彼らの9人(あるいは19人かもしれない)を皆殺
しにするために、オートマチックの兵器で武装した軍隊を送るとは
どういう国か?」

イスラエルといえども、乱入した船、トルコ船籍のマビ・マルマラ
(Mavi Marmara)号と5隻の船団が国際水域(公海)にいたのを
認める。

乗船していた著名な主流メディアのジャーナリストを含める目撃者
の証言によると、イスラエル政府の最上位の権限に基づいて行動す
るイスラエル国防軍(IDF)海軍奇襲部隊は、ソマリアの海賊のよ
うにふるまった、ウージーをぶっ放してトルコ船に乱入、乗船する
活動家たちが白旗を掲げても射撃し続けた。全米弁護士会の元議長、
マージョリー・コーンや他の法律の権威者によると、この乗船は国
際的な海事法のもとに違法だった。船が民間で乗客が非軍用だった
という事実が伝われば、たとえ船団がイスラエル領海に入っていた
ところで、乗船は平和的に交渉されていてよかった、とにかく、イ
スラエルはこれをすることが必要だったのだ。

緊急性はまったくなかった。船団は沿岸から60マイル以上離れて
いたし、イスラエル海軍には一発も撃たずに船団が陸揚げするのを
阻止するパワーがあった。5隻の船を停止させられるネットがある
のを、そして力づくで牽引するか、舵を不能にするか、物理的に行
く手をはばむかのどれかで、マビ・マルマラを停止させることがで
きたもっとデカい海軍の船があるのをイスラエルは認める。

全米公共ラジオ(NPR)は、すさまじい襲撃の著しく嫌悪を抱かせ
る報道のなかで、それを「しくじった急襲」と言及した。6月1日
火曜、ニューヨークタイムズ紙はニュース記事のなかで、「作戦は
ひどく失敗してしまったようだ」と、起因なしに事実として報じた。
けれども、これは「しくじった」行動、あるいは、「ひどく失敗し
た」行動などではなかった。イスラエルの攻撃と用いたすさまじい
手段はいずれも明らかに意図したもので、4年間の違法なイスラエ
ルの封鎖によって(そしてほぼ一年半前のイスラエル侵略のおかげ
で)飢餓療法をせっつかれてきている監禁されたガザの全住民を支
援しようとする人々へのメッセージである必要があった。

船団が船荷を届けるのを止めるためにこれを始める必要はなかった
故に、イスラエルは明らかに暴力的対決を望んだのだ。乗船した船
の何者かが金属パイプを使ってイスラエル国防軍(IDF)の襲撃者
らに抵抗を用立てたので暴力は正当化されるとのイスラエルの主張
はバカげている。イスラエルは、あまりにも長いあいだ、石を投げ
るパレスチナ人相手に戦車とウージー銃の不公平で釣り合いが取れ
ていない戦いをしてきているので、どうやら残りの世界が見るとこ
ろそれは殺人的傾向のある暴漢であるのを、もはや認めもしないら
しい。イスラエル特殊部隊は明らかに、パイプや棒またはナイフで
もそれを振り回す、経験を積んでいない攻撃者から武器を取り上げ
る訓練を積んでいる(空手で鍛える私の16歳の息子はその対処が
できる)。

実体は私たちが社会ののけ者を論じていること、国際法と基本的人
権(非イスラエル人が関係する)の尊重では、北朝鮮よりましとい
うのではない。たぶんもっと悪い。少なくとも北朝鮮は韓国軍の船
に向けて魚雷を発射する。イスラエル国防軍は、かなり年配のホロ
コーストの生存者、外国の国会議員、幼い子どもたちを含める、民
間人平和活動家でいっぱいの船を攻撃した。

記者を閉ざすイスラエルの軍事基地で拘束された平和活動家たちが
外部との連絡を絶たれたままの間に、デタラメなBPの油田のように
イスラエルはプロパガンダを流したててきている、そして船団が禁
制品(ある記事ではボールベアリングとぱちんことある)を運んで
いたとの欺瞞的な言い分を作り上げようとする。そのようにバカバ
カしい断定が真実だったにしても(このボケが)、襲撃でのイスラ
エルの行動を正当化するのはまず無理だ。さらにそのような「禁制
品」が数千トンの救済物資を運ぶ船で見つかったスピードが、偽情
報かまたは、IDFの乗船部隊かまたは船団が航海に出る前にモサド
のスパイによって何かが計画されたことを示す(トルコ政府は船積
みの間に武器がないことを確実にするためカーゴを綿密に検査した
と言う)。

今回のイスラエル急襲は、世界におけるイスラエルの立場の完ぺき
なる破綻を確かにする。トルコの国民と船員を殺害してトルコ船籍
の船の権利を侵害することでイスラエルはモスリム世界で唯一本当
の味方との関係を永久にダメにしてきている。つい最近トルコは、
シリアのそうではないかと疑われる原子炉施設を攻撃するのに自国
の領空を使うのを実際イスラエルに認めていた。また、昨年のガザ
への野蛮な侵略の当然の結果としてなる、イスラエルのパレスチナ
政策への国民の支持がすでに急に下がっていた米国との関係にも甚
大な打撃を与えてきている。

アメリカの政治指導者どもは、強力な親イスラエルロビー、AIPAC
(アメリカイスラエル公共問題委員会)を疎遠にするのをなんとか
回避しようと、今でもおたおたしている。襲撃を眼前に突き付けら
れたとき、ノーベル平和賞受賞者のオバマ大統領は、人命の損失に
「深い遺憾」を表明し、事件の「事実と状況すべて」の(イスラエ
ルによる)調査を求める程度にしか、自分を進ませることができな
かった。そのように軟弱で公平なコメントは容認できないし、ます
ます国民感情と気脈を通じるいつもの手腕を見せないようになって
きている。実のところ、大部分の米メディアの今回や他のイスラエ
ルの行動の報道に恥知らずにも親イスラエルの観点を見せられるの
に、ユダヤ系アメリカ人を含める多くのアメリカ人が、イスラエル
政策を支持するのはますます難しいと感じている。

昨日、妻と私は親しいユダヤ人の友人宅でディナーを食べた。他に
3組のユダヤ人カップルがいて、よくイスラエルに行く2組がこの
夏イスラエルに小旅行を計画していることに触れた。この夜の間中、
イスラエル急襲の言及はまったくなかった。まるで私たち全員が動
物園でトラの公開を見ているのにみんながウサギの話をしているよ
うなものだった。他の3組の客は、誰も私や私の政治的立場、さら
に私がユダヤ人ではないという事実を熟知していなかった。私たち
の友人は何も言わなかった。もし何か言ったら大混乱が起きるのを
私は明瞭にわかっていた。とはいえ、そこにいたユダヤ系アメリカ
人全員が明らかに、互いに相容れない見解の相違となることで、彼
ら自身のなかでも攻撃は一触即発の問題なのを十分に理解していた。

イスラエル奇襲部隊を船に降下させたあのヘリコプターがアメリカ
製だったことに言及されなければならない。イスラエルの恐るべき
軍のほとんどがUSA製かまたはUSAによって支給される。コーン弁
護士が書き留めるように、実際、第二次世界大戦以降、イスラエル
は米国の軍事支援の最大の受取人なのだ。米国で世間のイスラエル
支持が低下し続ければ、こうした軍事支援をやめよとの圧力が増す
ことだろう。すでに、それがアメリカ兵士の不必要な死をもたらし
ていると言って、米軍の上官の多くがアメリカのイスラエル軍に対
する無条件の後援と外交政策を批判している。アメリカ人は、多く
のユダヤ系アメリカ人でさえ、ユダヤ国家についてますます批判的
になってきている。民族統一主義(イレデンティズモ=併合をはか
ろうとする運動)、イスラエルというアパルトヘイト(人種差別)
宗教国家はやけっぱちの袋小路(dead-end road)に向かって進ん
でいる。

△デーヴ・リンドルフ(Dave Lindorff)はフィラデルフィアを拠点
とするジャーナリストでコラムニスト。
http://www.thiscantbehappening.netでコラムを書く。
彼の最新の著書は「The Case for impeachment」(St. Martin's
Press 2006年)、ペーパーバック版も入手できる。
彼への連絡は: dlindorff@mindspring.com

Murder on the High Seas by Dave Lindorff
http://www.counterpunch.org/lindorff06022010.html


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