■イスラエル対イラン:戦争の恐れ■Open Democracy
11 June 2010 by Paul Rogers

イランは全世界の猛攻撃の中心にある:新たな制裁によって標的に
され、ワシントンによって容疑をかけられ、ブラジルとトルコによ
って擁護される。けれども、イランの核計画を取り巻くややこしい
駆け引きが、アメリカ合衆国の中ではなくイスラエルの中で下した
決定により終わりを迎えるのはあり得る話だ。

イランが国際的駆け引きの中心点に復帰してきている、しかも徹底
的に。ガザ行きの支援小船団に対するイスラエルの突撃による重大
局面から一週間、2010年6月9日、国連安全保障理事会は論議
される核のスケジュールをめぐってテヘランの政権にさらなる制裁
区分を負わせる決議を採択した。イランの国連大使から本国のアフ
マデネジャドまで、答弁は独特に勇ましい。

2010年6月12日、イランの論争となっている大統領選でのア
フマデネジャドの勝利の記念週間、国内事情では不当な干渉として
みなすものに抵抗し持ちこたえるために、イランの指導者の地位は
いつものように決然としている。

だがこれは、とりわけアメリカ合衆国、総じて欧米とイラン間の切
りがない対決の繰り返しの中で、ありきたりの挿話的事件というに
は余りある。テヘラン・ワシントンの対立化は相変わらず全世界の
政争の主な不完全のひとつにとどまるが、最近の局面における2つ
の追加構成要素が、今までよりますます複雑でもあり危険でもある
ものに作りかえる。

・締め付けの縦続

イランとの商売に新たな制限を負わせる安全保障理事会決議1929
は、テヘランに対して強硬路線をとるため、国際社会の決意のシグ
ナルとしてワシントンによって歓迎された。実体はもっとさえない。
会議の常任理事国内のくだくだしい交渉手続きのあとに、票決して
よいとなる前にロシアと中国の懸念の便宜を図るため、決議の中身
はひどくがっかりするものだ。

それでもなお、これは、彼らの領域と世界中に影響を与える重要な
2つの非常任理事国、トルコとブラジルによって妨害された。この
2つの国のリーダー、エルドアン首相とルラ大統領は、2010年
5月17日に危機緩和を試みてウラン交換取引に同意した。これは、
「多極的世界」でより顕著な役回りを演じる両国の意欲を反映し、
より直接にイランをめぐる重大局面のエスカレーションの実現性と
いう彼らの強度の懸念を反映する。

トルコの一般人9人が殺されたマビ・マルマラ号強襲の前後とイス
ラエルに対して政府が採ってきている少なからず批判的な立場、ト
ルコの精力的で大胆な局地的外交が中東の至る所にトルコの新しい
横顔を割り当ててきている。もっと保守的な方針をたどる有力なア
ラブ列国、とりわけ、ムバラクのエジプトに対する異議申し入れが
歴然だ。

制裁論争は徐々に展開する地域的力学のほんの一面だ。それ自体で、
新たな措置はほぼ壊滅寸前のイラン経済にほとんど影響を与えない
し、アフマデネジャドの地位に脅威となるものを少しも引き起こさ
ない。制裁はそれどころか、西側諸国のいじめを理解する彼の政権
の反抗をたきつけることで逆効果となるかもしれない。アフマデネ
ジャドのその有効性が問題になっている選挙に引き続いて街中の抗
議発生から一年、引き続き国内の異議抑圧に勤しむ収拾のつかない
状態は、最新の制裁を「傲慢」な政策の一部と描写することにより、
国内の覚悟ができた支持者を手に入れることができる。

けれども、制裁一括提案の3つの側面とその外交的背景にはイラン
にとって言外の意味がある。第一は、早期に承諾を与えてきていた
S-300対空・対ミサイルシステムを、いまロシアはイランに与えそ
うもない。主に旧式のイランの空の防衛システムは長距離のS-300
システムを手に入れることで大きな軍事上の利益を得ることになり、
密約の終焉はきっとテヘランにとって重要な損失になるはずだ。

第二は、公式のイランのメディア筋によると、テヘランがこの際、
IAEA(国際原子力機関)との関係を改めるかもしれないということ
だ。ここにある強力な指摘は、イラン政府がイランの原子力施設へ
のIAEAの接近を制限するだろうということ。この事態の冷静な理論
的根拠は、国連安全保障理事会がイランにさらなる制裁を決意する
として、それどころか同時にブラジル・トルコ・イラン取引が売り
に出ていたとき、なぜイランが国連と進めねばならないのか?だ。

第三の側面は、ワシントンからの報告によると、2007年12月
ジョージ・W・ブッシュが大統領職の間に出した国家情報機関評価
(NIE)の中で念入りに仕上げられるイランの核の野望に対して、
バラク・オバマ政権が立場を変える覚悟をしていることだ。

そのNIE査定「イラン:核志向と資格」は、イランの民事上の原子
力計画は確かにどんどん開発していたが、特定の兵器システムを手
がける業務は2003年に大部分中止していたと結論づけた。現在
進行中のブリーフィングは、2007年の報告をじかに反論するも
のでないとはいえ、今度のNIEが核誘因の建設といった重大事に関
して実用的な研究計画をイランが進めていると判定するのを匂わす。

この3つの要因の組合わせは結局、イランに対する緊急の締め付け
になる。同時に、米国の対イラン軍事行動のどのような現実の見込
みも予告するものでない。2009年3月の年頭のあいさつに象徴
される、在職初年度のバラク・オバマのイラン対象のすそ野を広げ
る活動は、ほとんど行っていない。だが、彼の政権はそれにもかか
わらず、協議する解決をリードするテヘランとの対話に優先権を与
えると言い張る。

だが、いくらアメリカ合衆国に何より疑いもなく当てはまっても、
イスラエルには通用しない。

・北部に対しての意図

局地的な戦略上の眺望の構成要素が不確実だとすれば、イランに対
するイスラエルの計画と意図は不可欠だ。イランの核とミサイル複
合体に基づく近い将来の襲撃に向けてイスラエルが動いていると、
どのような確信をもっても言えるはずがない。言えるのは、現在の
ネタニヤフ政府の(そしてイスラエルの政略的範囲の至る所すごい
範囲に共有の)固守する見解は、イランの核兵器取得はどんな犠牲
を払っても封じなければならないイスラエルにとって実在の脅威に
相当するというものだ。

2008年11月、セービンフォーラム(Sabin forum)での重要
なあいさつで、ネタニヤフはイスラエルに対する戦略上の3大課題
の輪郭を描いた。彼の見解では、それはイランの核の意欲とイラン
からのミサイル、ガザのハマスとレバノンのヒズボラ、そして正当
防衛に属するイスラエルの権利の全面的に広まる国際的な否認だ。

2010年5月31日マビ・マルマラ号への攻撃は、最後までいわ
ばこれらの脅威への反応だった。この成り行きをめぐる危機は大変
なメディアの注目をこうむってきている。注目の範囲には、最近の
もっと重要な展開、レバノンにスカッドミサイルを配備というのと、
ヒズボラに対する大規模襲撃の詳細なイスラエル軍事計画、その両
方のイスラエルにおける目新しい情報が入る。

2006年7月ー8月の失敗した戦争以降、イスラエル防衛軍
(IDF)は戦略と駆け引きを根本的に再考してきている。IDFはもっ
と強烈なヒズボラとの天下分け目の戦争を期待しており、今にもし
ようと準備する。

現時点においては、そんな戦争の計画が「だしぬけ」に開始される
とは予想しないが、むしろ挑発、イランとの重大局面、または全く
の軍事上の誤算から起きるかもしれない。これは「知られていない
と心得ている」にもかかわらず、正式に提案された行動の委細は詳
細に引き合いに出されるに値する:

「...ヒズボラを後援するイラン人とシリア人との新しい戦闘は、国
の至るところの味方の兵器庫、司令中枢、商業資産と地盤に対する
徹底した強襲だと分かるだろう。国民のインフラ、完全な海上封鎖
と橋、ハイウェイ、シリアとのレバノン国境づたいに他の密輸ルー
トに対する攻撃もこれに含まれる。その間に陸軍は、この前の戦争
でイスラエル旅団が遅まきながら妨害したが取り損なったリタニ河
(Litani River)のかなり先に残忍な強奪を拡大する。挙げ句の果て、
ハマスが実行支配するガザ地区のみで果たす、一種の目標の殺害を
イスラエルは考慮に入れることになる。」

2006年戦争で足踏み状態までイスラエルと戦ったヒズボラ活動
グループは現在、ハリーリーが率いるベイルート政府の仲間に加わ
り協力する。3期目のハリーリーの内閣はヒズボラの国会議員だ。
IDFの立案者は、ヒズボラを制御するレバノン政府の失態の点から、
これを国内の政党政治の妥協、長びいた恨みのある戦争後の膠着状
態の結果とみなす。彼らはレバノン軍も含めるレバノンの国民的財
産が次に正当化する攻撃目標であるとの結論を得る。

すでに多方面にわたる兵器にヒズボラはスカッドミサイルを加えて
いて、反撃するのが困難なレバノン北部にそれを展開するつもりで
あるかも知れないとイスラエルは主張する。主張は正しいかもしれ
ないし正しくないかもしれない。けれども、射程の短い兵器の蓄え
をヒズボラが大いに増やしてきている証拠はある、そしてイラン人
の味方が堅実に用途の広い手堅い燃料を補給する中距離弾道ミサイ
ルを開発してきている、それはイスラエルの深い所にまで達するこ
とができ、国家の一部を動じる状態にさせる。

・最後の勝負

レバノンにおけるイスラエルの決定的な戦争の段取りは、断固とし
て平穏であることに反抗する妥協しない相手への圧倒的な武力の実
演を唯一の安全に至る道筋とみなす、いわばコアな軍事的展望だ。
そのような兵器使用の対決の後先、強力な抑止力が必要になる。

イスラエルの副指揮官、ベンヤミン・ガンツ(Benjamin Gantz)
陸軍少将は、この思考内に珍しく意味深長な洞察を提供する。「訓
練されたイラン人と北部からの資金を調達された脅威を片づける、
極度のきびしさのひと試合を繰り返し必要とすることもある。目的
は、戦闘と戦闘とのあいだの比較的平静の期間を引延ばすことにあ
る。」との彼の警告をジャーナルは言い換える。

ガンツ陸軍少将はあの時ただちに引用される。

「イスラエルは長引いた交戦状態のピークと一緒に存在できない。
従って、私たちはそれらを程よいレベルに下げる必要がある、防御
的なシールドの余波でテロを追い込んだやり方みたいにだ。それが、
私たちが片づけるまで、長引いた非常事態局面下で国民がそこそこ
生きるのを可能にする方法だ。その後に、私たちは最初からやり直
す。」「その後平穏があるか私は疑わしく思うが、少なくとも、ピ
ークとピークの合間を伸ばすことができる... 軍事上の消耗のため
に、あくまで、いっそう悪い結果を引き起こすそれぞれ新たな繰り
返しの状況を私たちは作り出す。しかも自然に桁はずれの戦争抑止
力を生ぜしめる。」

イスラエルの副指揮官は、ほら、イスラエルの安全保障の窮地をば
らした。イスラエルは本質的に陸路と海上による、いかなる本格的
軍事攻撃にも損なわれることはないが、1991年にサダム・フセ
インのイラクによるスカッドミサイル発射、ロケット攻撃を経験で
知る。2006年にはヒズボラによって数百発のロケット弾が発射
された。そして2005年イスラエル軍の撤退以降、ガザからぎこ
ちない仕掛け弾が発射されもする。1973年10月の贖罪の日・
ラマダン戦争以降、イスラエルは目下のところ、非常に不安定な形
態を耐えているという結果になる。

ネタニヤフ政府とイスラエル軍のほとんどの権力機構は、目下のと
ころ平和を不可能とし、周期的に敵に強力な効果を撃ちまくる要塞
であることで、イスラエルは安全でいられるとする。この考え方に
はたくさんの危険がある。だが、その論理(必然性)は明白でもあ
る。まもなくの次の戦争の現実のリスクがあり、これは、イランと
ヒズボラ両方に対する2重の戦争となるだろう。


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