■ガーディアン紙よりもリベラルとされる、
イギリスの「the New Statesman 」誌に掲載された
ジョン・ピルジャーの記事より。
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=40&ItemID=5169

▼ 口にできないテロリズムの源 by John Pilger 22 March 2004

アメリカ政府と緊密な同盟関係にある各国が攻撃を予告されている。
だが、これは西洋の帝国とその強欲な十字軍、覇権に対する長い闘争
の最終段階だ。今日、異なっているのは弱者が強者を攻撃する方法を
身につけたということで、5万5千人のイラク人が殺された植民地テ
ロリズムは、「私たち」を報復に晒している。
この危険の多くの源はイスラエルにある。中東において、西洋の帝国
が創り、西洋の帝国を保護することになったシオニスト国家は、中東
地域でイスラム国家をすべて合わせたよりも大きな不満と恐怖を引き
起こしている。インターネットで、「palestine monitor」を読んで
もらいたい。この痛ましいサイトは、占領されたパレスチナで毎週毎
週、今月もまた翌月も繰り返される、マドリードの列車爆弾の恐怖を
記録している。この果てることのない流血を1面に掲載している西洋
の新聞はない。ましてその犠牲者を悼むものなど皆無である。一方、
責任ある基準で測れば、どう見てもテロリスト組織であるイスラエル
軍は西洋では守られ、報われている。
ブレア政権は、イスラエルに対して大量の兵器やテロ装備を売ること
を秘密裏に認めてきた。足枷や電気ショック・ベルト、化学兵器・生
物兵器の薬剤などである。国連創設以来、イスラエルほど国連決議を
無視している国はないということにはおかまいなしにだ。昨年10月、
国連総会でヨルダン川西岸の中心を貫いてイスラエルが作った防護壁
について144 対4で非難決議が採択された。この壁はパレスチナの
水の大部分を供給している帯水層を含めて、農耕に最も適した土地を
組み込んでいる。
イスラエルは、いつも通りに、世界を無視した。
イスラエルは米国の中東政策の番犬である。元CIAのふたりのアナ
リストは、「ユダヤ教とキリスト教原理主義の2つの流れが中東を再
構築するという巨大な帝国的計画のアジェンダにぴたりとはまった。
そして莫大な石油資源に手が届き、大統領と副大統領が石油に巨大な
投資をしている、幸運な偶然によってさらに強化された」経緯につい
て語っている。
ブッシュ政権を動かしているネオコンは全員、テル・アヴィヴのシャ
ロン率いるリクード政府やワシントンのシオニスト・ロビーと緊密な
関係にある。最近までシオニストグループがペンタゴン(米国防総省)
内部で独自の情報機関を運営していた。これはOSPとして知られ、国
防総省次官のダグラス・フェイスによって監督されていた。フェイス
は過激なシオニストで、パレスチナ人との和平交渉にはことごとく反
対という人物だ。ブレアにもたらされたイラクの大量破壊兵器につい
ての噂話のほとんどがこのOSPからのもので、その情報の根源はたい
ていイスラエルであった。

http://www.palestinemonitor.org/

▲ラムズフェルド国防長官を中心とする政権上層部が国防総省内に作
ったOSP「特殊作戦室」は、チェイニーの保護のもと、CIA が入手し
た生の情報を独自に解釈して、公式の行政手続きを踏むことなく、議
会のチェックもなしに、ホワイトハウスに直接強い影響力を及ぼす、
いわば「影の政府」と言ってもいい存在だった。
信頼できない情報をふるい落とすのが任務の報告官は、チェイニーら
タカ派の圧力を受けて荒唐無稽なものも削除しなくなった。国務省情
報部門の幹部職員は、「すべてが異常だった。国防長官が巨大な諜報
局を思いのままにしていた」と述べる。
また、OSPはシャロン首相の執務室内に設けられた非公式情報部門と
緊密な関係を結んだ。外国人が通常の手続きでは入れない国防総省に
イスラエル人は、フェイスの招きにより出入りが許された。
(ガーディアン紙 17 July 2003 )

■自国で政治弾圧やテロの危機に遭遇している作家を迎え入れる避難
都市ネットワークを作り、言論と表現の自由を守るために1994年に創
設された「国際作家会議」の代表団が2002年3月、パレスチナとイス
ラエルを訪れた。この平和使節団を率いたフランス人作家、クリステ
ィアン・サルモンの報告は次のように始まる。

▼自治領の全廃 by Christian Salmon

ユーゴ紛争当時、建築家のボグダン・ボグダノヴィッチはバルカン諸
都市の破壊を言い表すのに、「都市の抹殺」という新語を造った。パ
レスチナに来て、最初に打ちのめされるのは、土地・領土に対して振
るわれた暴力だ。見渡す限り、屋根を吹き飛ばされた建物の残骸、大
きくえぐられた丘、なぎ倒された木ばかりだ。ずたずたに引き裂かれ
た風景。計画的に準備されたと思われる暴力により、手がかりさえ留
めない。精力的で巧妙な暴力。土地をなめ尽くす暴力である。

人類史上最も美しい風景の上に、醜悪なコンクリートとアスファルト
が広がる。丘の斜面は入植者の出入りを守るために築かれたバイパス
道路で切り裂かれる。その周辺では家屋が破壊され、オリーヴの木が
引き抜かれ、オレンジの畑が丸刈りにされている。すべては視界をよ
くするために。沿道の至るところで出くわすブルドーザーも、進行中
の戦争においては、戦車に劣らぬ戦略的意義を持ったものに見える。
これほど無害な土木機械に私がこれほどの無言の暴力を感じたことは
いまだかつてない。

ここで進行していることには、国家の積極介入の手が感じられる。過
去を白紙にしてしまおうとする手だ。風景とは、記号と目印のある空
間であり、歴史の所在を読み取ることのできる1ページである。
ここで進行しているのは、ふたつの国家の創設ではない。風景の粉砕
であり解体。領土の廃絶。ボスニアではそれが「記憶の抹殺」と呼ば
れた。

この地は千年単位の歴史の糸によって織りなされ、その地層は次々に
去来する様々な文化、様々な人間集団が残した堆積から形成されてい
る。畑やオリーヴの木々に至るまで、その風景そのものが人類の遺産
の一部だ。この遺産が危機に瀕している。このまま消滅するのを見過
ごしていいだろうか。

このほど、攻撃ヘリやF16 爆撃機のミサイルで破壊された公共施設の
リストが欧州委員会によって発表された。対象は EU および加盟国が
出資した社会基盤施設に限定されている。このリストは強烈で、事態
をおのずと物語っている。そこには何の脈略もない。ガザの港と国際
空港、ラマラのラジオ局「パレスチナの声」、ベツレヘムのインター
コンチネンタルホテル、法医学研究所、それに地域の社会基盤施設だ。
学校、住宅、下水道、ゴミ処理場だけではない。ジェニンでは平和協
力プロジェクトの事務局、他にも再植林地、中央統計局、灌漑施設な
どなどだ。総額 1729 万ユーロにも上る17件の社会基盤施設である。
このすべてが、テロリストの巣窟だったなどと、一体、誰が信じよう
か。 (ル・モンド・ディプロマティーク May 2002)