◇イスラエルのための戦争はもうけっこう
800ポンドのゴリラに抵抗する人々
dissident voice by Jean Bricmont and Diana Johnstone
13 September 2013

この10日間は、もしかすると中東の終わりのない戦争から離れる
歴史的な分岐点の始まりが見えていた。世界の大多数の人々に協調
してアメリカ合衆国の世論がシリアへのアメリカの軍事介入をはっ
きり拒絶した。

これが全面的で長続きする戦争からの方向転換でなかったなら、ア
メリカを戦争にせきたててきた社会的勢力を必要として、はっきり
あからさまに拒絶されるまできっとそうし続けるというのが、より
優勢な認識だ。

最近、ワシントンを熟知するアメリカの友人が、シリア戦争に狩り
たてることに関する限り、アメリカの政策を指示するのがイスラエ
ルであることを「誰もが知っている」と私たちに語った。戦争に反
対する人々がなぜそれを声に出して言わないのか、アメリカ国民が
それを知れば戦争への支持が急落するだろうにとそのとき私たちは
言い返した。当然のことながら私たちにはその答えがわかっていた。
彼らは知っていることすべてを言うのを恐れる、もしも親イスラエ
ル・ロビー(圧力団体)を非難すれば、メディアで反ユダヤ主義の
烙印を押され、キャリアをだいなしにされるからだ。

(中略)

私たちは議会に立候補する必要がないので、その大いにデリケート
な問題を徹底的に目をこらして見るのに遠慮はない。まず、親イス
ラエル・ロビーの重要な役割について証拠を見直してみる、それか
ら幾らかの反論を検討する。

証拠としては、アメリカとイスラエルの新聞雑誌から最近のヘッド
ラインの一部を引用するのできっと十分だろう。

最初にイスラエルのタイムズ(必ずしも反シオニスト新聞ではない)
によると、「シリアに対するアメリカの立場ではイスラエル諜報機
関が中心とみなされる。」 
次にハーアレツ紙では、「AIPACはシリア実行をせきたてるために
何百人ものロビイストを配置する。」
または、U.S.News and World Reportでは、「議会のシリア議論で
親イスラエル・ロビーが流れを変えようと努める。」
ブルームバーグによると、「ユダヤ人団体としてオバマの新発見の
味方、アデルソンがシリア空爆を支持する。」オバマの最悪の敵が
彼の盟友になり、ユダヤ人団体がして欲しいことをすることになっ
ている。ラビまでもがダンスに加わる。イスラエルのタイムズによ
ると、「アメリカのラビらがシリアについてオバマを支持するよう
議会をせきたてる。」

圧力の陰に隠れる論理の一部をニューヨークタイムズが説明した。
「影響力のある親イスラエル圧力団体AIPACは、すでにアサド氏の
政府に対する軍事行動を一気に遂行するため働いている、そしても
しもシリアが化学兵器使用へのアメリカの報いを免れれば、これに
勇気づけられイランが将来イスラエルを攻撃するかもしれないこと
を恐れると当局者らは言っている。…他の当局者のようにホワイト
ハウスの戦略を論ずることで名前を明かされるのを断った当局者は、
AIPACを"一室にいる800ポンドのゴリラ"と呼んだ、そして、"も
しもホワイトハウスが破滅的な化学兵器使用に対してこのレッドラ
インを守らせることができないとなれば、我々は面倒なことになる"
と、議会の盟友らは伝えなければならなくなると述べた。

さらにおもしろいことに、M.J.ローゼンバーグによると、記事のこ
の部分はニューヨークタイムズによって削除された、これはロビー
団体がむしろ控えめに振る舞うことのほうを好むとの事実に一致し
ている。

さて今から反論:

実のところ、戦争をせきたてるイスラエル・ロビー以外の影響力は
ある。サウジアラビアやトルコのような一部の近隣諸国が彼ら自身
の理由からシリアを破壊したがっているのもまた事実だ。しかし彼
らにはとうていイスラエル・ロビーというアメリカへの政治的影響
力はない。もしもサウジの王子どもがアメリカの政治家数人を堕落
させようとして金を使うなら、アメリカの国内事情への外国勢力に
よる干渉として簡単に非難される可能性がある。だが、すばらしい
見え透いた口実というルールのせいで、イスラエルの影響に対して
同様の非難が上がることはあり得ない。そのような影響のどんな言
及も、存在しない"ユダヤ人支配力"に対する典型的な反ユダヤの中
傷としてただちに非難されることになる。完ぺきにわかりきったイ
スラエル・ロビーの公然の活動に対する言及でさえ、"陰謀説"を人
に押しつけようとすることにたとえられるかもしれない。

しかし私たちの友人の多くは、戦争がことごとく経済的利権によっ
て駆りたてられると強調する。有害な大資本家どもがシリアのガス
を開発するかまたはガスパイプラインのためにシリア領域を使うか、
シリア経済を外国の投資に開放したいと思う故に、この最新の戦争
は遂行されるのではないのかと。

(中略)

資本家(大金持ち)が金儲けのために戦争を望んでいると思う人た
ちはどのような大企業の取締役会も監視することに時間を費やすべ
きだ。資本家はカオスではなく安定性を必要とする、そして最近の
戦争はさらなるカオスをもたらすだけである。アメリカとのあいだ
に和睦がある現在、アメリカの資本家は中国とベトナムで金持ちに
なっている、それは交戦中には可能ではなかった。彼らが資源を略
奪するために戦争を必要とするという議論に関しては、現在アメリ
カがイラクから石油を買っていること、中国もまたそうであること
に気づくかもしれないが、中国は高くつく戦争で身を滅ぼす必要は
なかった。イラクのように、イランまたはシリアは申し分なく彼ら
の資源を売ってくれるだろう。そしてそのような交易のじゃまをす
るのがアメリカによって負わされる政治的な禁輸である。リビアの
場合、"石油のための戦争"という命題に関しては、最近ガーディア
ン紙が「油田とターミナルを封鎖し、正常レベルの10分の1まで
産出量を抑えて経済的災難の脅威となる武装集団のせいでカダフィ
を追い出して以降、リビアは最も危機的瞬間に向かい合っている」
と報じた。イラクはどうかといえば、イラク戦争は単にネオコンの
せいだった、そして石油会社は戦争を始めることを何ら望んでいな
かったことを、「紛れもない陰謀(The Transparent Cabal):ネ
オコンのアジェンダ、中東の戦争、イスラエルの国益」の中で
Stephen Sniegoskiが説明している。それどころか、AIPACがやっ
ているように、"石油圧力団体"が戦争に賛成票を投じるよう国会議
員をせきたてるために代理人を送った証拠はない。

戦争に関して最も断固とした対抗勢力の多くが政治範囲の右派で見
つかることを人はどう説明するのか?特に、ティーパーティ、ロン・
ポール、パット・ブキャナン、ジャスティン・レイモンドと
antiwar.com、ポール・クレイグ・ロバーツは打ちのめされたシリ
アで資本家がもうけるすばらしい利益を予見しないのか?

戦争を通して金儲けできたのは昔の話、大部分の資本家は平和な状
況でもっと確実に儲けられることを理解してきているようだ。その
国の資源を買うために、または経済に投資するか私たちの製品を売
るために、国を征服する必要はない。大部分の国は、実際、合法的
な交易を熱望している。

他方では、巨大な軍産複合体(MIC)が戦争から得をすると論じら
れかねない。MICは、軍の予算の活力のもとを維持するために戦争
を必要とするのではないのか?問題は複雑だ。MICはとりわけ、さ
まざまな誇大に宣伝された戦争の脅威、冷戦の間の最も顕著なソヴ
ィエトの脅威から得をする、冷戦はペンタゴンのおかげで殺到する
評価と契約を保存した。しかし、結果的に戦争に悪評をもたらすこ
とにつながるアフガニスタンやイラクのこんな長くてぶざまに繕っ
た戦争は、経済的にバカ高くて巨大なアメリカ軍が必要か疑問が起
こった。MICはシリアの新たな戦争を必要としない。多くの軍の将
校がシリア攻撃を開始することに公然と反対した。

単なる"脅威"からではない最近のアメリカの戦争から直接もうける
大企業は極めて少ない。財界の実力者グループはとりわけ大建設会
社、ベクテル、ハリバートンとその子会社で、ディック・チェイニ
ー(副大統領)といった当局者とのコネのおかげで海外で米軍基地
を建設する契約や、時にはアメリカ空軍によって破壊されたインフ
ラを再建する契約を勝ち得る。これは実質的にたいてい少しも合衆
国またはアメリカ資本主義の"利益"でない、アメリカの納税者の金
を再循環するのに等しい。そのうえ、これらの建設会社はメジャー
なアメリカ企業と比べビッグではない。これらの不当利益者は決し
て戦争の正当化を装うことができない、彼らは戦闘を餌にする単な
る貧欲なハゲワシだ。

(中略)

しかしながら、MIC(軍産複合体)の永続化を正当化することに振
り向ける"シンクタンク(頭脳集団)"と呼ばれる知的産業活動がワ
シントンで起こった。それは潜在的"脅威"を突きとめることを専門
とする。何年にもわたりこれらのシンクタンクはハイム・サバン(ブ
ルッキングス研究所のサバンセンター創設者)のようなイスラエル
の億万長者の後援者の影響をますます受けてきている。そんな途方
もない軍事力を命じるアメリカに対する深刻な脅威は実質的にはな
いも同然だから、中東における"アメリカの利権への脅威"と申し立
てられたものはアメリカに対する脅威として仮定上のイスラエルへ
の脅威を借用することで捏造される。イランが実例その一である。

(中略)

まるで争いのどたんばであるかのようにロシアと中国を取り巻く米
軍基地と軍事演習で、実際上一種の世界征服に等しい侵略的なグル
ーバル外交政策を推進するアメリカ外交政策の主流派セクターがあ
る。だが真相は、この好戦的な政策の最も活発な擁護者はブッシュ
の大統領任期をイラク戦争にせきたてたアメリカ新世紀プロジェク
ト(the Project for the New American Century)、親イスラエル
のネオコンで、現在、外交政策イニシアチブとしてオバマをシリア
戦争に向かってせきたてている。アメリカとイスラエルの利益はま
ったく同じ、アメリカの世界支配はイスラエルにとってためになる、
または必要でさえあるというのが、彼らの全般的な道筋だ。そんな
イスラエルとの一体化はモスリム世界くまなくアメリカ合衆国が強
烈に嫌われる原因になっている、長い目で見るとそれはアメリカの
ためにならない。

ことによると、戦争を始めるにあたり本当のアメリカの利益または
具体的でも経済的でも利益を見つけるのが非常に難しいために過去
10年に強調された事柄は、たとえば、"R2P(the responsibility to
protect)"というキャッチーなブランド名で引き立つよう見せる"保
護する責任"といった"モラル"の問題と申し立てられるものにシフト
してきている。戦争を始めるにつき最強の擁護者は、R2Pまたは"犠
牲者の正義"または真偽のほどが疑わしい"大量虐殺予防策"とやらに
基づいて説き伏せるさまざまな人道主義の帝国主義者またはリベラ
ルな干渉主義者である。

人道的干渉主義と対イスラエル支援とのあいだには大きな重なり合
う部分がある。フランスでは"介入する権利"のコンセプトを最初に
発明し、推進したベルナール・クシュネルが「イスラエルに及ぶ国
はない。ホロコーストという恐ろしい大虐殺の結果として生じる」
と最近のインタヴューで述べた。従ってイスラエルを保護するのは
"私たちの義務"。バーナード・ヘンリー・レヴィはフランス政府に
リビアとの戦争を始めるよう促した、そしてイスラエルの利権のた
めにユダヤ人として職務を果たしていたことを秘密にしない。彼は
いまシリア空爆の最も猛々しいまっさきの擁護者だ。フランス、ア
メリカ両国の人道的介入の擁護者は、過去のホロコーストと憶測上
の仮説、将来イスラエルを攻撃することにより全国民自殺の危険を
冒すとのまったく根拠のないイランによる究極の目的に言及するこ
とでシリア空爆を正当化する。

アメリカではこれらイスラエル・ロビーの懸念に、サマンサ・パワ
ー、マデリン・オルブライト、ふたりのアブラモウイッツ(アメリ
カのホロコースト記念博物館で"大量虐殺防止活動"を担当している
父モートンと息子マイケル)といった影響力のある顧問によりイデ
オロギーと制度的表現を与えられる。"私たち"はアウシュビッツに
対して十分迅速に介入しなかったので、他の起こりうる虐殺を防ぐ
ために軍事介入する義務があるという論拠が繰り返し使われている。

9月6日、クリーブランドユダヤ人ニュースが、シリアを空爆する
オバマの計画を支持するよう議会にせっつく"主要なラビ"からの手
紙を公表した。「私たちはホロコースト生存者と難民の子孫として
あなた方に書いています、先祖は強制収容所で毒ガスにやられまし
た」と手紙にはある。爆撃を承認することで、「議会には数千人の
命を救う力量があります…」とラビらは言った。

(中略)

イスラエルの戦争目的がアサドを転覆することだとするのは確かで
はない。イスラエルの戦略への手がかりは9月5日ニューヨークタ
イムズ紙の記事によって提供される。「イスラエルの大敵、イラン
の核の野望を停止するためにオバマ氏のかろうじての "レッドライ
ン"を守らせることが欠かせないとイスラエルの当局者は一貫して
論拠する。もっと遠回しに、イスラエルはいよいよ、少なくとも現
時点でシリアの2年半の内戦の最善の成果は成果なしだと論じてき
ている。人道的見方からはともかく恐ろしいとなる現状も、エルサ
レムにとってはアサド氏の政府と彼のイランの後援者かまたはスン
ニ派ジハードによってますます支配される強くなる反乱グループか
どちらの勝利よりましに思われる。」

(中略)

イスラエルの利権とみなすことに仕える熱意で、AIPACとその関係
団体は名誉にかかわる問題に関して策略を常に実行する。ロビー団
体はアメリカの利権をわざと不正確に述べる、さらに常に代弁する
と主張するユダヤ民族の長期的利益を無視さえする。いかに強力で
一目置かれるとはいえ、大多数に人気のない戦争を押しつけようと
するのは少数派には純然たる狂気のさたである。イスラエルが常に
総括してユダヤ民族を代弁すると主張するうえは、もしもアメリカ
人の大半が"イスラエルを守る"ために容認できない代価を払わせら
れるならば、遅かれ早かれユダヤ人を非難する意見が持ち上がるだ
ろう。現に、さまざまな陰謀説からあからさまなユダヤ人バッシン
グまで、すでに匿名で書かれたものをちょっと調べればソーシャル
メディアで読むことができる。

ひとまとめにした罪悪感の概念に完全に反対している私たちは、そ
のような結果を避けたいと願っている。断じて反ユダヤ主義ではな
い私たちはすべての人間グループ内の多様性を無視する"同一性の
ポリティクス"形態すべてを嘆き悲しむ。私たちは単に、道義的お
どしにかけられることなく親イスラエル・ロビーに公然と"ノー"と
言えるようにしたいだけだ。これはユダヤ人の宗教ともアイデンテ
ィティとも文化とも関係ない、それは全くの政治である。他人の戦
争に引き込まれることを拒否する私たちの権利を主張する。無限に
繰り返される戦争は"ユダヤ人のためにならない"し、また他の誰の
ためにもならないと私たちは考える。私たちは、相互理解、外交、
妥協、軍縮での奮闘・行動に貢献したい。要するに、人間の狂気の
さたの海洋を漂流する"人間の正気(分別)という脆弱な舟"を強く
することだ。さもなければ、その狂気のさた(愚かさ)が私たちす
べてを溺死させるかもしれない。

今のところ、戦争の脅威は回避、または少なくとも"延期"されてい
る。イラクとリビアもまた大量破壊兵器をあきらめはしたが後に攻
撃されたことを忘れないようにしよう。シリアは化学兵器を放棄す
るらしいが、反乱軍がそのような武器を持ち続けない保証はない、
イスラエルが持ち続けない保証はもっと少ない。おそらく始まる前
に戦争を止めた史上初となる戦争に反対する世間一般の動員は熱烈
だったが、短命かもしれない。戦争計画を中途妨害された人たちは
主導権を取り戻すために新たな作戦的行動に達するものと考えられ
る。この何日かは人々が目を覚まして戦争はノーと言うときに到達
しうるものをちらり見た。外交を、はったりをかけることにまさる
ようにする継続的努力、そして相互軍備縮小を、永久に続く戦争に
まさるようにする継続的努力にとって、これはインスピレーション
に違いない。もしも人々が本当に平和を望むなら、それは可能にで
きる。

△ Jean Bricmontはベルギーのルーヴァン大学で物理学を教えてい
る。彼は「Humanitarian Imperialism(人道的帝国主義)」の著者。
Diana Johnstoneは「Fool's Crusade:ユーゴスラヴィア、NATO、
西側の妄想」の著者。彼女はパリ在住。

http://dissidentvoice.org/2013/09/no-more-war-for-israel/

 


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