今回のファルージャ掃討作戦について暫定政府には「悪い」か、「より
悪い」か、「最悪」の選択しかなかったとあるイラク人記者は言う。
アラウィが選択したのはこのままファルージャを無政府状態にする最悪
を避けるための「悪い」選択だというのだ。
掃討作戦が軍事的に成功してもイラクの治安状況が安定するという楽観
的見方はほとんどない。10月初め、イラク軍と米軍は武装勢力が支配
するサマラを攻略。暫定政府はその成功を吹聴したが、作戦終了後も、
サマラではテロが相次いでいる。これは武装勢力の壊滅がいかに難しい
かを象徴するケースである。
米軍がファルージャでの大規模掃討作戦を米大統領選後に設定したこと
が、この作戦の重大さを端的に示す。イラク戦争開戦以来、最大級の市
街戦が予想されるなかで、反米武装勢力の制圧に失敗すれば、イラク情
勢はさらに泥沼化する。その負担は二期目のブッシュ大統領にかかって
くる。
米軍は4月にもファルージャで強力な掃討作戦を行った。それが反米武
装勢力の壊滅に至らなかったのは、多数の民間人を巻き添えにしている
との非難が激しく、退却せざるを得なかったからだ。
4月の作戦と大きく異なるのは、イラク暫定政府のアラウィの命令によ
って作戦を実施する形をとってる点だ。民間人の巻き添え死傷者が多数
発生しても、今回はアラウィが弁護することになる。(毎日新聞)

AP通信によると、攻撃開始を前に米海兵隊の幹部は68年のベトナム
戦争テト攻勢で激しい戦闘の舞台になった都市フエを引き合いに出し、
「諸君は歴史を作ろうとしている。これは新たなフエだ」と約2500
人の海兵隊員を激励した。

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▼イラクでゼリーを押し潰す▼ by 元国連査察官スコット・リッター
アルジャジーラ 09 November 2004

反米イラク人戦士からファルージャの街を奪う、ほぼ予想された米軍主
導の攻撃が始まった。時々動きがとれないとはいえ抵抗勢力との遭遇は
予想をはるかに下回った。アラウィ暫定政権に忠実なイラク軍に随行さ
れ、米海兵隊員と兵士らがファルージャの核心に入っていく。

戦闘はあと数日間続くと思われるが、ファルージャがまもなく米軍に制
圧され、2005年1月に予定された現行の国政選挙に欠かせない秩序
の樹立を容易にすると米軍司令官らは自信に満ちている。

だが、そうなるのか?アメリカ軍の計画立案者らは目下戦っている数百
人規模ではなく、ファルージャのストリートで何千というイラク人抵抗
戦士に直面すると思った。彼らはアブ・ムサブ・アル・ザルカウイと彼
の外国のイスラム戦闘員ネットワークが現れると思った。そして現在ま
でその組織の上層部指導者らはまだ見つかっていない。アメリカ軍がフ
ァルージャに波のように押し寄せるとイラク戦士は残りのイラク全土で
激しい攻撃を開始している。

抵抗戦士に対する決定的な戦いでちっとも敵と対決しない。ますますア
メリカ人たちはファルージャを圧迫し、さらに多くの暴力をどこかよそ
で爆発させるように思える。それはゼリーを押し潰すのに類似するむな
しい軽薄な行動の行使。問題を理解しようともがけばもがくほど、ます
ます十分な理解は逃げ去っていく。

おまけにそれを遂行する米陸軍と海兵隊の裏をかくこの種の戦争は、ま
さしくイラク抵抗勢力によって構想された苦闘なのである。彼らは世界
最強の軍隊と互いに向き合って抵抗できないこと、そして勝ちを見込め
ないことを十分理解する。

米軍指導部が日々低下するイラクの情況を支配しようと苦心する一方で
米国の侵略に反対する戦士たちは、侵略一日目から所を得ているゲーム
プランを実行し続ける。

今からさかのぼること2003年5月にブッシュ大統領は早まって「任
務完了」を宣言した。アメリカ人にとってこれはイラクの主要戦闘作戦
は終わりを迎えた、私たちは戦争に勝ったということを意味する。だが
イラク人にとってこれは他のことを意味する。イラクではイラク政府が
公式に降服した「ミズーリーモーメント」は一度もなかった。事実は、
サダム・フセイン政府は最後まで降服しなかった、そして反米抵抗勢力
の姿をとって今日のイラクでそれはなお目立って感じられる。

アメリカで私たちが勝利宣言していたとはいえ、サダム政権は戦争を計
画していた。最初の戦闘は2003年3月と4月に戦われた。レジスタ
ンスに象徴される決定的でない交戦だ。イラク人はレジスタンスの原則
を確立するまで十分に戦ったが、彼らの資源を浪費するには不十分だっ
た。

2003年5月以降、レジスタンスはその規模と洗練度で大きく成長し
ている。ある人はこれを合衆国の戦後侵略政策の無能力にあるとする。
これがレジスタンスを容易にする要因だったのは確かとはいえ、今日の
イラクで発生していることが、いわばバース党員をまた権力の座に復帰
させることが目的のうまく考えられた計画の一部との事実は残る。そし
てブッシュ政権の方針は彼らを利するように行動している。

国連と他の国際支援組織に対し実行されたテロ攻撃は、合衆国主導の侵
略に国際的な顔を呈するためブッシュ政権が塗り替えた外国の関与のな
ごりをイラクから追い出すのに成功した。後に続いたカオスとアナーキ
ー状態のなかで合衆国は秩序を元に戻す試みで仕方なくますます武力を
行使する。そしてますます武力を使い、ますますレジスタンスを招き、
それに応える兵力をますます必要とする、キャッチ22事態(難局)を
創り出す。

暴力の連鎖はレジスタンスを力づけ、依然としてイラク政府と米軍の支
配の外にあるイラクの巨大エリアを不安定にする。ナジャフとサドルシ
ティとサマラの明確な態度の作戦は、これらの都市に目を見張るものを
ほとんどもたらさなかった。

今日、イラクの戦士たちは自由に軍事行動をとる、そして避けられない
圧制的な合衆国の反応を引き寄せる目的で死と破壊の連続を続ける。フ
ァルージャは最重要な適例だ。米軍がイラクの抵抗勢力に致命的な打撃
を食らわすのはうまくいきそうにないとはいえ、ファルージャの均一化
した巨大エリアでうまくいっている。そして村を救う目的で村を破壊し
なければならなかったヴェトナム時代の嘆きを思い出させる。

ファルージャからの映像はイラクの反米感情を力づけるだけだ。そして
アメリカ人に対する目下の戦闘で失われた「殉教者」がまた大量に死ぬ
たびに、その10倍の新たな戦士をリクルートする機会を反米戦士たち
に与える。

ファルージャの戦闘は新生イラク軍をためす場所になっている。それよ
りも不運ないやなやつであると証明するかもしれない。現実にはイラク
軍などいない。何万と軍隊にリクルートされ、今日唯一応戦態勢にある
隊は、第36歩兵大隊のみだ。

この大隊はファルージャ、ナジャフ、サマラでアメリカ軍と一緒に戦っ
てきた。誰から聞いても戦闘ぶりは上々である。だが圧倒的なアメリカ
軍の支援と並んで軍事行動を取るときこの大隊は唯一優勢でいることが
できる。独力でなんとかやっていかされると抵抗勢力に徹底的に負かさ
れることになる。もっと悪いことに理想の新生イラク軍のシンボルとし
て位置するこの大隊が、実際には新生イラク軍があるべき姿のアンチテ
ーゼなのだ。

ブッシュ政権が人種と宗教の線引きに沿って作り上げた軍隊のフォーメ
ーションを廃止しているとはいえ、第36歩兵大隊が実際にはどういう
ものか、明確に理解されるべきである。それは残りのイラク軍がイラク
人抵抗勢力との戦いをになうことができないか、それに反対を表明して
いるせいで、米軍によって再訓練されたクルド人民兵なのである。

ファルージャの戦闘はイラクのレジスタンスの眼前に突きつけることに
向けられる米軍の誤った戦略ばかりか、アラウィ暫定政権の無意味さを
もさらけだしている。アラウィ暫定政権はこれまでは資格のない無力な
箱なのだ。

ファルージャはイラク戦争のとても長くてひどい局面の始まりなのだろ
う。どんなに費用をかけてもぜひとも勝利に達したい、一新されたブッ
シュ政権の命令でアメリカ軍を、泥沼にはまり込んでついにアメリカ占
領軍を駆逐する目的で死と破壊の泥沼にイラク人を陥らせるのをいとわ
ないイラクの抵抗勢力と戦わせる。

これは合衆国には勝てない戦争だ。そしてアラウィ政権は生き残ること
ができない。不幸にして最新の世論調査がアメリカ人の70%がイラク
戦争を支持すると示すうえは、アメリカ国内の政治力学が変わるまで、
そして世論の流れを反戦に変えるまで猛威を振るうことになる戦争だ。

いたましくもこれは双方の側にさらに多数の死者を出すことになるあと
何年も続くイラクでの戦闘を意味する。そして不可解にイラク国民が苦
しむことを意味し、中東全体の予測できない不安定性を意味する。

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▼ヴェトナム、フエの恥とファルージャ▼
英ガーディアン紙(読者からの手紙の欄)10 November 2004

フエの大失敗とあとに続けた殺戮を米軍は本当に恥どころでないと考え
るのか?(人のケツを蹴って後世に名を残す、ヴェトナム式だと米軍は
主張した。11/09)

今では私たちのほぼ全員がフエを米国のヴェトナム関与の終わりの始ま
りとみなす。私はファルージャを米軍と英軍のイラクへの関与の終わり
の始まりとみなすつもりだ。私たちが目撃しようとしている殺戮に耐え
られないだろう。

私の国がこの殺戮で助けになるなんて非常に恥ずかしく思う。そして、
まもなくやってくる第一次第二次大戦の戦死者を記念する14日の日曜
日、退役軍人のチャリティに寄付をする前に初めてよく考えてみること
になる。私たちの名でトニー・ブレアが花輪を捧げるのを見たくない。
栄誉ある死に無礼なふるまいだ。

Christopher Leadbeater(Ashford, Kent)

ガーディアン紙の社説(ひどいファルージャ11/09)はイラク暫定政府
が非常時の権限を悪用することに正しく懸念を表明する。「他のあまた
のアラブ政権のように、例のゆゆしきバース党員時代には正規のことだ
ったろうに」と。ことによるとアラウィは、私たちイギリス政府の例に
ならっているのかもしれない。イギリスもまた西側ヨーロッパの中でた
だひとり「国家の非常事態」をうけて特別な権限を悪用してきている。
外国人を告発や裁判なしに刑務所に送ると、911後宣言した。外国人
はテロリストかもしれぬと、全く内務大臣が考えることを基礎として。
それは刑務所に収監される人々に公平な裁判をもたせる国内法と国際法
のなかで、政府の人権義務を軽減しようともくろむあくどい作り話であ
る。

今度の決議で英下院がくつがえすのにしくじると、議会は必要に迫られ
ることになる。イラクと「他の多くのアラブ政権」を含め、世界に課す
る大憲章(国王権乱用の制限や人民の権利と自由を保証した英国憲法の
基礎)のなんたる恥ずべき例か!

Brian Barder (Diplomatic Service 1965-94), London