▼地球税という考え方▼仏ルモンド紙より抜粋 January 07 2005

UNDF国連開発計画の言葉によれば、「世界的に見て、基本的サービ
スを確保するための資金が年間800億ドル不足している」。飲み水、
屋根、まともな食物、初等教育、必須の治療といったことだ。この金額
は、ブッシュ大統領が最近、議会に対してイラク戦争の資金として要求
した増額予算とまさに一致する。

必要とされているものの大きさに比べれば、気前のよい人道支援がいか
に素晴らしく、また必要なものであるといっても、長期的な解決にはな
らないことがわかる。感情は政策に代わるものではない。惨事が起きる
たびに、最貧状態にある人々の構造的な苦境が、まるで虫眼鏡で見るか
のように映し出される。世界の富の不平等で不公正な配分によって日々
犠牲になっている人たちだ。もし本当に、天変地異の破壊的な影響を減
らしたいと望むなら、恒久的な解決策を考える方向に向かわなければな
らない。そして世界中の人々すべてのために、補償的な再分配を促進し
なければならない。

今回のような緊急事態に立ち向かうために、また端的にもっと公正な世
界を築いていくために、国際付加価値税のようなものを創設する必要が
増しているように思われる。外為市場への課税(トービン税)、武器売
却税、再生不能エネルギーへの消費税といった「地球税」のアイディア
が、ブラジルのルーラ大統領、チリのラゴス大統領、フランスのシラク
大統領とスペインのサパテロ首相によって、2004年9月に国連にて
提議されている。この実に望ましいイニシアティブは、100カ国以上
つまり世界の国の半数以上から支持されるようになった。こうした国際
連帯税の即時実施を主張するために、インド洋の惨事が世界中に呼び起
こした感情を支えとしない理由があるだろうか。

(本稿は1月7日にウェブサイトに掲載されたものです)
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凹ここ最近の気になるニュース凹
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ニューヨークタイムズ紙は、衛星TV局アルジャジーラの報道を非難す
る米ブッシュ政権の圧力にたまりかねて、同局に財政支援しているカタ
ール政府が売却計画を加速化していると伝えた。

ニューヨークタイムズ紙によると、チェイニー副大統領、ラムズフェル
ド国防長官、ライス国務長官らブッシュ政権高官は、カタール政府に対
し、アルジャジーラの「扇動的で誤解を招く」イラク報道について「怒
りを込めて」問題にしてきた。

ただし、ブッシュ政権が中東に「自由と民主主義」を迫るなか、アルジ
ャジーラに公然と圧力を加える姿勢には、「欺瞞的」だとする批判があ
ることを米政府当局者も認めている。ニューヨークタイムズ紙は、「中
東で最も信頼されているテレビ局を沈黙させようとする米政府の姿勢は
全く欺瞞的」だとするアラブ外交官の言葉を伝えている。

▼アルジャジーラ、カタール政府が売却へ 米企業に売却も▼
毎日新聞 2/02 2005

カイロ:ドーハからの報道によると、カタールの衛星テレビ「アルジャ
ジーラ」のスポークスマンは31日、カタール政府が同テレビの売却先
を探していることを明らかにした。

AFP通信によると、スポークスマンのジハッド・バルート氏は「民営
化のためであり、数カ月以内に決定がなされる」と語り、国内外の民間
企業が売却先になるとの見通しを示した。

米メディアによると、米政府がカタール政府に対し、アルジャジーラを
米企業に売却するよう圧力をかけたとされるが、バルート氏はこれを否
定し、「民営化は常に検討されていた。民営化がアルジャジーラの報道
の方針に影響を与えることはない」と語った。一部では売却先として、
米フォックス・ニュース・テレビ(!)があがっている。

アルジャジーラは96年にカタール政府の出資で設立。アラブ社会で初
めて、各国政府を自由に批判する放送局として注目された。しかし、イ
ラク戦争の報道などを巡っては、アルジャジーラがイスラム過激派を擁
護する偏向報道を行っているとして米政府やイラク暫定政府が同テレビ
を批判。暫定政府は同テレビのバグダッド事務所閉鎖を命じている。

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▼日本と朝鮮が拉致で衝突するなかDNA問題が火花▼
イギリスの権威ある科学雑誌 Nature Feb.03 2005
by David Cyranoski

日本の科学捜査をリードする法医学専門家の一人である帝京大学教授の
吉井富夫は、彼が5つのサンプルからDNAを摘出できた理由はいくつ
かあると言っている。その理由のなかには、彼が通常のPCRが一度だ
けDNAを増幅するのに対し2度増幅するネストしたPCRという高度
に敏感なプロセスを用いたことや、彼のオリジナルサンプルが他の実験
室のものよりよい状態にあった可能性などが含まれている。彼は「各自
が独自のDNAサンプル処理法をもっている。標準化はない」と言って
いる。

日本では火葬された遺骨に対する法医学研究はほとんどされてこなかっ
た。そして吉井教授を含め、ほとんどの専門家はDNAが1200℃の
火葬を生き残ることはありえないと考えてきた。吉井教授は「まったく
驚いた」と述べている。しかしDNAはそのような高熱にほんの短時間
さらされただけなら生き残ることができた。信州大学の法医学専門家の
福島弘文は、「温度だけからは何も判断できない」と言っている。

それでもなお、火葬された遺骨に関して過去に経験のない吉井教授は彼
のテストが決定的なものでないこと、またサンプルが汚染された可能性
もあることを認めている。彼は「骨は何でも吸収できる堅いスポンジの
ようなものである。それを扱っていた誰かの汗や脂が染みこめば、どう
処置しようとそれらを除去することは不可能である」と言っている。

(日本政府は帝京大法医学研究室の鑑定に基づき、遺骨は、横田めぐみ
さんのものではないと断定している)

▲DNAは細胞内の核やミトコンドリアにあり、4種類の塩基が並ぶ二
重らせん構造になっている。この塩基配列の個人差を調べることで個人
識別が可能になる。

DNA鑑定の捜査利用は89年に始まり、昨年は1159件の事件で使
われた。警察庁によると、最新の鑑定方法による個人識別の確度は、同
じ型を持つのが約1億8000万人に1人になっているという。

微量の体液や毛根があればDNA鑑定は可能で、骨については焼かれず
に硬い状態で残っていれば確実にできる。

ただ、DNAは炭素を含んだ有機化合物で、高熱を加えれば分解する。
法医学の専門家は、「一般的に火葬後の骨は鑑定がきわめて難しい。D
NAは酸と腐敗に弱い。酸性土壌に長く埋葬されていたとしたら、その
可能性はさらに低くなる」と話す。

▲事務次官会見記録 (平成17年2月7日17:05〜 於:本省会見室)

(中略)

問:北朝鮮は日本の鑑定結果を非難しているわけですが、これに科学的
に反論する準備や目処は。

事務次官:別に目処が立っているわけではありませんが、これは関係各
省庁において、所謂「備忘録」というものについて、十分科学的な、あ
るいは専門的な見地から精査しており、やがてきちんとした形で反論は
するつもりです。結論は非常にはっきりしているのですが。しかし、個
々の様々な点について、先方が言っていることには我々として納得し得
ないことがほとんどですから、それらについて反論しようと思っていま
す。

問:「NATURE」という科学雑誌の最近の号に、その鑑定をした吉井教
授に取材した記事が載っており、その話によると、吉井教授は実験途中
に油分や汗等が入ってしまう可能性は否定できないという趣旨の発言や
実験によって、ミトコンドリア、DNA分を取り去ったので、更に検証
する分は残っていないと言っていますが、こうしたことは政府としても
知っているのでしょうか。

事務次官:その部分を把握している人は当然政府内にはいるのだろうと
思いますが、結論として言えば、横田めぐみさんの遺骨といわれるもの
は、全く別の二人のものであるということは、吉井教授だと思いますが
明らかにされたわけです。そのことについては、今言われたような難し
い問題はあるのかもしれませんが、そこは日本の最高権威として、明確
な結論を出されたと理解しています。

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▼NHK問題――ことの本質を見失うな▼朝日新聞社説より

NHKの放送前の番組に対し、自民党の有力政治家が「偏った内容だ」
と指摘した後、番組が改変された。朝日新聞がそう報じてからNHKや
政治家側が反論し、それに朝日新聞が再反論する事態が続いている。

朝日新聞は正確な取材をもとに、間違いのない報道を心がけてきた。報
道の内容に自信を持っている。

それにもかかわらず、NHKは虚偽報道などと非難してきた。朝日新聞
はNHKを名誉棄損で訴える構えだ。

ことの本質を見失ってはならない。問われているのは、NHKと政治家
の距離の問題である。その不自然さは今回、NHKや政治家の言い分に
よっても明らかになってきた。

番組の放送前に、NHKの放送総局長だった松尾武氏らが内閣官房副長
官だった安倍晋三衆院議員に会い、番組の説明をした。その後、総局長
試写があり、44分だった番組は再編集で43分に縮められ、さらに放
送当日まで編集を重ねて40分になった。これには争いがない。

安倍氏によれば、NHK幹部は予算の説明に伺いたいと言って、やって
来た。その際、この番組の説明もした。そこで「明確に偏った内容であ
ることが分かり、私は、NHKがとりわけ求められている公正中立の立
場で報道すべきではないかと指摘した」という。

NHKも予算の説明に行ったという一方で安倍氏に番組の説明をしたの
は「『日本の前途と歴史教育を考える議員の会』の幹部だったからだ」
と記者会見で明らかにした。

この会は当時、問題の番組に批判的だった。だからこそ、説明に行った
のだろう。ほかのメンバーにも、NHKは放送前に説明していたことも
わかった。

その流れで「公正中立に」と言われたのだとしたら、その意図はNHK
幹部にもはっきりと伝わったはずだ。

NHK幹部が訪問した本来の目的は、番組の説明だったと思わざるをえ
ない。 さらに耳を疑うことがある。
放送前の番組を議員に説明をするのは通常業務の範囲であり、「当然の
こと」とNHKの現放送総局長が言うのだ。

もちろん、番組をつくるにあたって、批判的な意見を念頭に置くことは
必要だ。だが、特定の議員に事前に番組の内容を説明することが当然の
ことなのか。まして、その後に番組が修正されたとあっては、「自主的
な判断に基づいて編集した」というNHKの主張に疑問を持たざるをえ
ない。

番組の事前説明について毎日新聞は社説で「日常的に行われているのだ
とすれば、NHK幹部の感覚は、報道機関としての一般常識と大きくズ
レている」と書いた。中日新聞・東京新聞の社説も「報道機関としての
生命線を危うくするものだ」と指摘する。同感である。

自立したジャーナリズムであるのかどうか。いまNHKが問われている
のは、そのことだ。