中傷と抗議の圧力のせいですっかり肩を落とし、「謝る」ばかりの家族
の会見を聞いた作詞家なかにし礼が、ある番組のなかで、3人の活動は
賞賛してあまりある行為、どうか家族の方々は心の中で自信を持ち続け
て欲しいという内容のことを言った。

▼作家の倉本聰がイラクで人質になっている3人の家族を励ますために
手紙を書いた。
手紙の中で彼は家族の心中を思いやりつつ、「ここ4日間の世の中の動
き、小生の頭では整理つかぬまま、しかし、鋭い痛みと激しい怒りでい
っぱいです」と憤りをつづる。
「国益はたしかに大切ですが、しかし『国格』――人格に相当する国格
は国益に勝る一国の尊厳だと僕は思います。国益を重視して、人質を救
出する最大の選択肢を最初から放棄してしまうこと。いかなる理由があ
ろうとも、政府のとった今回の態度には、激しい憤りを覚えます」
(朝日新聞4月12日)
http://www.asahi.com/national/update/0412/026.html

▼大弦小弦 by 武富和彦 
http://www.okinawatimes.co.jp/col/20040412m.html

イラク日本人人質事件を通して見えたことがある。日本の政府は国民の
命を守らない、ということだ。人命よりも国際的面目、はっきり言えば
米政府にどう思われるか、ということの方が重要なのだ。
政府は、自衛隊撤退を求めた犯人グループの要求をすぐに否定した。テ
ロリストの卑劣な要求に屈しないことと、要求の即刻拒否はイコールで
はなかった。にもかかわらず、最初のメッセージが明確な「ノー」だっ
たことには唖然とした。
犯人グループに首相発言が伝わっていたことは解放声明でもわかる。人
命よりも対米追従という現政権の性格を露呈した象徴的な出来事だ。人
質をとる行為は絶対に許せないが、日本政府が国民を気にかけていない
という犯人の指摘は一面で的を射ている。
国際基督教大講師の小倉英敬さんは指摘した。政府の腹づもりが「撤退
なし」でも、答えをあいまいにして時間稼ぎをするのが常識だと。残念
ながら今回、政府が被害者の生命を最重要視したとは思えない。あまり
に無責任だった。
福田康夫官房長官は、ダッカ事件で「人命は地球より重い」と超法規的
措置をとった父・福田赳夫元首相との比較に「時代、意味合いが違う」
と言ったが、どう違うのか。二十数年で国民の命の価値は低くなったと
でもいうのか。
国民は心すべきだろう。今の政府に「人命は地球より重い」という認識
がないことを。これが小泉政権の本質なのだ。
(沖縄タイムズ4月12日朝刊1面)

13日、米軍戦闘機が4回にわたりファルージャを攻撃(AFP 通信)。
「米軍が停戦合意を破り、戦闘機と戦車で攻撃した」とアルジャジーラ
は報じた。また、サンフランシスコの独立系ラジオ局KPFKによれば
ファルージャで病院が爆撃されている。
病院からの報告によると、イラク人の死者の数は880人以上。2千人
が負傷して治療が追いつかないなか、米軍が病院や救急車を攻撃する。
イラクの人々は日本の自衛隊がCPA米英暫定占領当局の一員で、米軍
を支援していること、武装した米軍の兵士を輸送していることを知って
いる。

▼ラウール・マハジャンのサイト「EmpireNotes」より▼

4月14日、バグダッド。ファルージャで米軍が救急車を狙撃してるの
を確かめる私の目撃リポートを読んでる方が、私がそれを書くのは「実
践すべき義務」があってのことで、つまり私がウソをついていると非難
する内容のことを書いている。他に、私がイラク人であるとか、ヨーロ
ッパ人の名前じゃないゆえに、ウソをついていると非難して書き立てる
人がいる。だが、一枚の写真に千語の価値があるのは今でも明らかなの
だから。(まさに救急車の運転者を狙撃したとしか思えない銃弾の痕が
残る写真をUP で見ることができる)
http://www.empirenotes.org/

▼4月12日、一時停戦中のファルージャからのルポ▼
by ラウール・マハジャン

イラクのファルージャはカリフォルニア南部に似てなくもない。イラク
の西部砂漠のはずれにあり極端に乾燥しているが、大規模な潅漑により
農業地帯に置き換えられている。生活の手だてのない赤貧の村々に囲ま
れたファルージャは、ことによると、わずかに暮らし向きがよいかもし
れない。人口のほとんどは百姓だ。街には広い道路と空き家と砂色のビ
ルディングがある。
ファルージャで治療が行える病院は4カ所しかない。そのうちの一つは
自動車の修理工場を臨時に使っている。米軍の掃討作戦が始まったとき
米軍はまず発電所を爆撃したので、町中が停電している。病院は自家発
電でなんとかしのいでいる。  
私たちが行った病院は、まさに死に物狂いの様相を呈していた。医師た
ちはほとんど眠らずに、昼夜を徹して負傷者の治療にあたっていた。
病院の部長であるアル・ナザルは、米軍によるファルージャの包囲が始
まってからの恐怖を次のように語った。
「女性と子供がたくさん撃たれました。また米軍の狙撃手は、負傷者を
運んでいる救急車に向かっても発砲したのです。私は47歳の今に至る
までバカでした。これまで欧米の文明を信じていたのですから」
救急車までが射撃されたなんて、私はここに来るまで信じなかった。だ
が、病院でフロントガラスに弾痕がついている救急車をこの目で見た。
それは運転者の胸を狙って正確に発射された弾痕だった。米軍の狙撃手
は、敵の兵士の胸を的確に射撃するように訓練されていると聞く。
ファルージャの街中が停電で真っ暗な中、この救急車は赤と青のライト
を点滅させ、サイレンを鳴らしながら走っていた。抵抗勢力と間違えら
れることはありえない。だから、意図的に狙撃されたとしか考えられな
い。  
ブッシュ政権は、ファルージャで抵抗しているムジャヒディン(聖なる
戦士)は、一部の過激派で、多数の市民から孤立していると断言してい
る。お笑いだ。これほど真実からかけ離れた言葉はないだろう。
もちろん、女や子供や老人は、ムジャヒディンには加わらないが、地域
の住民は全力でムジャヒディンを支援しているのが現実だ。私が会った
ムジャヒディンのひとりがイラク警察の防弾服を着ていたので尋ねると
実際に彼はイラク警察の一員だった。
「もしサダムがファルージャの市民に働けと命令したら、私たちは3日
間の休みをとりたがるでしょう。ファルージャの住民はサダムの信奉者
などではありません。それどころかサダムに抵抗し続けたのです。なの
にアメリカ人はまだ私たちのことをサダムの残党と呼んでいるのです」
と病院の部長、アル・ナザルは語った。  
また、「ファルージャの人々は、素朴でお人好し」と通訳のアル・アロ
ウビーが私に言った。この人々のほとんどが信仰心の篤い農民である。
だから、彼らの好意的な接待を受けることは、簡単だったはずなのだ。
なのに、米軍は、無惨な挑発行為で彼らの善意をズタズタにしてしまっ
た。 今やファルージャは、残忍な集団処罰の処刑場と化してしまった。
すでに600人以上の市民が殺されたが、そのうち200人が女性で、
100 人以上が子供だったと見積もられている。男性の死者の多くもま
た、非戦闘員である一般市民だった。
ベトナム戦争のときに、アメリカの特殊部隊の大佐が、「この町を救う
ために、まずこの町を破壊しなくてはならない」と言った。今のイラク
でも、米兵は同じことを言うのだろう。ファルージャは徹底的に破壊さ
れない限り、テロリストから救うことができないのだと。
http://www.commondreams.org/views04/0412-01.htm