9.11以降、世界における「テロリズム」の定義の幅の狭さといった
ら、息が詰まりそうだ。いくつかの「ならず者」国家が大量破壊兵器を
保有しているだの、持っていると脅しているだの、突然所有しているこ
とになっただの、そんな話ばかりだ。ある意味で、遠い世界の話と思う
ことにすれば気が楽だ。
だが、視線をちょっと移してみると、厳重に警護されたワシントンDC
のど真ん中を、ある種の大量破壊兵器が猛進している。2週間ほど前、
ジョナサン・ターリー教授がロサンジェルス・タイムズに寄稿した記事
「裏庭を走る大量破壊兵器」を読んで、私は本当に恐ろしかった。
問題のCSXは年収の規模10億ドルほどの鉄道会社で、納税割り戻し
金1億6400万ドルは受け取りながら、ここ何年も連邦税を免れてい
る。しかもアメリカ大統領選挙の大口支援者だ。この会社は首都の心臓
部を貫いて鉄道路線を操業し、合衆国の運輸省が「吸引性毒物」に認定
する有毒化学物質を満載した巨大タンク列車を走らせているとターリー
は書いた。
「1984年、インドのボパールで同じタイプの化学物質が数千人を殺
した。CSX鉄道は、例えば連邦議会から4ブロックしか離れていない
地上の線路に塩素90トンを積載したタンク列車を走らせている。海軍
研究機関の科学者ジェイ・ボリス博士が公表した報告が、テロ攻撃ある
いは事故により、塩素90トンを積んだ列車のわずか一両が首都中心部
で爆発した場合の死者の数を予測している。爆心地を中心に半径約22
キロまで毒性の雲が広がり、連邦省庁のビル群、議事堂、最高裁判所、
ホワイトハウスをすっぽり覆うことになる。毎秒100人の割合で死者
が出ると予想され、およそ240万人の生命が危険に晒される」
私たちは常にオレンジ警報の下で暮らし、毎週のようにヨーロッパ航空
便を欠航にし、イスラムのテロを警戒して、昼夜を問わず橋や建造物の
警護に励んでいる。それなのに、ブッシュ政権は企業ロビイストが差し
出すアメを舐めて、CSX鉄道の路線付け替えを強制しない。これは、
私たちのテロリズムの定義が、いかに地上最大のテロの脅威に対応して
いないかを示す、ささやかな実例にすぎない。(トム・エンゲルハート
の前書きより:Tomdispatch.com 03 February 2004 )
http://www.nationinstitute.org/tomdispatch/index.mhtml?pid=1227

▼1週間から10日ごとにプルトニウムの積荷がフランスを行く▼
03 March 2004 FRANCE/Paris

原子炉級プルトニウムを積んだ一般の商用トラックがパリから15キロ
のヴェルサイユトンネルに近づく。10日ごとに南北走路を行く運転手
は、燃料油を運ぶ2台のタンクローリーが憲兵の護衛車と並んで追い越
し車線へ寄るとき、何の異常も察知しない。それが起こるとは決して気
づかない。護衛された核の輸送車隊がトンネルの中央にさしかかるとき
タンクローリーが右側車線に急な角度で折れ曲がり、警察の軽自動車を
押し潰して、プルトニウムの積荷の両側に壁を作る。3台目の自動車が
急いで開く。金属カッターと自動小銃を持った若い男性たちがトラック
めがけて走る。
一発の銃弾が運転手を殺す。逃げた2人の憲兵は潰された自動車の後部
から防護服と武器を取ろうとして殺される。同時にテロリストたちは、
トラックの後部ドアのボルトを切るように進む。彼らはトラックの致死
量のプルトニウムの粉末容器9個ごとに1キロの C- 4を配置する。そ
うして燃料とプルトニウムの両方を爆発させ、パリ避難のパニックを引
き起こす。攻撃にかかるのは12分。死と経済的衝撃は何年にもわたっ
て続くはずだ。

アフガニスタンの洞穴に、アルカイダが合衆国の原子力計画に関する青
写真を持っていたとジョージ・ブッシュは主張した。まず第一にこれが
合衆国大統領によるもうひとつの国家的虚偽であったのを環境保護団体
グリンピースは明かした。だが、そのウソには埋もれた真実があった。
今日、テロリストの標的に、原子力計画とプルトニウムの積荷、以上に
適したものはそうは見つからないということだ。
ドイツでリークされた政府の報告書は、ドイツの原子炉のいずれもニュ
ーヨークのWTC式の攻撃の衝撃に抵抗しおおせないと結論づけるのを
表面化させている。報告書の結果としてドイツ連邦放射線防護局の長官
がドイツの最も無防備な原子炉5基を閉鎖するため、原子炉技師をドイ
ツに求めていた。

グリンピースは、はるかに簡単、かつ致命的なテロの標的のぞっとする
詳細をフランスで公表している。1週間から10日ごとにフランスを横
断する、輸送車隊ごとに広島級の原子爆弾40発分に相当するプルトニ
ウムのお決まりの日課、予測できる積荷だ。
事故もしくは故意で、大気中にプルトニウム燃料(混合酸化物燃料とか
MOXと呼ばれる)を放出することになる道路上の衝突、トンネル火災、
テロリストの攻撃を含めて、グリンピースの報告書は幾つかのシナリオ
の評価を行う。
グリンピースは何年もMOXの出荷ルートを追跡しており、 これを公表し
てきた。 これらの出荷の大いに予測できるスケジュールと、大人口の中
枢近くを移動する傾向が、たやすい標的にさせている。この積荷がいつ
どこを通過するかを知るグリンピースのヴォランティアが撮影した路傍
のヴィデオがある。
合衆国では、車内の積荷の中身に対し熱の防護を用意する、特別仕立て
の装甲車でMOX燃料は運ばれる。そして通信、放射線モニタリング、そ
して攻撃者をくじくために動かなくする形態を含めて物理的に積送品の
移動を防ぐ他の装置を備え付けている。それぞれのトラックはプルトニ
ウムの容器3個までに制限される。
報告書は、仮説に基づく攻撃からの直接の死以上に、ワールドトレード
センター攻撃の死者数の3倍を超える、1万1千人が放射線照射が原因
の長期的結果で死ぬことになると見積もる。
これを免れる距離は110キロ。毎週、輸送車が通過するところからエ
ッフェル塔まではたったの15キロだ。
プルトニウム攻撃もしくは事故の、より広い社会的、経済的影響の十分
な調査をこの報告書は薦める。パリやディズニーランドの観光はつぶれ
るだろう。フランスワインを含めて莫大な数のフランスの農産物が輸出
を禁じられるだろう。放射能の雲は風に乗ってベルギー、オランダ、デ
ンマーク、ドイツにまで吹き流されるはずだ。

さて、想像してみてくれたまえ。テロリストが風車の攻撃を企てたシナ
リオを。あるいはソーラー施設。あるいは波力発電所を攻撃しようと企
てるシナリオを。
新しいグリンピース報告書、Sea Wind Europe(海風ヨーロッパ)は、
沖に向かう風力だけでヨーロッパが必要とする電力の三分の一を提供で
きることを立証する。家庭のエネルギー効率だけで40の大きな原子力
発電所の発電力に相当するエネルギーが節約できることを立証する報告
書を国際エネルギー機関が昨年発行した。最も危険な原子炉の即時閉鎖
で、クリーンなエネルギー市場が景気づけられることになり、無用なリ
スクに替わり、さらなる仕事と安心を発生させるのだ。
(www.greenpeace.org)