昨年12月16日、ニューヨークタイムズ紙は1年以上前に入手していた
スクープ記事をようやく公開した。同記事によれば、911テロ事件から
数ヵ月後にブッシュ大統領は密かにNSA(国家安全保障局)に対し、通
常の国内盗聴に欠かせない裁判所の令状なしに米国内に住む自国民及び
外国人の盗聴を命じており、現在もその違法な隠密作戦は進行している
とのことである。

令状なしの盗聴命令をブッシュ大統領が認めた直後、民主党のバーバラ
・ボクサー上院議員はニクソン政権で大統領法律顧問を務めた法律家、
ジョン・ディーンに意見を求めた。

ウォーターゲート事件で責任を問われ、辞職した経験を持つディーンは
ボクサー議員に対し、
「ジョージ・ブッシュは弾劾要件となる違法行為を自ら認めた米国史上
初の大統領だ」と述べた。

ブッシュはこれについても国民にウソを言っていた。

2004年4月20日、合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは政府のテロ
対策に関して、こう国民に説明している。
「合衆国政府が盗聴する際には、常に裁判所の令状が必要です。それに
変わりはありません。テロリストを追いつめる場合、あらかじめ裁判所
の令状が必要なのです。国民の皆さんに理解していただきたいのですが
愛国者法を考慮に入れても、国家防衛に必要な行為であっても、憲法上
の保障がなければなりません。なぜなら、我々は憲法を尊重しているか
らです。」

また、大統領が違法行為を認めた「自白会見」直後の12月18日、NBC
放送「ミート・ザ・プレス」に出演したコンディ・ライス国務長官は、
「私は弁護士ではないので」を繰り返し、元国家安全保障担当大統領補
佐官としての責任問題から逃げた。そして翌日のインタビューで、こう
言っている。
「(国内盗聴について)大統領は早い時期から、合衆国法の最高権威で
ある司法長官に相談しています。」
ブッシュが令状なしの盗聴を相談したという当時の司法省長官とはアシ
ュクロフト司法長官である。

昨年12月6日、米フロリダ州タンパの連邦地裁陪審は、パレスチナのイ
スラム原理主義組織「イスラム聖戦」と共にイスラエルでの自爆テロを
計画したなどとして17の罪状で起訴されたパレスチナ人の元南フロリダ
大教授サミ・アリアン被告に対し、殺人の共謀罪など主要な8つの罪状
について無罪評決を下した。アリアン被告は、米中枢同時テロ後に成立
したテロ防止策強化のための「愛国者法」に基づく捜査で起訴された代
表例。2003年2月の起訴時には当時のアシュクロフト司法長官が愛国者
法の最初の勝利、と称賛した。

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▼米国で実際に監視・盗聴されているのは誰か▼

盗聴でNSA が大活躍なら、国内盗聴の老舗であるFBI も負けていない。
ただし、国内テロ対策の主役であるはずのFBI には911テロ以降もアル
カイダやイスラム過激派の専門家がいないも同然だった。要するに FBI
のテロ対策班はアルカイダやビン・ラディンには関心がない上、追跡能
力もなかった。では、彼らは一体誰を監視しているというのか。
ニューヨークタイムズ紙2005年12月20日付記事によれば、こういうこ
とである。
以下、抜粋:

■FBI 市民活動を監視

FBI の対テロ対策調査員が、環境や動物保護、貧困者救済活動に関わっ
ている市民団体に対して多数の監視・諜報活動を行っていることが新た
に公開された文書により判明した。
FBI 文書のひとつには、インディアナポリス支局の捜査官が「菜食主義
者コミュニティ計画」の一環として偵察を行うという記述がある。他の
文書にはカソリック労働組合について「共産主義思想予備軍」との言及
がある。
ACLU(アメリカ自由人権協会)が一部公開する予定の最新文書は2300
ページを超えるもので、PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)、
環境保護団体グリーンピース、貧困解消を唱えるカソリック労働組合と
いった団体に関する照会内容に重点を置いた内部文書であった。
つまりFBI は、テロ対策と称して環境保護活動の監視に力を注いでいる
わけである。 では国防総省のテロ対策チームは何をしているのか。
NBC 放送2005年12月14日付報道が詳細にこれを伝えている。
以下、抜粋:

■ペンタゴン、アメリカ国民をスパイか。

1年前、フロリダ州レイクワースのクエーカー集会所に市民活動家が集
まり、地元の高校での軍の新兵スカウトに反対する活動の計画について
話し合っていた。彼らは気づかなかったが、その集会は米軍の注意を引
いていた。
NBC ニュースが入手した400ページに及ぶ極秘文書には、レイクワース
の集会について「脅威」と記されており、過去10ヶ月間で1500 件以上
がリストアップされた「怪しい出来事」の一件に含まれていた。
ペンタゴンが「脅威」と評したフロリダ州の集団とは、地元新聞の追加
取材によれば、20人ほどの地元市民で、クエーカー教徒や79 歳の高齢
者たちである。他にも反戦活動(国防総省の説明では「怪しい出来事・
脅威」)が40 件以上記されているそうである。

カリフォルニア州ではさらに手厚いサーヴィスが加わる。同州ではシュ
ワルツェネッガー州知事率いるカリフォルニア州兵部隊が新たな諜報活
動を開始している。その監視対象の一部にはコードピンク(女性反戦団
体)、シンディ・シーハンの組織する反戦戦死者母親の会、怒れるおば
あちゃんの会(高齢者反戦団体)が含まれる。つまりこういうことであ
る、反ブッシュ派の一般市民ばかり。

では、肝心のテロ対策とやらはどこがやっているのか。アルカイダを追
跡するのは誰か。911テロの反省から誕生したDHS (国土安全保障省)
だろうか。
ワシントンポスト紙の12月21日付連載特集記事によれば、超官僚主義
と腐敗を抱える国土安全保障省は、設立当初から今日に至るまで、まと
もに機能していないということである。9 月のハリケーン・カトリーナ
による大災害でその無能ぶりは国内外ですでに披露済み。

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▼違法な盗聴、そして弾劾▼commondream
by ジョン・ディーン 30 Dec.2005

2005 年12月16日、ニューヨークタイムズ紙は重要なスクープ記事を
掲載した。同記事によれば、ブッシュ大統領は、外国諜報活動偵察法で
定められた手続きを無視し、NSA(国家安全保障局)によるアメリカ国
民に対する令状なし盗聴を承認したということだ。

同記事には、ホワイトハウスの違法行為に関する驚くべき情報が綴られ
ている。それによると、2002 年のある時期からブッシュは大統領特別
命令として、合衆国内と諸外国の間で交わされている電話や電子メール
のうち、アルカイダと直接あるいは間接的に関係していると信ずる通信
の探知と傍受をNSA に承認したということだ。

スクープ公開当初、ブッシュとホワイトハウスは大統領が法律を無視し
たかどうかについて口を閉ざし、肯定も否定もせずにいた。ジム・レー
ラーにインタビューされた際も、ブッシュはその話題について話すこと
を拒否していた。

その後、12月17日に大統領ラジオ演説でブッシュはタイムズ紙の記事
内容が正しいと認めた。そんなわけで、大統領弾劾の要件となる重罪を
犯した事実を、彼は認めたのである。

令状なしの盗聴が法律違反であり、弾劾されるべき犯罪であることに議
論の余地はない。なにしろニクソンも、違法な盗聴行為によって合衆国
憲法第2 条にある責任を問われた際、やはり国家安全のための盗聴と主
張していたのだ。

こうした二つの違法行為の相似性は、以前に私のコラムで話題にしたよ
うに、両政権の憂慮すべき相似性が継続していることをはっきり示して
いる。

実際、今回の件で、ブッシュはニクソンを超えてしまった。ニクソンの
違法な盗聴行為は限定的だったが、ブッシュのそれは現在も進行中であ
り、盗聴範囲もはるかに広範囲に及んでいる可能性がある。最初のスク
ープでは、NSA の盗聴対象は国内と国外を結ぶ海外通話に限定されてお
り、一度に500通話を超える盗聴は行われていないとされていた。とこ
ろが最新の報道によれば、NSA は文字通り数100万件の通話を「データ
集積」しており、電話会社の協力の下に、海外通話と国内通話の流れを
またがって盗聴しているとみられている。

要するにこれは、おおがかりな、ビッグブラザー的電子監視である。

国家安全と密接に関係していることを理由に、タイムズ紙は1年間もこ
の記事を公開しなかった。そして今、同紙はその記事を解禁し、ブッシ
ュは記事内容を漏洩した情報源の捜査を命じている。

そのような情報漏洩元の捜査は皮肉でしかない。情報漏洩の結果として
ブッシュ自身の違法行為が発覚したからだ。犯罪者としていぶり出すこ
とにより、ブッシュは裏切り者を見つけ出そうとしている。

要は、ブッシュが幸運を願っているということだ。そのようなギャンブ
ルは露骨な議会法違反の口実とするには不充分に思われる。議会の承認
がないまま行動することで、ブッシュは自身の大統領職が未検査である
ことを強調してしまった。彼自身も、彼の弁護士の視点でも、これは全
くの違法である。今やブッシュは、NSAの恐るべきパワーをアメリカ国
民に向けて使っている。次にどういう権力を行使するのか。その際、国
民は、そして議会は、大統領が新たな権力を実行している事実を、いつ
発見することになるのか。

http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/12/1_6fdf.html
(上記のサイトの訳を参考にさせていただきました)