▼100 枚の写真で作るニュースのマップ 10×10 ▼
by WIRED NEWS 28 Feb.2005

常に最新ニュースを押さえておきたいが、「Googleニュース」では味気
ないとお思いの方、もっと視覚に訴えるサイト「10 x10」(テン・バイ
・テン)を試してみてほしい。このサイトには1時間ごとに更新される
100 枚の写真が掲載されており、訪問者はこの写真を使ってトップニュ
ースに目を通せるようになっている。縦横10 枚×10 枚で大きな長方形
を作る画像は、世界を大まかに映し出すスナップ写真になっている。

ほとんど文字を使わないニュースの総覧を可能にしたこのサイトは情報
アーキテクトのジョナサン・ハリス(25歳)が制作した。

10x10は「BBCニュース」の世界版や「ニューヨークタイムズ」の国際
ニュースなどの大手ニュースサイトから最も使用頻度が高い単語を取り
出して、それらを写真と組み合わせている。このサイトでは写真やそれ
に関連づけられた単語上をスクロールすることでトップ記事を対話的に
検索できるようになっている。

ジョナサン・ハリスが、10x10のデザインと常に変わり続けるコンテン
ツという発想を得たのは、ギリシャを旅行しているときだった。彼は、
「世界中のある瞬間を切り取ったら、どんな風に見えるんだろうか」と
考えはじめ、この疑問から10x10のアイディアが浮かんだ。

ジョナサン・ハリスが情報アーティストとして有名になったのは「ワー
ドカウント」を作ったことでだった。このサイトは英語で使用される頻
度の高い単語を集め、1位の「the」、2位の「of」から、8万6800位の
「conquistador」(征服者)まで、訪問者が閲覧・検索できるように並べ
られている。

情報は新しくないが、このプラットフォームのミニマリズム的な美しさ
と滑らかな動きが多くの人の関心を惹きつけた。米国グラフィックアー
ト協会(AIGA) は2003年、「ワードカウント」に「情報デザイン賞」
を授与している。AIGAは、ランク順に並べられた単語をじっくり見れば
私たちの文化がよくわかるとコメントしている。たとえば「god」(神)
は「began」(始めた)の次、「start」(始まる)の2つ前、「war」
(戦争)の6つ前にある。

「私が作りたいと思うプログラムは、独自の生命を持ち、外部に働きか
け、物事を実行し、人格を形成していくというものだ。創造主の役を演
じながらも、完成品にまでは持っていかないことが面白いのだ」とジョ
ナサン・ハリスは語る。

10x10もワードカウントも、彼がイタリアのベネトングループ社の研究
所「ファブリカ」、世界中の新しいメディアのアーティストのためのシ
ンクタンクで働いていたときに開発された。だが、ファブリカでの1年
間の特別研究員の資格を得る前に、彼はまずグラフィックとウェブを手
がけるデザイナーとして実績を上げる必要があった。

彼にはすでに、ある程度デザインの経験があった。プリンストン大学の
学生のときに自分のデザイン会社を設立したからだ (米フレーミング・
トースト・プロダクションズ社、現在「ナンバー27」で知られる)。
彼は大学に進学するまで電子メールさえ送ったことがなく、自分をテク
ノロジー嫌いだと思っていた。これが、コンピューター科学を専攻する
ことに決めた理由のひとつであった。

「私はまもなく、コンピュータプログラムを作成する以外のことに、こ
のメディアを利用するようになった」

ハリスはこの時期、社会学のミゲル・センテーノ教授と出会っている。
センテーノ教授はハリスが通っていたプリンストン大学の寄宿制カレッ
ジの教師でもあった。後にセンテーノ教授は、プリンストン大学で自ら
が生み出した「非地理的な地図」作成のための新たなシステム「インタ
ーナショナル・ネットワークス・アーカイブ」のデザインとウェブ制作
をハリスに委託する契約を結んだ。

その結果、コーヒーの貿易やファストフード店、移動手段などで世界を
整理する地図ができあがった。

「ハリスは、ゆるやかなつながりの個々の発想から、一体感のある芸術
的かつ技術的な全体像にまとめあげることができる」とセンテーノ教授
は語る。教授は自分のアイディアをいつか実現したいと考えていたが、
ハリスに出会うまで、実際にこのプラットフォームを作成できる能力を
持った人物を見つけられなかった。

ハリスはセンテーノ教授の地図を手がける一方で、米オーラル・フィク
セーション社の本拠であり製造拠点でもあるニュージャージー州の「ザ
・チョコレート・ファクトリー」の住人となっていた。

プリンストン大学での学友だったジェレミー・カーンは個性的なミント
を販売するオーラル・フィクセーション社を立ち上げたとき、ミントの
箱からウェブサイトまで、ありとあらゆるもののデザインをユニークに
したいと考えた。カーンはハリスの才能を認め、彼にクリエイティブ・
コンサルタントへの就任を要請し、顧客の関心を惹くことなら何でも自
由に行なえる権限を与えた。

その結果、ザ・チョコレート・ファクトリーの他とは違う小売サイトが
できあがった。このサイトには、工場があるニュージャージー州ホープ
ウェルの天気についての最新情報や、隠れた秘密、ビデオやゲームなど
が盛り込まれている。また、訪問者がBGMや背景にある架空の景色を調
節することもできる。

これまでのところ、ハリスの最も高く評価されている作品は10x10で、
彼のデザインはあちこちで目にすることができる。「これらのアイコン
の1つが単独で意味を持つわけではないが、グリッドの相互作用でそれ
ぞれのアイコンは部分の集まり以上の意味を持つ」とファブリカでハリ
スと一緒に生活し、10x10という名前を考え出したジョエル・ルイスは
語る。

「私が興味を惹かれるのは、膨大なデータセットに人間性の表れを見い
だし、私たち自身について何かを教えてくれるプログラムを作ること。
プログラムを自由に動かしておき、その結果を調べることで、私たちは
自らを知ることができる」とハリスは述べる。このテーマは、最新作の
「アンダースタンディング VORN」からも見てとれる。

アンダースタンディング VORNは、ドイツの雑誌「フォルンVorn」のた
めに作成されたサイトだ。「vorn」は「事前に」といった意味のドイツ
語だが、アンダースタンディングVORNは膨大なウェブログから、「v」
「o」「r」「n」で始まる画像を探し出し、元となっているサイトにリン
クを貼っている。この文字と画像の組み合わせは5分ごとに更新されて
二度と同じ形にはならない。過ぎてしまえばそれで終わりだ。

彼に今後のプロジェクトについて聞いても、具体的には触れなかった。
ただ、「現在手がけている次のプロジェクトは人の感情をウエブで大規
模に調べることと関係がある」とだけ明かす。

http://www.tenbyten.org/10x10.html

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▼ 「グーグル・マップス」 ハリケーン被災の衛星写真▼
by WIRED NEWS 6 Sep.2005

米グーグル社は昨年、地図検索サービス「グーグル・マップス」(ベー
タ版)で、超大型ハリケーン・カトリーナで被災したルイジアナ州ニュ
ーオーリンズの衛星写真を公開した。広範囲に冠水した様子などが確認
でき、被災前の写真との比較もできるようになっている。

グーグル・マップスで「New Orleans」(ニューオーリンズ)を検索す
ると、地図の右上に「Katrina」(カトリーナ)という赤いボタンが表示
される。このボタンを押すと、ハリケーン直後の8月31日に撮影した写
真が表示される。拡大すると、建物の周囲や道路などの低地を黒ずんだ
水が覆っている様子がわかる。また、ニューオーリンズ市民が多数避難
したアメフト競技場「ルイジアナ・スーパードーム」の屋根が、暴風雨
でひどく破損した様子も確認できる。

さらに「Satellite」(衛星)ボタンを押すと被災前の写真に切り替わり
ハリケーン前後の変化を確認できる。また、グーグル社が無料でダウン
ロード配布している地図表示ソフト「グーグル・アース」でも被災地域
の衛星写真の閲覧が可能だ。同ソフトのユーザーコミュニティーのメン
バーが協力して作業にあたり、100枚以上の写真で被災前と比較できる
ようしたとのことである。

http://hotwired.goo.ne.jp/