McWORKERS

アメリカではマクドナルドで働く人「McWORKERS 」が、広く低賃金労働者を表す言い方になっている。アブグレイブの拷問者たちは、もはや人並みの職を自国で見つけられなくなったのでイラクに行く羽目になった「McWORKERS 」だった。

自由貿易は米国雇用市場を砂時計に変えた。多くの仕事が底辺に向かい、上にもかなりの仕事はあるが、中間層にはほとんどなにもない。同時に底辺から上を目指すのがとても困難になっている。大学の授業料が1990年から50%も値上がりしているからだ。

そこで登場するのが米軍だ。新兵募集キャンペーンに2億ドルを投入する陸軍は公式のPCゲーム「America's Army」のアトラクションを開催。集まったゲームフリークの若者にクールな陸軍をアピールして8万人の新兵獲得をめざしている。
陸軍はアメリカで拡大している階級格差に架ける橋の役割をになっている。軍務と引き換えに大学の授業料が負担されるのだ。NAFTA (北太平洋自由貿易)徴兵と呼んでもおかしくない。

アブグレイブ刑務所のスキャンダルで矢面に立たされたリンディ・イングランドもそのシステムを活用したひとりだ。彼女は大学に行くために憲兵隊に入隊した。同僚のサブリナ・ハーマンも同じ理由で入隊している。

だからといって彼女たちの罪の重さには関係ない。しかし、彼らのことを調査すればするほど、米国でのまともな仕事の減少と社会的不公平さが、まさしく彼らをイラクの前線に追いやったという事実がより一層鮮明になった。イラク問題から国民の目を逸らすために経済問題を持ち出し、兵士らの行為を反アメリカ的な社会逸脱者として孤立させることに執心するブッシュの意図にもかかわらず、低賃金労働、刑務所虐待、不十分な教育、工場閉鎖に追いやられる若者は実在した。

彼らは、足下に災難が迫っていようがお構いなしに、あちこちで親指を立てて脳天気ぶりをふりまくブッシュが生みだした若者たちなのだ。これがジョージ・ブッシュの真骨頂。米国の有権者がポジティヴな大統領を求めているのを確信するブッシュ選挙チームは楽天主義を武器として使うことを学んでいる。どんなに危機的状況だろうが、どんなに多くの命が失われようが、ブッシュとそのチームは世界に向けて親指を立て続けるつもりなのだ。 大勢を貧困に追いやった米国雇用市場も、彼ら"楽天"司令官に言わせれば「アメリカならやれる!」というわけだ。

若い兵士たちに囚人を拷問するよう指導したのは誰なのか。私たちはまだ知らされていない。でも、とんでもない苦痛に直面したときに脳天気な状態を保つ方法を教えた人物については、私たちは実によく知っている。その教えは上から直接、伝えられていた。

▲参考資料:The Guardian 18 May 2004 by Naomi Klein
DemocracyNow 28 July 2004
ナオミ・クライン:ジャーナリスト、「ブランドなんかいらない」の著者