ZAP THE MEDIA :

今年2月ニューヨークには既存のメディアと対決する新種のメディア評論家、副司令官マルコスがいた。
94年元旦、メキシコ最南端チアパスの町を占拠した農民の革命を報道の力を意識した洞察力で導くサパティスタのリーダーが会議「メディアを解放する」の席にヴィデオ出演してあの伝説のスキーマスクから時折パイプをたぐり寄せながら報道関係の活動家と学者に激励と助言の言葉を投げかける。
サパティスタは既存のメディアに取って代わる情報交換の大陸間ネットワークを要求していた。会議の主催者のひとりがそれを築く助けになればと副司令官マルコスを招待してそれに応える10分間の名前入りヴィデオテープを受け取ったというわけだ。
うわさでは元ジャーナリストのマルコスは60年代パリのソルボンヌ大学で学んだ教養人だった。68年メキシコオリンピックでの国の散財に抗議する学生を軍が大量に虐殺したことを発端に政治に携わるようになる。合衆国の支援者らが全声明文をインターネットで流すなどカリスマ性のあるマルコスには特定の政治見解を支持しない先見の明があった。
サパティスタは主要な報道機関の足並み揃えた社会運動や暴動・反乱に対するそっけない取材ぶりをラテンアメリカで最も抑圧的社会勢力として彼らが引き合いに出す「ネオリベラリズム」が用いる主要な武器だと見なす。
このネオリベラリズムの意見の一致をうち破る最良の手段を提供するのがオルタナティヴのメディアで、ニューヨークで開かれた会議「メディアを解放する」には組合や環境団体の活動家に加え、自主メディアやPacifica Radio 、The Nation など左翼メディアからも演説者が特別出演した。

●参考資料:Village Voice 2/4, 1997 i-D july 1995 (TAMA- 22 掲載、1997 fall )