どの学校にもある[FAGGOT]いじめ
1968年ジョンFケネディが暗殺されたとき、ひどく反発を覚えたマルコムXは「わが身にはね返る」と言い放った。今年4月20日に起きたコロラド州リトルトンのコロンバイン高校銃乱射事件を同じ言葉で見ることはできても、結局はごくありきたりの「ゲイのしわざ」で終わる。
学校の「のけ者」だったエリック・ハリスとディラン・クレボールドが高校のカフェテリアの横に立ち射撃を開始したとき、これほどの人が得をすることになるとは誰も想像しなかった。
生き残った生徒にとりそれはモニカ・ルインスキー以来最大のメディア・サーカスで曲芸を演じるチャンスとなり、ニュース局にはTV視聴者がぞろぞろと群をなして興味を失っていく絶望的なコソヴォ難民の行列から逃げ出すいい口実となった。法と秩序タイプの人間が高校を軍のキャンプにするという長年の計画の根拠を見いだす一方で、リベラルな人々は銃規制の要求を突きつけるのに有効な序幕を見いだす。三角形に分かつ重要性を即座に了解する大統領は今より厳しい銃法案と十代の暴力に関するハリウッド・サミットの両方を呼びかける。そうして暴力的なヴィデオゲームに責任があることで全員が大きく首を縦に振った。
この長たらしい話から抜け落ちているのはどんなふうに文化が高校の大量虐殺の一因となったかを理解しようとする気持ちだ。
ディランの父親は地質学者で客用の別棟もある大邸宅に住みBMWのビンテージカー6台を所有する。裕福で一見平穏そうな家庭に育つ聡明な子供がどうして血も涙もない殺人マシーンになったのか?
報道機関はニュースを伝えるばかりか社会学者にでもなった気で二人を「乱暴者」として描きトレンチコート・マフィアに属していたと報じた。(マフィアの年鑑写真に二人は含まれていない。それに非難されたマリリン・マンソンの歌を聞くのはメンバーの一人だけだ)
級友らによると二人は「ホモ」呼ばわりされいつも下ばかり見て歩く子だった。
アメリカで最もさげすまれるマイノリティが「faggot」と呼ばれるホモ。優位に立つjocksと呼ばれる運動選手らがトレンチコート・マフィアと呼ぶ連中もその類で、本物のメンバーのひとりはjocksからロッカーに投げつけられる、ホモ呼ばわりされる、クルマの窓から缶や石を投げられる、通りすがりに乗ってるバイクにクルマで体当たりされるなど毎日が無条件の地獄と告白している(この子は二人と違い人に罪を着せる子ではなかった)。
誰もゲイと公言できない環境でゲイ扱いはマッチョ基準に達しないはみ出し者のハリスやクレボールドのような子に運命づけられる。(できそこないに対して)標準の男と交われない少年たちを追いやる社会制度に立ち向かわせるより鼻ピアスを厳重に取り締まるほうが簡単だ。
若さに有頂天になるくせに若さをねたむ国ではコロンバイン高校の大虐殺(教師1人生徒12人を殺害)は十代の若者文化をつぶす完璧な口実になった。でも大丈夫、少なくとも他の似たような二つの事件では人殺しは「ホモ」(=欠陥人間+極めて危険)とラベル付けされる。マリリン・マンソンの歌やゲームをとがめるのは、性的あざけりのインパクトや社会におけるその効力を探り出すよりはるかに簡単なことだ。
二人の噂に対するメディアの反応は、ほとんど全部のニュース記事がとりあえず殺人者らがゲイだった証拠はないと報じた。
心理学者に言わせればそこには人をゲイと非難するのは実にひどいこと、現にゲイなら彼らを追放するのはフェアーとの暗黙の了解がある。だから教育的なサークルにもある、誰も声もかけないような少年に汚名を着せるのは当たり前との信念が頑なに保たれる。
こうした共謀の結果は十代のゲイの驚くばかりに高い自殺率で鮮明だ。実にゲイ青年の32%が自殺を謀っている。あいにくストレートの子がゲイと烙印を押されてどう反応したかの調査は行われていない。
「faggot 」はホモセクシャルを意味するだけの言葉ではない。最近はその侮辱の含みが一段と膨らみ、女々しいという性の範囲外のくだらない・ぎこちない・常軌を逸した対象にあてがわれる。だからガールフレンドがいても「fag」ってことになる。fag言葉を振り回すのは他人より優位に立つための手段。ティーンエイジャーは特にこの大嘘に影響されやすい。
不安で動揺してる子をとっつかまえていつもやってるようにいじめるのは、すなわちヒットラーの誕生日を祝う立派な理由をその子に与えてるってことだ。トップに立つ男にとりホモ嫌いは社会的に是認される反発の手段、それは彼らをセクシーにし、火あぶりにされて当然の少年を支配する力を証明した(スポーツの手柄は外面のステイタス印にすぎない)。そして白人が優勢の郊外の偏狭さがこの手の運動選手を地元の神にする。
今のところ失態を演じたホモ嫌いに銃乱射の責任があるとは誰も申し出ていない。残りの地域社会を免除して殺人者の親を責めるがいい。
結局ここはコロラドだ。92年有権者がどの管轄区でもゲイ権利法案の制定を禁じる条例を通した州だ。
先週、環境にうまく適応できない若者の報告書が全国から届けられたが、アメリカは今その包囲下にある!神よ破壊曲を奏でる乱暴者を助け給え。
●参考資料:VILLAGE VOICE May 11 NEWSWEEK May
●TAMA- 25 掲載、1999年CHILL
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