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Freedom
Fighters
小学生を連れたおばあちゃん、ウォールストリートの株式ブローカー、ハイスクールのランチの配膳係、元クイーンズ地区の交通巡査。このニューヨーカーが一堂に会すのはそれぞれ身内がドラッグ犯罪で州刑務所に服役しているからだ。
今はどの囚人の身内も個々の怒りを政治行動に変容させている。これは以前には考えられないことだ。
ネルソン A ロックフェラー知事が作ったロックフェラー・ドラッグ法とやらを巡る長年の争いは政治家とドラッグをその方針に掲げる活動家のものだった。
ところがその法案成立から26周年にあたる昨年その様相ががらりと変わる。その法案によって真っ先に影響を被る囚人とその家族が論争に自分の意見を持ち込むようになったのだ。
これまで街の裁判所の前やロックフェラーセンターに通じる歩道に細々立つか、ほんの一握りのデモ参加者が抗議に顔を出していたのがオールバニーで開かれた昨年の大会はその数が何百人にも膨れ上がった。
今年2月アメリカ全土の刑務所の収監者の数が200万を越えた。
暴力を伴わない、どちらかというと温和なドラッグ常用者が殺人犯より長い懲役刑を科されたりマイノリティが白人より厳しく罰せられる現行の司法制度は著しく不公平との指摘が多くの研究者から寄せられる。
その司法制度の欠陥の成果が80年代の7倍にも増えるほとんどがドラッグ法違反の女性収監者の割合で、ニューヨーク州では収監者の三分の一がドラッグ囚人だった。
昨年、パタキ州知事がドラッグ所持の収監者の刑期を最長10年に縮める正式の訴えを認めると申し出たことにより議会で法の改正案が承認される望みが出てきた。でも抗議者らは法律が撤回されるまで安心できないと言う。
囚人の身内は自らの苦痛を進んで人前にさらすことで法の影響の重大性を人に思い出させる重要な圧力団体の役割を演じている。
元警官ジョセフ・ソース(65歳)はドラッグ法に反対する大会に出るため頻繁にナッソー郡から出てくる。91年コカイン所持と売り渡しで逮捕された彼の息子、当時28歳は近所に住んでいてワイス社の配達トラック運転手で年収4万ドル以上稼いでいた。
「はめられた」と直感した息子は実刑3年の軽い刑と引換に有罪を認めたり他人を売る検察との取引を拒否して代わりに15年の実刑命令を受けた。
先週、ロックフェラーセンターの外のランチタイム大会に加わった父は息子の写真をしっかり胸に抱いて雨の中に立った。
「私は犯罪に甘くない」「世の中を悪くする人間が刑務所に行くのは当然だ。息子の刑は3年だった。その倍もいるんだから十分だろ?誰も犯罪に甘いなどと言うものか」
49歳のレジーナは大会で「非暴力の犯罪にしては長すぎる刑期だー!」と叫ぶ。93年エリー郡の陪審がコカイン所持の息子テランスを有罪と見なし実刑15年が言い渡される。同様の刑期のドラッグ囚人はごまんといるが、テランスの事例は飛び抜けていた。彼は筋ジストロフィーで中学では車椅子生活だった。
刑務所では何度も倒れて片耳が不自由、椎間板ヘルニアにもなり背中には固定装置を付けている。
レジーナはできることをやる。ハイスクールのカフェの配膳係の職を手に入れる前はすべての大会に顔を出した。今は刑務所行きのバスが出るコロンバスサークルに毎週末やってきて囚人の身内にフライヤーを配る。いつも大声でスローガンの連呼をリードする彼女は大会には欠かせない存在だ。
デモに参加するためウォールストリートの企業から駆けつけたスーツ姿のエド・ガルシア(38歳)はデモの途中クライアントと出くわしたらどうなるのかと考えた。コカインの運び屋だった父がドラッグを売った罪で逮捕されたときエドはまだ株式ブローカーの一年生だった。
父は友達をチクるのが嫌で4年の刑期の申し出をはねのけ15年の実刑を言い渡される。ライカーズ島にいた間、心臓発作に襲われ車椅子に取り残される父は今68歳で最年長の収監者だ。
72歳の母親は彼以上に大会に顔を出す。二人とも戦い続けると断言した。
「父は15年に相当する何をした?確かに罪は犯したよ。でも15年も刑務所に入る罪じゃないと思うね。殺人未遂やレイプの企てで6〜7年の刑の人もいるよね。エイミー・フィッシャーは人を殺すところだったのにもう釈放されてるじゃないか」
10歳のリサは立派なスポークスウーマン、オールバニーの大会では大勢のデモ参加者の前でスピーチした。
リサのママはコカイン8オンス売った罪で20年の刑を受け、もう10年矯正施設にいる。逮捕されたときママはやせ細った22歳のコーク中毒でリサを刑務所で出産した。小学校4年生の子供が母親に会うのは年に数回だけ。おばあちゃんがママが育ったと同じブルックリンの家でリサを育てる。
母の日の手作りの花瓶を手渡せなかったのがリサには辛かった。スクールバスに乗ると痛烈な皮肉が聞こえてくる。「少なくとも私のママは刑務所じゃないわ」「少なくとも私にはママがいる」
リサにも法の批判を届けることができる。「あの法律は生活を破壊して家族を破壊しているの。子供には両親に会えないのがほんとうに辛いことなの」
●参考資料:VILLAGE VOICE 5/18 '99 NEWSWEEK 3/8, 2000
●TAMA- 27 掲載、2000 HEAT
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