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売上げトップの黒人コメディ映画
ハリウッドのユニヴァーサルスタジオを見下ろす贅沢なホテルでのアフター・アフターパーティは夜もとっくに更けて朝と呼ぶのがふさわしいのにボトル軍団は一向に衰えを見せない。連中は「ナッティ・プロフェッサー2」の公開を祝っているはずが実はこの夏の黒人コメディの大当たりを祝っていた。マーティン・ローレンス「Big
Momma's House 」に始まりキーナン・アイヴォリ・ウェイヤンズ「Scary Movie 」エディ・マーフィ「ナッティ2」が次々電撃的収益を叩き出した。朝の5時、マーフィが全員をスイートから追い立てると「俺はこの世で一番笑える男!」と宣言した。
早まるなエディ。先週スパイク・リーがスタイリッシュで活きのいいコンサート映画「The Original Kings of Comedy 」を公開した。わずかな告知で全米で3千7百万ドル稼ぐ昨年大成功のスタンドアップコメディ・フェスティヴァルのツアーの模様を収めた、MTV
が一部資金提供する映画は「ナッティ2」のように巨額を投じた超大作とは違ったが人種を問わず愉しめる笑いに恵まれていた。「アメリカの白人がジム・キャリーやアダム・サンドラーを見たがるのと同じようにエディ・マーフィやマーティン・ローレンスを見たがるほどこの国は変わってきていると思った」というのはMTV
のデイヴィッド・ゲイルだ。
「アメリカの主流はいつも俺たち黒人が歌って踊って連中を笑わせるのを喜んできた。それが連中を慰める映画のレベルだ。うまくいくのはたった一種類の黒人映画。注目されるのはたった一つの世界」とリーは言う。黒人ドラマの業績はと言えば不安定で評判が悪い。70年代当初はオスカー候補にもつれることもあったのにスタジオは何も変わらなかった。「ハリウッドはそんなことはどうでもよかったんだ。黒人コメディがうまくいっててもこれをもっと掘り下げるかと言えばそんなことはしない。連中がやることは金を稼いで売り続けることだ」と映画史編者ドナルド・ボーグル。
リーがハリウッドの予定表ではなく自分の予定表に従うのは言わずと知れたこと。彼は一貫してドラマを作り続けた。そしてほとんどいつも興業成績の上がりでつけを払ってきた。彼が「Kings
of Comedy 」ツアーに惹かれたのは笑いの他に観客のせいだった。「これはピュアで気取りのない文化イヴェントだ」と監督は言う。「金持ちの一員になろうと努力してきた奴らが新しい道具一式を買ってここまで興奮させた。こんなに成功したコメディツアーはなかったのにアメリカの主流は気づきもしなかった」リーはパフォーマンスばかりか楽屋裏もフィルムに収める。それに期待にどよめく観客の姿もだ。おまけにバックに流れるのはマーヴィン・ゲイとボビー・ウーマック。ウー!おかしくてたまらないのにかっこいい街の夜みたいな映画なんだ。リーはもうコメディを後にデーモン・ウェイヤンズ主役の次のドラマに進んでいる。
またやってくれた映画「Bamboozled」
またもやスパイク・リー。今度は10月全米公開の11本目の映画の広告がニューヨークタイムズ紙に掲載拒否された。映画「Bamboozled」は番組の視聴率を上げろとのプレッシャーに黒人ミンストレルショー(昔はやった黒人生活を茶化す内容の白人が黒人に扮するお笑い番組)を作る黒人TV作家の人生を追う。問題の広告はコットン畑を背景にスイカを食べる黒人のベイビーのイラスト(唇が赤いたらこ口、昔パッケージにあったようなやつ)だ。
モ「Bamboozled」を作った理由は?
ヤ(Lee )永いこと黒人のイメージだったものを映画にしたかった。NAACP (全米黒人地位向上協会)が昨年「TV で演じる黒人をもっと増やせ」と推薦するのと偶然重なった。思うにハリウッドの白人の多くは黒人がよくわかってると確信してる。だから映画の中で黒人作家に向かって白人に「ニガーのことはお前よりよく熟知してる」って言わせた。
モ映画の中心はミンストレルショーよね。広告は黒人の自尊心を傷つけるイメージで作られてる。どうしてそう極端なの?
ヤ不快だからって都合の悪いものを人が忘れるように隠すべきだとは思わない。不快だからニューヨークタイムズは広告を載せなかった。あれはリアル。映画が描くのがそれだ。ミンストレルショーはいつ再流行してもおかしくない。TV
局は視聴率を稼ぐためならなんだってやる。
モ映画は白人メディアにとって目障りなだけじゃなく黒人メディアにとってもキツイわよね。
ヤ ボージャングルズとかの昔は選択の余地がなかった。でも今はあんなくだらないものはやる必要がない。同胞が目を覚まして自分の責任に納得がいく必要がある。
モ映画では自分のゴールデングローブ賞をヴェテランのジャック・レモンにやる俳優ヴィング・ラメスとアカデミー受賞で宙返りをやったキューバ・グッティングJr
をやり玉に挙げてるけど?
ヤ一体何を期待して話したこともない男に賞をくれてやる?あれを見たときには背筋が凍ったよ。頭でスピンするグッティングもそうだ。でも気付くとあれ以来二人とも仕事をしっぱなしなんだよ。あの種のエンターテイメントは休みなく人を働かせる。
モずっとこういうこと言い続けてきていらいらしたり挫折感を感じない?
ヤ何にいらいらするかわかる?無知だよ。白人がする質問「なぜスパイクは白人が嫌いなのか」みたいなね。俺の映画が扱うのは黒人が抱える問題だっていうのに俺がしてることにお構いなしにいつもこのばかげた考えに返り咲く。全然わかってない。
●参考資料:NEWSWEEK 8/28 ,10/2 , 2000 インタヴューby アリソン・サミュエルズ
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